戦闘訓練には危険と笑いがつきもの

戦闘訓練には危険と笑いがつきもの

 

 

人生初めてだらけ

 

普通の生活から、陸上自衛隊に入隊すると、規則正しい集団生活になりガラっと日常と環境が変化します。規則正しい時間の中でやるべきことが積みこまれているので、今迄もったいないような時間の使い方をしていたことを反省します。また、野外で寝泊まりするという演習場での生活は初めてのことが多く、知らないと多くの失敗と危険な目に逢うことになります。

半長靴(戦闘服を着る時に履く編み上げの靴)を夏場脱いでテントなどで寝た時は、中にムカデや蛇がいることが多いので、朝履く前に必ず振ってから履くことを教えられたり、冬行動する時、下着の上にセーターを着るのではなく、地肌の上に直接セーターを着ると汗びっしょりになった後でも、セーターが空気の空間を作ってくれるので、体が冷えにくいことを教えてもらいながら、野外の行動に慣れていきます。

両手を自由にするため、雨が降っても傘をさすことはせず、雨衣を着ます。普通の人は、雨に濡れてくるとモチベーションが落ち、行動が鈍くなりますが、陸上自衛隊に入ってからは、雨の日も普通に行動するのが当たり前の生活なので、雨が降ろうと濡れようが平気になります。

 

 

漆の木で箸を造る

 

山の中で行動する時、漆やハゼを知らないとかぶれて酷い目にあいます。かぶれ方は、漆やハゼの木の近くを通っただけでもすぐにかぶれてしまう人もいれば、手で触れても大丈夫な人もいます。

革手袋は、草や木のかぶれから擦過傷まで多くの怪我を防止できるので必需品となります。幹部候補生学校を出てから、一般部隊に配置され、初めての大きな演習の時は、小隊全般の面倒をみるベテランの小隊陸曹が、隊員だけでも大変なのに、何も分からない幹部候補生も危険がないように目を光らせてくれます。

隊員達が、木の枝をナイフで切り、皮を剥いで削って箸にしているのを見た私は、今迄フォークを使っていたのをやめて、演習前に初めて買ったナイフを取り出し、箸を作りました。隊員と同じことができるようになったかなと思いながら、夕食を食べようとした時、小隊陸曹が、「小隊長、食べるのを待って下さい。その箸はどの木で作りましたか」と鋭い声で言われました。夕闇が迫っている中、「この木です」と言うと「あきまへんで、それは漆の木や、口がただれまっせ」と怒られてしまいました。

「これそうですか」と箸を持って小隊陸曹のところに近づくと「来たら、あかん」と手を振ります。どこを見れば漆かどうかわかるのか、聞こうと近寄ると、小隊陸曹は体質上漆に極端に弱く、「全く、若い小隊長は何をするかわからないので怖い」と言われてしまいました。

次の日から、漆とハゼの木が区別できるまで、あれは何だと漆とハゼの木を指さしながら質問を繰り返してくれ、徹底的に教えてくれました。

訓練終了後の夕食時に中隊長から、「たらこ唇にならなくてよかったな」と笑いながら言われてしまいました。

 

 

室内爆発と天井から飛び散る熱いもの

 

何も分からないものだらけの状態で部隊勤務を経験した後、幹部初級課程という小隊長として必要な教育と訓練を8ヶ月間富士で久し振りに同期が集まって受けることになります。

20人~30人近い大部屋で生活をしながら、部隊に帰ったら背中で隊員を引っ張れる小隊長を目指します。ある時、二日間の野営訓練が終了して武器手入れも終わり、装具を整理したら外出だなと皆で盛り上がっている時、腹が減ったから缶詰飯を食べようと同期の誰かが、キャンプで使う携帯のガスバーナーで缶詰を温めていました。

突然、「ボクン」という大きな音がして、次の瞬間多くのメンバー「アチチチチ」とベッドの下に避難しています。

何事かと思って見ると、直に加熱した赤飯の缶詰が爆発して、上の蓋が吹き飛びご飯とともに天井に蓋が張り付いているのと、爆発は真上に志向されていて、赤飯が天井にぶつかった後、部屋中に飛び散った状態でした。同期が、「対戦車用地雷が爆発したみたいに垂直に蓋が天井へ吹き飛んでいった、凄いな」と感心しています。

久し振りの東京だと喜んでいたのもつかの間、皆で天井一面にびっしりついた赤飯をモップで擦りとり、ベッドの布団や毛布の上、部屋中に飛散した赤飯を片づけているうちに、結局市内で反省会となってしまいました。

缶詰は、ボイルするか、必ず蓋を開けて加熱して下さい。書いてある通りに使用しないととんでもないことになります。

 

 

富士の地隙はストンと落ちる

 

富士で野営をしている時、結構皆で飲んだ打ち上げ会の後、自分達のテントへ帰ろうと、肩を組みながら頑張るぞーと言いながら歩いている同期三人が、突然視界から消えました。

 自分達も三人肩を組みながら歩いていて、「どこへ突然消えたんだ」と話しながら進んでいると、床が突然なくなった感じで、真下へ落下しました。酔っているのでどんな状態になっているのか分からない状態でしたが、ヘルメットを付けていたので6人は2mほどストンと地隙へ落ちましたが、怪我ひとつありませんでした。

「此処は何処だ」とまだ言っているのもいて、酔っている状態では上手く体の力が抜けていて怪我をしないことがあるのだなという事を経験で学びました。

富士には、昔の溶岩の流れた跡が地隙となり多く存在しています。深いものは5m以上あるものもあります。気を付けないと大怪我につながります。

この時から、夜間の歩行する時、十分注意する癖が身に付きました。

 

 

 

 

【kindle本が出ました】

 

本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめり込む姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術

 

『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
です。

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準

 

『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ若い隊員が成長していく姿には、若い人達や人材育成に関する多くのヒントがあると思います。

人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。

読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

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2 Comments

  1. チビとら

    はじめまして(^ ^) 通りすがりの者です  ミリタリー系さまよっててたまたま来ました。
    はい 確かに富士演習場の地隙は要注意ですよね 自分も無線機担いで息も絶え絶えでレンジャー出の小隊長に着いて行ってる途中で落ちた事あります(−_−;)無線機で背中をしたたかに打って激痛でした、と同時に 命より大事な(笑)無線機が壊れたんじゃないかとヒヤヒヤした思い出があります 今となっては 遠い昔の幻のような思い出です。

    1. futamiryu

      コメントありがとうございます。

      「命より大切な無線機が壊れてしまった」と、若い時は、私もこっちが先に頭に浮かぶ時代でした。
      無線機のおかげで助かりましたね。

      レンジャー出の小隊長は、体力と勢いで行きますから、無線機を担いでいると結構大変だったと思います。

      思い出がよみがえって頂き嬉しいです。

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