総監が乗車している黒塗りの車が、駐屯地や基地内を走っている時、昼間なのに前照灯を付けています。
その車両を目にすると隊員は、黒塗りの方へ正対し敬礼を行います。
作業を行っているグループの前を通過する時、そのグループの長が「気をつけ!」と大きな号令をかけると、全員が車両の方向へ正対し気をつけの姿勢をとり、グループの長が敬礼を行います。
この黒塗りには、数千人~数万人の組織を率いる将軍が乗車しているのです。
陸上自衛隊の大部隊を指揮する指揮官は、どのような人物で、何を重視し、考え、行動してきたのか、なかなかイメージが湧かないのではないでしょうか。
駐屯地内の一般の隊員も直接会えることはほとんどありません。そのため、偉い人であることというイメージはありますが、実態に触れることはめったにないので、その人柄に触れることもなかなかできません。
今回の対談を通じて見えた田浦氏の横顔は、自分を若い時に育ててくれたメンバーであり、ともに勤務してきた仲間として、隊員を深く愛する指揮官の顔でした。
北部方面隊は、北海道の防衛警備を管轄しています。
北部方面隊は、2個の師団、2個の旅団、約50の直轄部隊があり、3万数千人の隊員が道内37カ所に駐屯しています。
300両を超える戦車を保有する日本最大、最強の方面隊でもあります。
戦車戦力を基幹とした第7機甲師団を有する日本唯一の機動打撃力を保有部隊でもあります。
田浦氏は、次のように語ります。「組織に力を発揮させるためには、自ら考える指揮官や幕僚を育てなければならない」
続けて、「その際、気を付けていたことは『基準を示さない!統制しない! 』 ということである。部下の指揮官や幕僚は、基準を示した途端、統制した途端、自らが考える力が低下するか、考えなくなるため、統率方針は、示していない」と言います。
「要望事項は、『よく考えて、前へ! 』 だった。これは、大隊長以降、連隊長、師団長、総監まで変わらず示した。
平時からよく考えていないと、有事になってからでは手遅れで、修羅場では、頭が真っ白になるからである。
また、考えた事を実施する際は、前向きに取り組むことが重要である」、という考え方です。
今回の対談では、今まで知り得ることができなかった将軍の姿と息づかいを田浦氏に語って頂きました。
では、『よく考えて、前へ! -方面隊運用と福島原発対処-』をお楽しみ下さい。
よく考えて、前へ! : 方面隊運用と福島原発対処 戦闘組織に学ぶ
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