教範に捉われることのない小銃小隊対抗戦闘競技会
第8師団の3部長(作戦運用、教育訓練担当)の時、師団長から、「小隊同士が本気で戦い、師団NO1を決める競技会をやりたい」と師団長室に呼ばれた瞬間から、師団戦闘競技会がスタートすることになりました。
「砲弾による損害付与を与え、交戦装置により、客観的に判定できるシステムで実現してもらいたい」
「画面で戦闘の状況、損害の状況が確認できるようにしてほしい」と要望事項が次々に示されました。
イメージは、富士トレーニングセンター(FTC)の訓練を師団で作り上げ、小隊対小隊がトーナメント方式で戦うシステムを師団の保有する機材・使用可能な機材で作るということです。
一隊員の位置も把握できるようにするため、かなり人が必要なシステムであること、審判は、審判の行動で部隊が発見され部隊が負けることが無いように、競技会に参加する小隊並みのレベルが要求されます。
この本気モードの戦いは、連隊の代表小隊が2組出場するため、視察用天幕の中で師団長とともに、連隊長や中隊長も画面と通信の内容が把握できる場所で見学ができます。
「うちの小隊は、教範事項を重視し集中を常に追求します」と連隊長が師団長と話しながら戦況を確認できます。
小部隊の訓練を重視しているY連隊長の小隊は、部隊が分散していて統制が取れない動きをしています。
「やはり、戦力を集中しないと戦いは難しいのではないか」という師団長の問いに、「予定通りに動いています。
多分はっきりとした勝敗がつくはずです」とY連隊長が答えます。
「Y連隊長本当か」と師団長の問いかけに小さく連隊長はうなずきました。
しばらくすると相手の小隊の損害が急激に発生し始め、競技終了時間前に相手の小隊は全滅してしまったのです。
「何をしたんだ」と驚く師団長。
戦法は競技会終了までは、公開しないので、何をしたのかは公開されません。
競技会全般をコントロールを行う統裁本部へ行くと、この協議会を一から組み立てた幹部が興奮した状態で飛んできました。
「もしかしたら、恐ろしいことをあの小隊はやっています」
Y連隊は、とんでもない戦法を編み出していたのです。