部隊勤務を行っている時、なんでもそつなく対応しているのですが、何か物足りないと感じる幹部がいました。
その幹部は、バランス感覚が良く、全体を見ることができる視点を持っており、人間関係も全方位的に上手く気を配れるので、敵を作らないタイプでした。
以前の彼と比べると、比較にならないほど成長していました。
しかし、どこか物足りない感覚と緩んでいるように感じるのです。
それは、組織力を上手く生かすことのできない幹部職に共通している感覚と同じものでした。
その感覚とは、「グリップ」が弱いというところです。
グリップが弱いと、ただ仲の良いだけの仲良しグループになりやすく、わいわい楽しくやっているのですが、成果がいま一つの状態に陥るのです。
反対に「グリップ」が強すぎると力で無理やり持っていく手法やパワハラ系に陥ってしまいます。
グリップは、緩くても、強すぎても、上手くいきません。
丁度良いグリップが大切です。では、丁度良いグリップとは、どういうものでしょうか。
ちょうど良いグリップは、信頼関係があり、穏やかな感じを保ちつつも、勝負の時やここぞという時には、強さと厳しさを前面に出し成果を掴み取ることができるグリップの握りです。
私の考える良いグリップとは、平時に部下が集まる(優しくて面白いから、緊張しなくてもいい)という表面的に調子のよい緩んだ握りではありません。
緊急時・非常時に部下が集まってくる、苦しい時にみんなが集まりなんとか力になりたいと思うようなグリップが良いグリップなのです。
普段は厳しそうで取っ付きにくいかもしれないのですが、日々の彼の言動からこの人は信頼できると感じ取っている部下は、いざとなったらこの人についていけば、安全を確保され、大丈夫である。裏切ることなどなく信頼できると感じとれるグリップです。
弱くもなく、強過ぎないグリップ。
しかし、インパクトの瞬間はズレずにブレることがなく、組織やチームのメンバーが力を合わせて確実に物事を遂行していくことのできるグリップが、チームリーダーや幹部には求められます。
特に必要なのは、組織のトップです。
みんなに好かれたい、人気を得たい、物分かりがいいと思われたいという表面的な事に注力したとしても、グリップが緩んでいれば、組織全体の成果が出にくい、苦しい状態になると自己保身を選択する、みんなで協力することなく、トップから逃げるように距離を置くようになります。
このため、組織のトップは、真のグリップを身に付けることが非常に重要となります。
さらには、このグリップの状態が、直接的・間接的に人材育成に影響を与えます。
そのためには、部長になってからグリップを良くするにはどうすればいいか考え始めるのではなく、担当の時から意識して、業務、日々の言動においてグリップについて磨いていく必要があります。
グリップは、人間力であり、人柄、魅力でもあります。このような視点持つと、人物を評価できるようになります。