スカウトの世界、森の歩き方 -山伏(やまぶし)と歩く-

スカウトの世界、森の歩き方 -山伏(やまぶし)と歩く-

 

 

山伏とともに歩く

 

大台ケ原の深い山を歩くと、修業をしている山伏と一緒に半日ほど歩く機会があります。もう30年ぐらい前ですが、女人禁制の山もあり、戦闘服で歩くのは初の場所でした。山伏は、1枚歯の下駄を履いていて、傾斜と下駄の歯を上手くかみ合わせて登っていきます。今まで平地でよくこんな下駄を履くなと思っていた私は、この下駄の価値を全く感じられないでいましたが、山伏の急な傾斜を登っていく姿を見た瞬間、1枚歯の下駄の価値と山を歩くためになかなか考えて作られていることを理解しました。

山伏は、背中に木の箱を背負って、振り回せば昆として武器になるような棒を杖にし、ゆっくり一歩一歩下駄の歯を噛ます降りないとように歩いています。陸上自衛隊の徒歩行進は、休憩を入れて1時間4㎞のペースで歩くので山伏を簡単に抜いてしまいます。

 

山伏の歩き方は、休みがありません。

 

隊員が休憩をしていると、柔らかく身体にムダな力が入っていない静かな歩き方で、いつの間にか追いついて音もなく、違和感を感じさせることもなくすぅーと道路の両端に展開している隊員達を抜いていきます。

休憩が終わり歩き始めると、また山伏を抜きますが、山伏の心は静かで安定しているのがよくわかります。抜いては、休憩間に抜き返されるのを延々と繰り返していると自分達はバテ始めているのに、山伏は疲れているようにまったく感じません。一緒に歩いている半日の間、山伏は水を飲んでいません。これも、修行なのかなと思います。

昼食のために1時間の大休憩に入ると、その脇をゆったり息も切らさないで静かな澄んだ心を感じる歩き方で通り過ぎ、どこかへ行ってしまいました。

 

しばらくすると離れたところでホラ貝を吹く音が聞こえ、彼が首にぶら下げていたものを吹いているんだなとすぐ理解しました。如何にもテレビや映画で聞いたりする山伏が吹く音を出しているホラ貝の音を聞いて、なかなかやるなあの山伏はと皆で話したのを覚えています。

 

この一帯は、手付かずの自然を味わえますが、深い谷に下りないと水を得るのが難しい地域が多く存在します。地元の人達は、山が深すぎるので川に降りると位置や場所がわからなくなってしまい道に迷うので、土地を知らない人が深い沢に下りるのは危険であり、迷ったら山の上に上がりなさいと言います。

 

「ここでは普通の山の行動とは反対になります」と教えてくれたのが印象的でした。

 

偵察をする時、知らない土地や自然の深いところでは、地元の人の助言を大切にするのを心掛けるようにしています。

 

訓練は、500名以上の隊員が参加するため、500名が補給できる水場が必要となります。このため、偵察では、水の補給を確実できる経路を探すことが重要になります。水場がないところでは、ヘリで補給することを計画に入れたりしました。

 
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自衛隊最強の部隊へ-偵察・潜入・サバイバル編: 敵に察知されない、実戦に限りなく特化した見えない戦士の育成
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40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
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本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

 

 

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
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『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
 人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
 読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

 

オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界
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オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
 日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
 オオクワガタを通じ、色々な経験や学びがあり、人生が豊かになった感じがします。そんなオオクワガタ採集記をお楽しみ下さい。

 

 

 

オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~
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マット飼育は、菌糸ビンのように簡単に大型を作出するのは難しい飼育法ですが、綺麗な個体を得ることができ、安価で多量にオオクワガタを飼育できることが魅力です。
 本書により、マット飼育のコツを積み上げ、皆さんの目指すオオクワガタを作出して頂ければ幸いです。

 

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