戦争映画は、激烈さや衝撃の激しさが緩和され、客観的な見方ができる戦争終了後10年の年月が経過すると作成されていました。この傾向はベトナム戦争やグレナダ侵攻まで続きます。湾岸戦争やテロとの戦いから戦車や航空機による重戦力による戦闘に加え、デルタフォースを始めとする特殊部隊が活躍する戦闘が繰り広げられてきました。この時期から、戦争やテロとの戦い終了後すぐに映画化されるようになります。
戦争映画の名作「コンバット」、大規模な上陸作戦の「ノルマンジー上陸作戦」から第二次大戦時における戦闘のやり方と戦闘レベルを知ることができます。
戦闘のパターンは、艦砲射撃、特科部隊による砲撃により敵部隊を叩きながら、敵陣地へ接近して突撃支援射撃と連携して敵陣地へ突入する要領が主体で、防弾ジャケットは付けず、消耗戦的に兵士を使用しています。
私が、小隊長のころ行っていた訓練はこの映画のパターンと同じです。コンバットの戦闘場面はこんな感じだなと違和感を感じませんでした。
反面、第二次大戦の戦闘様相と変わらない状態でいいのかなという疑問もありました。
兵士は消耗してしまっても戦闘に勝利することを重視する戦闘要領です。
ベトナム戦争では、「ハンバーガーヒル」、「プラトーン」から戦闘の様相を知ることができます。1960年代後半になると、迫撃砲弾に対応できる防弾ジャケットを着用するになり、兵士の価値は、消耗戦的に使用するところから改善が図られるようになります。
ただし、ベトナム・ラオスの高温多湿もあり、防弾ジャケットは基地の防護など防御時には着用していますが、攻撃や索敵行動間は着用していません。
ベトナム軍への陣地へヘリコプターによる上空からの機関銃による射撃を実施します。「ハンバーガーヒル」では友軍相撃の映像を見ることができ、「プラトーン」では、戦闘による精神障害が表現されています。精神障害は、PTSDとして現在の戦闘においても重要な問題になっています。
自動小銃にはダットサイトやグリップも装着されておらず、自衛隊で訓練しているイメージで戦闘様相を捉えることができます。
1979年の米軍の状況がよくわかるのが、クリント・イーストウッド主演のグレナダ侵攻の戦闘を描いた「ハートブレイクリッジ」です。コンピューターが普及される直前の時期であり、補給品や修理は、定型用紙に決められた内容を記入して提出しないと認められず、戦闘の状況に合わせて紙による手続きに関係なく迅速に補給できるようにしてもらいたい現場と本部との関係が描かれています。
小隊長は、フォーマットに従って報告や要請をしなければならないため、記入要領が書かれている分厚いマニュアルを持って行動しています。
この映画からグレナダ侵攻は、今後の戦闘を画期的に変化させる原型となる時期であったこともわかります。、こと細かにあらゆる分野を規定していた紙面のフォーマットが、コンピューターネットワークを実現させるもとになっているからです。
ハートブレイクリッジで好きな場面は、戦闘間厳しい状況の中、死を覚悟して敵前に出ていかなければならない場面で、クリント・イーストウッドが、準主役の兵士に「君の名は?」というと「○○です」と反射的に答えます。
するとクリント・イーストウッドは、「難しい作戦に志願ありがとう」と言い、彼が「えっ、俺、聞かれたから」と答えても、「○○が志願してくれた」という感じで、彼が「本当にいつも俺ばかりしごく」とぶつぶつ言いながら、前進していく場面です。(その後彼は、大活躍します)
この時代の戦い方も自衛隊で行っている戦闘訓練とほぼ同じで違和感を感じません。
「ブラックホークダウン」では、仲間を救出する勇気ある行動が描かれ、消耗戦的に人命が扱われる描写が減少していきます。湾岸戦争やテロとの戦い以降、消耗戦型の軍隊の形から、性能の高い兵士が損害を最小限にしながら任務を遂行する方向へ変化していきます。
陸軍レンジャー部隊やネイビーシールズなどの特殊部隊の活躍が描かれるようになります。
この時期から、個人装備品が変化します。M4にはレイルが付きダットサイト・暗視装置やコンバットライト、グリップが装着されています。防弾ジャケットも小銃弾から防護できるアーマーに変わり、常時装着しています。
兵士の行動も、誰でもできる戦闘行動から、高度な戦闘技術を惜しみなく映し出すようになります。スナイパーの運用について具体的にわかるような「アメリカン・スナイパー」という映画も出てきました。
「ネイビーシールズ」などで見る兵士の戦闘レベル・戦闘技術は、高度で実戦的な高いレベルであり、自動小銃、銃へ装着するレイル、ダットサイト・暗視装置やコンバットライト、グリップ、目を防護するグラスなど個人装備が「ハートブレイクリッジ」などに比して大きく変化していることがわかります。
この変化は、実戦⇒戦闘要領や装備品の改善⇒実戦⇒改善を繰り返してきた米軍の強さであると思います。米軍の戦闘を映画で見ることによって、今の陸上自衛隊がグレナダ侵攻時代なのか、ブラックホークダウン時代なのか、はたまたブラトーン時代と同じなのか、現在の米軍と遜色ないのか理解することができます。
兵士の装備、小銃はもう進化することがない分野といわれていましたが、急速に変化し続けていることがわかります。兵士の戦闘技術についても進化しており、世界標準を常に意識していくことが陸上自衛隊にも必要となっています。
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