今、灯下採集は大きな方向転換を迎え、根本的な採集方法の見直しが必要となっています。そのキーワードは、LED、マイマイガ、周波数帯の三つの要素です。
まず、周波数帯とLEDから説明します。
40年前の暗視装置はアクティブの方式をとっていたので、目には見えない赤外線を照射し、赤外線に照らし出されたところを暗視眼鏡で見るようにできていました。
照射する赤外線は虫の集まる周波数帯を使っているものが多く、真っ暗の中で照射している赤外線発射装置の回りには、蛾や昆虫が渦を巻いて集まっている状態になります。
強い光を使って行う灯火採集のような状態が、明るくないのに虫が集まっている状態になります。
オレンジ色の水銀灯もあまり虫を集めないような周波数帯を使用していますが、虫が全く集まらない状態にはなりません。
そこに、最新技術のLED電球が登場しました。LEDの特徴は全く昆虫が集まらない周波数を使用している電球であることです。
無機的に明るいのに全く虫が集まらないLED電球の登場によって、これから灯下採集という手法はなくなってしまうのではないかという程、灯下採集愛好家やブナ・ミズナラ帯の採集にとって脅威となります。
この脅威の引き金をマイマイガが引き、LED化が急速に広がっています。
2014年の夏は、マイマイガが大量発生した年となり、灯下採集をしようにもびっしり張り付いたマイマイガと卵で甲虫が集まらず、外灯にも近づけない状態となり、採集にとっていまだかつてない打撃の年となりました。そして、マイマイガの駆除や卵の清掃に悩まされた行政は迅速な対応を見せました。
外灯の電球をほとんどLED電球に変更したのです。
合わせて自動販売機も夜間電気を落として虫が来ないような処置がなされ、明るいが飛来する虫が全くいない状態へ灯下採集ポイントのほとんどがあっという間に変わってしまいました。
今迄の有名な灯下採集ポイントは、消滅し、冷たく無機的に光るだけの場所になりました。
科学や技術の進歩は素晴しいものがありますが、虫の全く来ない電球になってしまったため、大きな転換期を迎えることになりました。
去年のマイマイガの猛威は、首都圏ではあまり知られていませんががあり、凄まじい状態でした。
光を発する電球という電球の回りに5㎝弱のマイマイガが隙間がない程ビッシリ張り付き、異様なほどの大量発生となりました。
更に、白い多量の卵をびっしり張り付いていたところに生み、外灯など明かりの付くところには取り除きにくく、跡が残る卵で酷く汚されています。
この卵が羽化したら、大量発生を上回るマイマイガが誕生し大変なことになることは目に見えています。
マイマイガの繁殖の猛威の一例をあげます。灯下採集にきて灯りの回りを調べている人にとまったマイマイガは、採集者の服にびっしり卵をうみつけてしまうほどの異常な勢いです。
色々なところに張り付くように産む卵は、広く拡散していき、マイマイガの量と繁殖地域を拡大させることができます。
自治体は、殺虫と卵にの除去のため多大な労力と予算を使用することとなりました。
マイマイガの駆除とマイマイガが集まらないようにする手立てを早急に行う必要が出てきました。
マイマイガ
2014年の夏のマイマイガの大量発生後、2015年の夏には予算が付き、なんと国道や県道の外灯は全て虫の集まらないLED電球に取り換えられました。
行政としてハイスピードの対応といえます。それほどマイマイガに大変な目にあったことがわかります。
LED電球への付け替えによって、車両移動間に確認する外灯に集まっている虫の状態から、今日は標高の高い所がいいとか、気温が低いのに今夜は飛びがいいとか、雨が降っているのに蛾がよく飛んでいるといった、採集状況の判断や今日は飛んでいていけるぞという喜びが消滅しました。
冷たく無機的に明るく光っているだけの心が躍らないただの外灯になっています。
川俣温泉の宿のご主人に「クワガタの集まるような水銀灯や明かりはありますか」と質問した時、なんだか罰がが悪く残念そうに、「ここら辺一帯は駄目だなぁ。採れなくなったよ」と答えてくれました。
この時、どうして罰が悪そうに、残念そうな顔をするのか不思議に思いました。
灯下採集を始めるとLEDだらけで外灯は明るいのに全く虫が飛んでいない状態です。LED化によってクワガタが採れなくなってしまい、残念そうな顔をしていたんだと今になって理解できます。
息子が、「奥日光はここまで徹底して虫が集まらないようにしているのは凄い」と感心するほどでした。川俣温泉では、虫が飛んでいる電灯が採集ポイントになりました。
檜枝岐一帯もオレンジ色の外灯を見ると檜枝岐村に入ったなと感じるあの外灯の色も白くなり全てLEDになっています。
2015年の夏は、オオクワガタの採集できる国道や主要な県道がLEDされたことによって、採集ポイントの全面的な見直しが必要な年となりました。
このLED化は、近い将来、ここ数年で国道と主要な県道から市町村の管理する道路にとどまらず、民有地に至るまで進んでいくことが簡単に想像できます。
この灯下採集ポイントの消滅は、山間部、特にブナ・ミズナラ帯の主要な採集方法である灯下採集自体がなくなっていくことを意味します。
マイマイガの大量発生は、クワガタ採集にとんでもない影響を与える引き金を引いてしまいました。ピンチはチャンスといわれます。マイマイガによる灯下採集のピンチは、何かチャンスも与えてくれないものかと願っています。
更なる知恵と工夫と情報収集が重要となる灯下採集に突入しました。
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貴ブログ、大変、感動して拝見しております。
私は御地産の天然個体を長年採取生活をしていますが、
未だ、遠距離や公務でホンモノに出会っていません。急なお願いで、重々失礼千万ですが、貴兄の御保有なさっている1♂をお譲りいただけないでしょうか。天然オクワは、正に「天恵」であります。決して、多産のものではありません。また、巨大な個体を欲しているわけでもありませんが、御地の貴重な1♂を丁寧、に鑑賞させていただき、天寿の後、標本としたく考えます。是非、趣味人の心情を御賢察いただきまして、何分、よろしくお願い申し上げます。御返信、お手数ですが、どうか、どうか、よろしくお願い申し上げます。
コメントありがとうございます。
自らの手で天然オオクワガタを採集することは、男のロマンであり、オオクワガタ採集の醍醐味です。
長年追い求められているロマンに敬意を表します。
近年、オオクワガタの生息している場所は、都市化や開発、自然の深さも低下し、天然物はなかなか採集できない環境になったと思います。
天然物の採集は、その土地のオオクワガタ仲間を作ることから始まります。仲間を作れない時は、何度も通いながら、ポイントを絞っていくことが大切になります。通っているうちに仲間と出会ったりします。
オオクワガタ採集は、採集が難しい所にも面白さがあります。採集ポイントを自分で絞り込んだり、仲間と話し合ったり、作戦を考えながら、ある時は体力の限界まで大人が夢中になる。そんな素晴らしさがあります。
特に、仲間と行く採集はとても味わいがあります。
是非とも、ご自分の手でオオクワガタを採集して頂きたいと思います。
現在、系統を限定して飼育しているため、天然物はありません。
いつの日か、天然物を手にされることを祈念致します。
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