陸曹が幹部になりたくなる部隊、本物の強さの追求と人材育成

陸曹が幹部になりたくなる部隊、本物の強さの追求と人材育成

 

 

多くの熱い男達の集い

 

久し振りに小倉に戻ってきた当時2曹だったiに「今何やっているの」と聞くとはにかみながら、「連隊の中隊長をやらして頂いています」と返ってきて、思わず「大変なことになっているな」と言うと大爆笑となり、iは、「当時3曹だったMは連隊の運幹(運用訓練幹部、連隊の訓練や作戦のエンジンとなる職務)になっています」、「もう一人運幹やっている当時2曹だったKは海外で、もうすぐ戻ります」と話します。

昨年から続けている40連隊熱い男の集いでの会話です。

男の集いは記念行事の前日、連隊長時代の時から玄海灘のプリプリ、コリコリの新鮮な魚をこれでもかと味わえる皆のお気に入りの店「よしずみ」さんで開催しています。

この食感と新鮮さは、関東ではなかなか味わえません。仲間に会うのと上手い魚を食べれることが毎年の楽しみとなっています。

よしずみ

 

毎年参加メンバーが増えたり、変化します。主要メンバーが続々戻ってきている状態です。

当時陸曹の若いメンバー達が、13年経って1尉になり、連隊の中核となる役職に付いているのを知り、本格的なメンバー達が、遠く離れた地で裸一巻の勝負をしながら鍛え上げて小倉に戻ってきた頼もしさがあります。

ところで、「2尉なりたてだった君達はどうなっているの」、と聞くと「連隊本部の科長です」と返ってきてます。

「幹部候補生になったメンバーも戻り始めています」と回し蹴りでバット3本を折るが、気持ちの優しいメンバーから聞き、連隊を引っ張っていく若く力強い中核の陸曹が、次々に幹部候補生となり、九州の地を離れていくため、連隊の中核の彼らがいなくなった時のパワーダウンは覚悟しなければならないと当時どのように対応するか考えていた自分を思い出しました。

 

 

陸曹が幹部になりたくなる部隊

 

連隊長着任時、各中隊に幹部が6名程度配置されており、毎年幹部候補生から幹部になった若手を各中隊1名ずつ人事調整をして確保しているのに大きな驚きを感じました。幹部がいなくて、陸曹が幹部の代行をして小隊長をしている部隊が普通です。

前連隊長とその前の連隊長は陸幕で人事部に勤務された経験があり、如何に動ける組織を作るか、6年から10年先を見ながら、時間と手間のかかる人材育成と人事調整をキチンとやられていたからです。

前連隊長からの言葉は、「いつでも爆発するような部隊になるところまできているので、次頼むぞ」でした。次の者、将来に対する先行投資をする重要性を申し送られた瞬間です。

陸曹から部内の幹部候補生の試験に合格して幹部になるよりも、SLC課程という幹部候補生学校に入校せずに36歳以上になると資格ができ、選抜試験を経て幹部になる者が多く、地元も離れることなく勤務できるため、部内幹候よりも人気があります。

しかし、SLCの幹部は、幹部教育をきちんと受けていないため、中隊長にはなれません。

中隊長や主要な幹部と何度も話し合い、「チームワークが抜群に良く、誰とでも直ぐにチームを組めるレベルのメンバーが実戦モードの訓練徹底的にやり、とことん強い」こんな中隊を毎日目指していたら、自分も中隊長になって指揮をしてみたいと思う、やってみたい、日々の訓練や生活をすることが若い優秀な陸曹に火を付けるという結論になりました。

 

 

幹部候補生になる陸曹の数

 

陸曹が部内選抜幹部候補生を目指したくなる部隊を幹部全員、連隊全員で追求していくと、毎年3名程度の部内幹候合格者が、5名、7名と増えていき、連隊を離れる時なんと9名の合格者を出すようになりました。

合格したメンバーが次の若手に勉強を教えたり、心の持ち方や考え方を伝える勉強会を中隊の垣根なく行われているので、中核メンバーが幹部候補生になって転属しても、次の世代が彼ら以上に力を付け、モチベーション高く中隊で活躍しながら、次の若手の勉強会を行い続々とやる気の高い陸曹が増えます。

陸曹の若手が手間と時間のかかる難しい人材育成を充実感を持ち、時には楽しくなる感じで行っているのに心を打たれます。

勤務したい環境を作ると陸曹は、更にいい環境を作る工夫やつまらない事故や服務事案で統制や、やってはいけない事だらけになったり、縛りがきつくならない様に皆で過ごしやすい環境を維持する努力をします。

これは、陸士でも同じでした。各中隊の先任陸士長が話し合いながら自ら考え行動しながら進める努力をしていました。

私が、本当に隊員を好きになった一コマです。

 

 

心にぐっと力の入る飲み会

 

幹部になって力を付けて戻ってきたメンバーと主要メンバーであったが定年して近くに住んでいるシニアが、記念行事前日に集まって熱く語り合う「40連隊男達の集い」は来年どんなメンバーが来るか楽しみです。

更に、幹部にはならず、陸曹として部隊を引っ張っているメンバーとシニアの集いもできたら素晴らしいと思っています。

 

≪次のブログも参考にしてお楽しみ下さい≫

 
伝説の男 -黒崎健時-
 

 

 

 

 

自衛隊最強の部隊へ-偵察・潜入・サバイバル編: 敵に察知されない、実戦に限りなく特化した見えない戦士の育成
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【kindle本が出ました】

 

二見龍レポート#2 コンバットメディックの照井資規、弾道と弾丸を語る
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二見龍レポート#1 ネイティブ・アメリカンの狩りの技術を伝える川口拓氏との対談
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40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
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本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

 

 

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準

 

 

『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

 

オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界
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オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
オオクワガタを通じ、色々な経験や学びがあり、人生が豊かになった感じがします。そんなオオクワガタ採集記をお楽しみ下さい。

 

 

 

オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~
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マット飼育は、菌糸ビンのように簡単に大型を作出するのは難しい飼育法ですが、綺麗な個体を得ることができ、安価で多量にオオクワガタを飼育できることが魅力です。
本書により、マット飼育のコツを積み上げ、皆さんの目指すオオクワガタを作出して頂ければ幸いです。

 

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