相手を全滅させる男 -実戦的な戦闘競技会-

相手を全滅させる男 -実戦的な戦闘競技会-

 

 

小隊対抗戦闘競技会

 

師団長から、部屋に呼ばれて「futamiryu(著者)よ、小部隊でビームが当たるとやられたのがわかるシステムを使って、師団の戦闘競技会をやり、どこの連隊の小隊が一番強いのか見てみたい。秋ごろまでに何とかしてほしい」と言われました。今は、4月なので10月にはシステムを作り上げて演習場を10日ほど確保して競技会をできるようにせよ、ということでした。

もともとこの競技会はやりたかったので、「わかりました。私もやりたいと思っていたものなので、ドカンと企画します」と答えると、「楽しみにしている」と師団長が言いました。

ここに、一人の男がいます。Hidaka(仮称、以後H)という師団司令部第3部の部員で、小部隊の戦いと理論と通信に詳しく、私にとって宝物のような部下です。

「射撃をすると空包がなって、ビームが同時に出て当たると反応するのと、迫撃砲の弾が落ちたら損害が出るシステムと一人一人の位置が地図へ表示され、損害がほぼリアルタイムでわかるものとルールを作りたい」というと、ぼそっと「3カ月下さい」と言い。

皆で作り込みを始めました。プレ競技会を3ヶ月後やることになりました。

統裁点という全般をコントロールする地域には、アンテナだらけの状態でリアルタイムに状況が把握できるシステムが出来上がり、小隊(約30名の隊員で構成、リーダーは小隊長)対抗方式の戦いをしてすぐ、問題が起こりました。

本気モードの小隊同士の戦いを判定する審判は、邪魔になったり、審判を見つけて部隊を発見できるということがわかり、競技会に出る小隊並みの戦闘技術のある審判を養成する必要があり、部隊の訓練よりも、審判の訓練を1カ月ほどやり、本番を迎えることになりました。

Hの素晴らしい活躍によって「小隊対抗戦闘競技会」が実現しました。

 

 

とんでもない戦法

 

連隊長にfutamiryuが尊敬するYoshida(仮称、以後Y)という人がいます。小銃に付けたシステムが調子悪くなったら、その人は、ルール上戦死となります。

Yの小隊は始まる前に7名のシステムエラーで戦死が出てしまい、「すみません」というと、「いいよ。大丈夫だから」とニコッと笑いました。普通何やっているんだと言われてもおかしくないのに、不思議な反応でした。

不思議な反応には裏付けがあったのです。

1回戦そのYの最初から7名欠の部隊と他の小隊が当たり、企画統制で走りまわっていると1.5時間の戦闘時間より前に、「小隊全滅競技終了」とアナウンスがあり、やっぱりなーと思って見てみると、Yの小隊の勝ちで3名しかやられておらず、相手は全滅していました。

2回戦は、時間がきて判定となりましたが、Yの小隊はまたあまりやられず、相手は3名しか残っていませんでした。Yが私に「凄いでしょ」とニコッと笑います。

すぐ統裁地域の天幕の中に行き、全般コントロールをしているHにどうなっているんだと聞くと、冷静な彼が、興奮気味に話を始めました。「恐ろしい戦法と、とんでもない男がこの小隊にはいます」と言いました。

戦闘の開始からずーと終了までの映像とデータを見ていくとその全貌が明らかになってきました。

この小隊は、戦闘地域に到着すると相手を大きく包囲して、火網を構成して包囲している外に出るものを射撃できるような配置になっていました。

地形をよく見て配置を確認しないとただバラバラに隊員を配置して、分散していて戦力を集中できていないように見えます。

「何をやっているんだこの部隊は」と思ってしまいます。

この綿密に火網を構成した輪の中に敵部隊を狩りに行く一人の男がいます。

この男の名もHidaka(仮称)で部下と同じ名でした。

彼はカモシカのような脚と鍛え抜かれた身体の柔らかさとマタギのような行動をする戦闘員で、この輪の中で、ゆったりとした動きで風下に回り込み後ろから狙い、バタバタと倒すので、部隊が慌てて移動し、輪の外へ出ようとすると準備された火網でやられるというものでした。

一人の男を軸に戦法を作り上げていることがわかり、ゾクッとするYの凄さと、純粋にこの競技会は面白いと感じました。

Yに「とんでもない戦法ですね」というと、「わかった」と嬉しそうに笑いました。

準決勝、決勝とも相手部隊はほぼ全滅という驚異的な強さで、そして、そのほとんどがHによるもので優勝しました。

この恐ろしい男は会ってみると物静かで、穏やかで優しい人間でした。

しかし、次の年の戦闘競技会では、違う発展が起こりました。また、機会があれば、第2回戦闘競技会について説明します。

 

 

 

 

【kindle本が出ました】

 

本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
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『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
です。

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
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『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ若い隊員が成長していく姿には、若い人達や人材育成に関する多くのヒントがあると思います。

人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。

読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

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