【災害派遣】すぐに集まってチームを組める組織の強さ(地震発生直後偏)

【災害派遣】すぐに集まってチームを組める組織の強さ(地震発生直後偏)

 

 

玄界島の災害派遣

 

柔らかく、まだ時々冷え込む春の日に、思い出すことがあります。

玄界島の災害派遣を休みの日に実施したことです。誰とでもいつでもチームを組めることが、戦闘組織の強さとして、訓練を積み上げている時でもありました。災害派遣の初動は混乱が付きものですが、みんなが一致協力、問題を解決し災害対応を進めていくのを体験して、チームの成長と強さを実感するとともに、より一層隊員が好きになったなーと当時の記憶が蘇ります。

では、時計を当時に戻します。

2005年3月20日午前10時53分、演習が終了して帰ってきた次の日は、庭にタンポポが咲き始め初春を感じる穏やかな日で、溜まっていた洗濯物を外に干したり、久し振りに布団も干して、「さーテレビでも見よう」とソファーに座った時でした。

ガガガガッと突然の激しい揺れがあり、直下型地震特有の15秒~20秒激しい揺れがありました。

テレビが落ちそうになっていましたから、5弱に近いもので、テレビをつけると玄界島に被害が出ていることがわかってきます。

すぐに、当直に全員駐屯地へ集めて、出発準備をするように言いました。

当直は、若いが、冷静な判断と実行力のあるimai(仮称)がついており、すぐに電話に出て「了解しました。人手が足りません。どのように伝えますか」と返答があり、「館内マイク放送で全員に知らせるのと、各中隊の当直を集めて、各隊員はすぐに職場に来て、島へ行く準備を進める指示すること」と言うと「すぐに実行します。現在、休みの日なので人はあまり残っていません」と当直の現状認識の報告があり、「マイク付きの車両で、官舎地域で拡声器を使って集合の連絡をすること、1時間半後に150名派遣できるように準備を進めるように」と伝えると、「中隊や部隊がバラバラでもいいですか?」とのことで、指揮官のみは指定し、あとは集まったメンバーでチームを作り、チームの長が混成の部隊を指揮するように伝えました。

「了解しました」と力強い答えが返ってきました。

着替えているうちに、すぐ、車両が来て駐屯地へ行くと、続々と隊員達が自転車や車で部隊へ集まっているところでした。

日ごろ「何か起こったら指示がなくとも部隊へ速やかに来ること、残っているメンバーが火の車になっている状態から早く冷静になれるように皆で協力しよう。

それが仲間だ。」と皆で考えていたこともあって、どんどん人が集まり、車両誘導が行われ、ヘリに荷物を積載する準備が進み始めていました。

imaiに状況を聞くと、上級部隊へ報告した内容、部隊の集合・準備状況をテキパキと正確に話してくれました。

自分が同じ年齢の時こんなことが出来たかなと感じつつ、彼の力強さに心を打たれました。「指揮官は、混乱にめっぽう強い、baba(仮称)にする。imai、君も現地へ飛んでくれ」と話しました。

師団長に「今すぐ150名派遣できます。」と報告すると、師団長から、「何か要望事項はあるか」とあり、「大型ヘリをすぐに3機お願いします。」と言うと「すぐチヌークを3機送る」と返答があり、「40分後には到着させる」とありました。「ありがとうございます」と答えると「頼んだぞ」と言われました。

各チームを見てみるとあるチームではチーム長が2中隊で、チームのメンバーは5個中隊がバラバラの混成状態ですが、日ごろから、中隊の垣根をなくして訓練をしている効果か、違和感なくチームが出来ていて、指示が伝わっていました。たくましさが感じられます。

Ishida(仮称)へ「3日後の交代要員の選定を進めること」と伝えました。長期対応の準備を進めることにしました。

Ishidaが「どうしましようか」と言うので、「なにが」と聞くと「2士と新隊員が災害派遣に参加したいと各中隊で言っていますが、メンバー選考をいかにしましょうか」とのことでした。

まだ、中隊に配置されて半年未満の隊員のため、戦闘技術が十分でなく、経験や知識も少ないので、災害現場における危険の察知と回避が上手く出来そうもなく、怪我をするかもしれないと思ったからでした。

まず、彼らに志願ありがとう。と伝えてほしいと話し、第二陣から、志願者を連れていくことと、選考については、連れて行っても大丈夫なレベルかは中隊長に判断させようと伝えました。当初は後方支援にするように伝えました。

第3派のチヌークが来るので、荷物が天井まで積み上がった機内へ潜り込み災害現場に自分も出発する時間になりました。「さぁー行こう。現場へ」とメンバーに告げて出発です。

誰とでも組める部隊・隊員は強いということを感じながら、キーンと耳に響くローターを回すエンジン音を聞きながら玄界島へ向かった春でした。

続きは、また機会を設けてみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

自衛隊最強の部隊へ-偵察・潜入・サバイバル編: 敵に察知されない、実戦に限りなく特化した見えない戦士の育成
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二見龍レポート#2 コンバットメディックの照井資規、弾道と弾丸を語る
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二見龍レポート#1 ネイティブ・アメリカンの狩りの技術を伝える川口拓氏との対談
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40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
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本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

 

 

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
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『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

 

オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界
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オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
オオクワガタを通じ、色々な経験や学びがあり、人生が豊かになった感じがします。そんなオオクワガタ採集記をお楽しみ下さい。

 

 

 

オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~
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マット飼育は、菌糸ビンのように簡単に大型を作出するのは難しい飼育法ですが、綺麗な個体を得ることができ、安価で多量にオオクワガタを飼育できることが魅力です。
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