今年も来日した永田イチローさんの訓練で、敵役を専門にやり、サバゲーのチームやCQBチームを何年も見ている人と出会いました。この対抗部隊専門家は、数多くの戦闘訓練の経験を生かし、訓練効果を上げるため、サバゲーチームのレベルを3段階に区分して対抗部隊の動きをしていました。
サバゲーチームやCQBチームの訓練は、いつでも射撃を可能にするため銃を安定しながら歩くキャットウォークや部屋へのエントリーのための安全確認要領やステップのとり方の基本から行います。
同時に、射撃の精度を高めるための鉄的への射撃訓練を行います。
射撃のレベルが上がるにつれ、射撃時間を制限したり、射撃姿勢を限定した状況で腕を磨きます。
仕上げは、変幻自在に間取りを調整できるパーテーションを利用した模擬の部屋で戦闘に移行します。
サバゲーチームやCQBチームの戦闘訓練を面白くしたり、実戦に近い状態にしたり、難しい状況を作るのが対抗部隊役の役割です。
対抗部隊の動きが良くないと訓練そのものの質が下がってしまうこともあるほど、重要な役割です。
今回、対抗部隊専門家の人と、休憩間とても興味深い話を聞くことができました。
訓練の休憩間、長年イチローさんの戦闘訓練に同行しているトモさんが、
「最近、あるCQBチームの腕が急激に上がったところがあります」と話してくれました。
どうして急激に成長したか聞いてみると、「その理由がよくわかりません。しかし、急激に強くなったのには驚きです。今迄の積み重ねが花開いたのだと思いますが、対抗部隊専門で長年このCQBチームを見てきた人に聞いてみたらどうですか」
と言い、トモさんは、すぐに対抗部隊専門で訓練に参加している人を紹介してくれました。早速、対抗部隊専門家の人に話を聞いてみることにしました。
「私は、対抗部隊をやっていて部隊の強さを次の3段階に区分しています。『普通の部隊』、『強い部隊』、『怖い部隊』です。『強い部隊』は結構いますが、『怖い部隊』は滅多に出会いません」
「『怖い部隊』との戦闘は、声や物音のしない静かな戦場で、数発で仕留められます」と対抗部隊専門家は、話してくれました。もう少し具体的な話をするため質問を続けました。
対抗部隊専門家は、「怖いレベルの部隊」について話しを続けます。
「怖いレベルの部隊と対戦する時は、最初から自由がききません。動けないのです。状況開始の段階から、圧力がかかるからです」
自由がきかないとはどういうことなのか聞いてみると、「対抗部隊は、通常、敵から見つかりにくく、狙いにくい場所にポジションを取ります」
「そして、敵を狙う射撃ポイントを何か所か設定して敵を迎え撃ちます。まあ、10回やって3回我々に勝利すれば、強い部隊と言えます」
「しかし、準備した射撃ポイントで敵を迎え撃とうとしても、出たら撃たれる圧力を感じるのです。予感通り、銃を出した瞬間に、弾が正確に飛んできます。次の射撃ポイントで射撃しようとしても、弾が飛んできます。」
「完全に自分の射撃ポイントがロックされているのがわかると、怖いという感情が徐々に大きくなり、敵の射線に入り、射撃ができなくなります」
「そのうちに、音も無く接近されたり、回り込まれてやられてしまいます。更に、『怖い部隊』は静かにチーム全体が動きます」
「『怖い部隊』は、射撃支援を指示したり、前に出る指示や敵に関する情報を伝えるのを全て手信号で行います。いつの間にか押さえ込まれてしまいます。何度やってもやられてしまい、全敗です。普通最初だけは勝てるものなのですが」
と話してくれました。
このサバゲーチームは、図上で各人の役割と動きを何度も確認し、各段階で、戦闘員がやられた場合の役割の変化についてもよく話し合いが行われているレベルです。
そして、実際に図上で行動を一つ一つ確認しながら、修正をする訓練を続け、戦闘間に発生する様々な状況に対応できるレベルになりつつあるチームです。
多くの戦闘場面の図上検討と実際の動きの確認と修正を積み重ねるうちに、チーム全員が、次のことができるようになったと考えられます。
○ 何処に敵がいるか予測できる
○ 敵の予測から敵の射撃ポイントが予想できる
○ 射線がわかり、危険な場所と行動可能な場所が理解できる
○ 敵の射線を確実にロックして撃たせない
○ 行動可能な場所を前進し、次の敵の射線の押さえ込みができる
○ 無声指揮ができる
○ 射撃の精度が高い
対抗部隊専門家に「どこのサバゲーチームですかと」聞くと「Irieさんのチームです」と教えてくれました。
やはり彼のチームだったのか。
彼は、目指すレベルの入口に立ったのかと思うと、なんだか嬉しくなりました。
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ご無沙汰しております。喜多長です。やはりℹ︎君ですか〜解る気がします。小倉の頃から彼の目指す所は常に遠くにあり、他の隊員と明らかに違いがありました。対抗部隊をやってて彼の分隊だけは常にレディ状態だった気がします。なんて言うんだろう訓練をやらされているのではなく、遣り通しているという感覚ですか?敵側になるとそれがビシビシ伝わるんです。彼だけではなくクラモト曹など他にも小倉にはツワモノが沢山おりましたね。やりたくない相手です。もし有事になりついて行くなら誰に付いて行くかという話になった時必ず彼の名が出てました。自分もついて行くなら彼の名が先に上がります。彼といると勝てるというのではなく、生き残れるというような気がするのです。当時は若さ故、言葉使いなど気になる事もありましたが、最近の彼は充実感と自信にみなぎっているようです。またお手合わせしてみたいです。もう全く敵わないとは思いますが、、
ご無沙汰しております。
九州での訓練サポートお疲れさまでした。
I君は、人間性が向上し、一度大きくした身体を絞り込み、身体の切れが一段と増していました。
そちらで喜多長さんと手合わせする時期も近いのではないかと思います。
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