オス70ミリの壁を超えるのが難しいと言われた時期、福岡県の久留米産のオオクワガタは、大型の出る系統として、全国で注目されました。大きさ重視の時代の久留米産は、細身のフォルムが特徴でした。北熊本へ異動となり、天然物の久留米産オオクワガタ採集のチャンスが訪れました。
北熊本でオオクワガタ仲間の輪が広がり始めると、久留米に勤務経験のあるクワガタ仲間のKに出会うことができました。
「久留米でオオクワガタを採集するのは難しいですか」とKに聞いてみると、「里山の残っている場所で採集をしていました」と話してくれました。
天然産をゲットしている人に会えた喜びが湧き上っていると、「今でも採れるかもしれません」と更に、喜び爆発の言葉が返ってきました。
クワガタ採集仲間のHの友人のKは、「Hならよく知っている久留米のあそこです」と言うと、
(Hは次のブログでも活躍しています巨大オオクワガタ朽木割採集-佐賀県神埼郡-、佐賀県神崎郡オオクワガタトラッキング採集 -伐採材捨て場でタコ採れ-)
Hは「あそこだったらすぐわかる。よく知っているところなので今週末下見に行きましょう」とHに久留米地区の採集を誘われ、「断る理由はないね」と答え、即決行となりました。
Kは、「久留米産天然のオオクワガタをブリードしていて、丁度羽化して取り出したのがいますから、今度差し上げます」とまたまた、素晴らしい話をしてくれます。
交換として、桧枝岐産オオクワガタを渡せるように準備することを告げると、「東北のオオクワガタは見たことありません」と私が喜ぶ以上にKは喜んでくれました。
週末、Hの運転で久留米に向かいました。「この一帯です」とHが指をさします。
まず、里山の外周を回って地形を確認します。丘陵地で低い山があるような地形ではなく、平地に至る所に谷が走っている地形です。
谷を下ったり、登ったりして比較的平らな場所や南斜面のクヌギ・コナラを狙う採集コースを選定しました。
谷は深いため、湿度が高く、朽木があっても水分過多の状態で日陰が多い状態です。
朽木を調べても、ベチャベチャであったり、北斜面や日陰の朽木に多い四角い頭をした玉虫の幼虫ばかりです。
Hが「凄いのがありました」と呼びます。普通オオクワガタを見つけたら、「見つけました」と言うのですが、「ありました」とあまり聞かない表現です。
Hのところに近づくと、湧水が出ている湿度の高い場所の倒木に茶色くつやのあるキノコが群生していました。「凄いポイントです。シメジも群生しています」とHは話しながら、リュックから竹籠を出しています。
「キノコ採りでは採ったキノコは、竹籠に入れるのが決まりです。ビニールに入れると胞子が広がません。竹籠に入れておくと歩いた経路にキノコの胞子を蒔いている状態になり、また次の採集につながるからです」と教えてくれました。
「キノコが多いと聞いていましたから、竹籠を準備してきましたが、予想以上に凄いところですね」、「今夜は、キノコ鍋にしましょう。食べる量だけ採集して下さい」と相変わらず準備のいいHです。
コナラの林が稜線をまたがるように続いている場所が、Kの教えてくれたオオクワガタ重要ポイントです。稜線をまたいで北斜面は緩やかですが、南斜面は結構な急斜面です。
けもの道はなく、人がほとんど来ていないコナラの林です。少し太めのコナラの木を見つけました。
下草の葉っぱをどけると、下草の中に隠れている地面との境界部分にある小さな樹液にヒラタクワガタのオスがついていました。50ミリは軽く超えています。昼間なのに凄いポイントです。
「幸先良いね」と二人で顔を見合わせます。
少し歩き回っているうちに、この林には違和感があることに気付きました。Hも感じたようです。
二人ではこんな表現をします。「林全体が乾いている」
「林が乾いている」とは、木肌が乾燥している感じで、クヌギやコナラの木から樹液が出ていない状態を表現したものです。
また、クヌギの木の肌が緑色や灰色の苔のような大きな模様のある状態になっていると、樹液は出ていません。
樹液の出ている林は、甲虫だけではなく、樹液を出す活動をするボクトウガの幼虫や樹液を吸いに来るススメバチ、カナブン、蝶やバッタ類、夜間になるとムカデ等、多くの虫が樹液に集まり騒がしい感じです。
害虫駆除で生態系が消滅してしまったのか、他の原因で乾いた林になってしまったのかわかりませんが、オオクワガタが生息する樹液の出ている林の環境ではありません。
このポイントの偵察を終了し、里山全体の偵察を続けることにしました。
夏場の斜面の上り下りは、体力を急激に消耗させます。
クヌギの木がなかなか見つからないまま、谷をいくつも通過し、里山と住宅の点在する平地との境界近くを目指します。深い谷から這い上がると砂利道に出ます。
水分補給をしながら、「だいたい見たけどオオクワの姿は感じられないな」と話していると、Hが、「台場クヌギこの辺多いですよ」と指さします。
砂利道沿いに直径50センチ以上の台場クヌギの木が30メートルから50メートル間隔で存在しています。どの木も樹液が出ている状態です。深くはないがウロもあります。
甘い樹液の香りがするので、クヌギの木を調べていると幹から出ている枝の葉で隠れている樹液を見つけました。「ノコのペアとコクワがいますね」とHが言います。
Hとクヌギの木を中心にして十字の方向を丁寧に調べましたが、朽木がなく発生場所がありません。
いい感じのポイントだけど、住宅地に近いから、オオクワはいないだろうなという結論に至りました。
次もこの里山で採集をしました。しかし、キノコは多量に取れましたが、オオクワガタの姿を感じることはできませんでした。
関東に戻った今、採集で反省していることがあります。
谷が深く急傾斜の多い地形と昼間偵察がパッとしなかったので、、「夜間の採集」をしていないところです。
久留米産のオオクワガタを見ると、あの深い自然のポイントで夜間採集をやっておけばよかったことを思い出します。
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天然オオクワガタを求めて-山梨県韮崎一帯オオクワガタ採集記-
かつてのオオクワガタ有名産地、山梨県韮崎一帯で天然のオオクワガタを求めた採集記が完成しました。本書は、「1年を通じた採集記」、「採集幼虫のその後」、そして、「20年前同じ場所で体験した採集記録(加筆)」の3部で構成されています。
≪次のブログも参考にお楽しみ下さい≫
熊本オオクワガタトラッキング採集
オオクワガタトラッキング採集編1 -山梨県甲府地域(その1)-
オオクワガタトラッキング採集編2 -山梨県甲府地域(その2)-
【kindle本が出ました】
二見龍レポート#1 ネイティブ・アメリカンの狩りの技術を伝える川口拓氏との対談
40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。
そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。
40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
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に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。
オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界
オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
オオクワガタを通じ、色々な経験や学びがあり、人生が豊かになった感じがします。そんなオオクワガタ採集記をお楽しみ下さい。
オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~
マット飼育は、菌糸ビンのように簡単に大型を作出するのは難しい飼育法ですが、綺麗な個体を得ることができ、安価で多量にオオクワガタを飼育できることが魅力です。
本書により、マット飼育のコツを積み上げ、皆さんの目指すオオクワガタを作出して頂ければ幸いです。
こんばんは。
こちらから失礼します。
現在、筑後川水域=佐賀・久留米のオオクワガタを探しております。
中々純粋な出処がはっきりしたクワガタが見つかりません。
現在まだ飼育されていますか?
お忙しい所大変恐縮ですが御返信頂けると幸いです。宜しくお願いします。
コメントありがとうございます。
この地域は、15年前に勤務していた時から、細部の地域まで産地が
区分されており、関東から言ったので驚いた記憶があります。
現在、能勢YGマット飼育へ切り替え実験をしていますので、九州産を含め
他の血統は飼育しておりません。
ショップの人と仲良くなり、本物を手に入れられるとよろしいかと思います。
筑後川水域=佐賀・久留米産は、川のどちらか側か迄区分していたことを記憶
しています。
オオクワガタへの情熱素晴らしいですね。
二見