初級陸曹と陸士の本気度は、急激な成長と強さを実現する- 師団武道大会での活躍 –

初級陸曹と陸士の本気度は、急激な成長と強さを実現する- 師団武道大会での活躍 –

 

 

慢心に満ちた監督とコーチ陣

 

陸上自衛隊の師団武道大会は、部隊単位で銃剣道や格闘の強さを競います。小倉第40連隊に着任後すぐに師団武道大会が予定されており、監督とコーチに、「うちの実力はどの程度か」尋ねると「うちの銃剣道は師団一です。格闘も優勝を狙えます」と答えが返ってきました。しかし、次の日練習を見に行くと、弱くてすぐに負ける程度の実力であることがわかりました。

監督とコーチ陣は、本業の戦闘訓練の免除の許可を得て、選手達に一日中練習をさせています。

練習を見ると手を抜いた一日中ダラダラした練習です。

長い練習でバテないように、体力温存している全力のかけらも感じられない、体操のような流した稽古でした。

教官達に「試合は大丈夫か」と聞くと、「我々が教えていますから、任せておいて下さい」と胸を張って答えます。

「全力を出し切らない練習は、あまり効果がないよ」と言うと、「師団大会前ですから、怪我を防止しながら試合感覚を維持する、このような練習が必要です」と返ってきました。

銃剣道や徒手格闘のことをよくわかっていないのだから、連隊長は余計なことは言わないで、俺達に任しておけという感じです。

何か要望はあるのか聞くと、「もっと練習のための時間と勝った時のプレゼントがほしい」と返ってきました。

試合の当日なると、「勝たなければいけない、負けてはならない」と、選手達は身体がコチコチで、守り中心の消極的な姿勢になり、常に相手に先手を取られる試合になりました。

試合結果は、師団の中の連隊で大負けの最下位です。

 

 

監督とコーチの責任

 

敗因、反省事項はあるか尋ねると、次の答えが監督とコーチから返ってきました。

「もっと練習時間と優秀な隊員を選手にしてくれれば勝てたのに、この選手では勝てない、今度はもっといい選手がほしい」と。

「プロ野球でチームが最下位になったら、どうなるのだろう」

「選手のせいではなく、監督とコーチの責任になり、監督とコーチ陣は首になる」

「君達は勝つための努力をせず、負けた責任を選手に被せている。監督とコーチとしてやるべきことをやらず、反省もなく、責任をとらないのは普通、プロ野球だと首だよ」と話しました。

次の日、3科長を中心としたプロジェクトチームを作り、よく実態のわかっているメンバーによる立て直しを開始しました。

新生監督とコーチ陣から、「思い切ってやっていいですか」と質問を受けました。

「3年間最下位でいいから、選手層を厚く底辺を広くしてもらいたい。それから勝ちにいく」と答えると「わかりました」と嬉しそうに準備を進めてくれました。

新生監督とコーチは、徒手格闘では30歳の若い初級陸曹が監督兼選手で、選手はなりたての陸士長(入隊2年目)が主力、入隊1年目の1士になっていました。

ザクッと改革したなーという印象です。

そして、練習を見ていると、もしかしたら、来年勝てるなと思いました。

「パンチ連続30秒はじめ!」という合図で、渾身のそして伸びのあるパンチを全力で打ち始め、「やめ」の声とともに多くのメンバーが膝から崩れました。

全ての練習が全力だったからです。

休日、駐屯地内でランニングをしていると若い選手達は、武道場に来て自主練習をしています。

選手達は、休日だけでなく、代休の時も自分達で時間を作って技の研究と身体を大きくするウェイトトレーニングを継続的にやっています。

思った以上に早く強くなるのではないかと感じました。

自らの意思で強さを追及しているからです。

心意気が違います。

戦闘訓練もしっかりやっており、頑張っているなと雑談をすると「本業の戦闘訓練で周りのメンバーに遅れてしまうなら、徒手格闘は止めます」と言い、「戦闘訓練で強くなるために徒手格闘をやっています」と答えました。

素晴らしい監督と選手達です。

 

 

大会での成果

 

そうこうしていると師団武道大会がやってきました。

「勝たなくてもいいから」と皆に話しをすると、徒手格闘の19歳の選手が「連隊長、優勝してもいいんですか」と聞いてきました。

「勝ち負けは考えなくてもいい、今までの皆がやってきた必死の心と必死の力を試合で伸び伸び出せばいいだけで、勝ち負けは結果として、後からついてくるものだよ。思いきって技を出してくれればいい」

と話しました。

監督兼選手の一人以外皆白帯なので、試合前相手の部隊から、「40連は白帯ばかりだぞ、大丈夫か」とからかわれています。ベテランで年上のメンバーや周りからプレッシャーをかけられていますが、40連隊の若い選手達は、フンという感じで戦う強い意志がみなぎっています。

試合になると、その白帯がするすると間合いを詰めて寝技をかけていき勝負を決めたり、受けにくい蹴りで技ありをとり、勝ち進んでいきました。

いつの間にか、次の試合に勝つと優勝というところまできてしまいました。

 

 

決勝戦での大将として出てきた陸士長の試合

 

相手の連隊は、強く伝統があり、師団の代表となる選手もおり、白帯軍団も苦戦して3対3の大将戦となりました。

相手は師団代表選手、こちらは入隊6年目の古手の陸士長です。

彼は右の上段のストレート以外に武器はありませんが、ブロックしても吹き飛ぶ威力があります。

師団代表選手は明らかに負けてはならないという気持ちに入っているのがわかりました。

古手の陸士長は右のパンチを出すというそぶりをしますが出しません、カウンターを狙っているのがわかります。

これでプレッシャーをかけていき、相手を場外に3回出し、僅差の判定で、勝利しました。

古手の陸士長に「パンチ出さなかったな」と聞くと

「代表選手の方が上手いのでカウンターを取られて負ける確率が高いので、自分が負けない方法の押し出しで勝つという戦いをしました。パンチを出したら負けていたと思います。こんな戦いしかできませんでした。失礼しました」

古手の陸士長の言葉に痺れました。

凄い奴がいるもんだ。

隊員をまた一段と好きになった師団武道大会となりました。

 
今回の記事は、陸曹・陸士の素晴らしさをより伝えることができる内容に、リメイクしました。
 

 
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