一つやらなければならないことがありました。
北熊本の作戦担当幕僚をしている時、8師団の厳しい訓練を積んでいる部隊を送り込んでも、毎回全滅に近い状態にする富士トレーニングセンター(FTC)の仮想の敵部隊(専門の対抗部隊)を倒すということです。
北熊本で戦闘競技会や訓練検閲(2年毎に行う部隊のレベル判定)をしているうちに、いつのまにか本当の強さを求めている自分に気付きました。
一方、初めての単身赴任でもあり、熊本の大自然の中で週末は焼き肉かウナギを味わいながら温泉につかり、夜は上手い刺身と馬刺しで焼酎を楽しみ、〆に熊本ラーメン食べ大満足の状態でした。
少し、自分だけ楽しみ過ぎている反省もあり、家族や親戚に安くて色々な種類のあるメロンや柑橘類の果物を送ったりしていると、いつの間にか2年が過ぎていました。
素晴らしい師団長3人に仕え多くの事を学び、たっぷり熊本を味わって遂に、異動となりました。関東へ帰れるかなと思っていたところ、関門海峡を越えることができず、北九州の小倉の連隊着任し、小倉を如何に強くするかを考えながら毎日を過ごす生活になりました。
一つの疑問が頭にありました。「一体どこの部隊が本当に強いのだろうか」、持続走競技会や武道大会のような体力の強さではなく、個人から小部隊、そして800名以上の情報収集、迫撃砲や対戦車ミサイル部隊、施設、補給・整備部隊などの戦力を組み立てて戦闘する連隊レベルにおいて、どこの部隊が今本当に強いのだろうかということです。
多くの部隊が、よく言います「我々の部隊は精強で日本一である」と誰かが言うと、「いや、うちの部隊の方が精強であり、強い」と、集まった人数分日本一の部隊があったり、日本一の部隊がまるで100個部隊あるような感じです。
口でいうのは簡単であるが、本当に実戦に強い部隊は一体何処にいるんだ?何処の部隊なんだ?という疑問です。
富士トレーニングセンター(FTC)の仮想の敵部隊(専門の対抗部隊)は真に強い部隊です。
FTCは、銃からレーザーが出て当たると身に付けている受光装置が反応し音が出ます。戦死、負傷がわかるシステムのため、色々言い訳を言っても、機械的に結果が出るようになっているシステムです。
コンピューターによる戦闘に関するデーター管理もできるので、訓練終了後、どこで判断を間違えたのか、戦車からの射撃による損害が多いなど訓練の振り返りもできる優れモノののシステムです。
ここの対抗部隊は、未だかつて負けたことがなく、訓練部隊はほとんど全滅してしまい訓練が終了しています。
全滅した部隊は口々に言います。「対抗部隊は富士といういつも同じ場所で、自分の庭みたいなところで戦うから、地形を知らない部隊はよく地形がわからないので、負けてしまうのだ。
我々は弱くない」や「審判が対抗部隊に有利なように行動を統制しているからだ」とか、「最初に偵察部隊をやられなかったら、勝てた。偵察部隊を攻撃するのは教範には書いていない」と色々出ます。
結構苦しい訓練を積み重ねて戦ったので、相当悔しいところもあります。気持ちはわかります。
北熊本にいた時、FTCを破るため、考え抜いて作ったのが、ほぼFTCと同じシステムを保有している機材と人間で作り上げたアナログ式戦闘競技会システムです。
違いは、戦闘競技会のシステムは50人規模の戦闘を行うものですが、FTCは、戦車部隊や多くの支援部隊も中隊に配属されるので、250名の規模となり、小部隊の戦闘だけでなく、情報や火力と小隊の戦力を組み立てて、総合戦闘力を発揮するところについてはカバーできませんでした。
師団の戦闘競技会で鍛えた部隊が、FTCへ行っても最後に突撃をして全滅をしていました。
もしかしたら、やはり対抗部隊が勝てるようなルールになっているのではないかと自分も思っていたのは否定できません。
しかし、実戦に近い戦闘競技会を行っているうちに、少しずつ自分にも訓練レベルを判断できる能力が付いてきました。
どうして無敗なのかを見分ける目、判断できるレベルになつて、FTC部隊の戦いを確認した時、初めて気が付きました。FTCは恐るべき部隊であることが、小倉に着任直後に参加したFTC訓練を見て理解しました。
「どんなにやっても2年で追いつくか、追いつかないかな」と感じました。
ここから、誰が強いのか、何をすれば強くなるのかを追い求めることが始まります。
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