北九州小倉では単身赴任のため、官舎のスペースを使って飲みたい酒とつまみを持ち寄って、毎晩のように「誰が強いのか、どうすれば強くなれるのか」を話し合い、明日からもやるぞーと盛り上がる団結会をしていました。
できるだけ多くの隊員の話を聞きたいと思い、若手幹部から始まり、中堅陸曹、初級陸曹と杯を交わし、楽しく居心地のいい空間を作ってもらっていました。
ishidaからこの男に一度会ってみて下さいと、中級陸曹で連隊をけん引しているメンバーをそろえてくれた時でした。
服装はラフでリラックスできる服装で着てほしいと伝えていましたが、この男はビシッとしたスーツで現れました。
スーツ姿の男は、見た瞬間に自らが燃えて、周りのメンバーの心へ火を付けるタイプであるとわかる、火炎放射器を持ち歩いて周りに火を付けて回る感じの男でした。
どうしてスーツを着ているのと聞くと、初めてお伺いするのでこの服装で参りました。失礼します。
と答えたこの男はkobayashiと名乗りました。彼は、全てに全力を尽くし、チャレンジを止めない真っ赤に燃える火の玉ような男です。
人質救出の話になり、kobayashiが今の訓練は生ぬるいですと話し始めました。各国の特殊部隊は勿論、自分達も射撃技術が高くなっているので、犯人が人質を取って後ろから顔を出した瞬間、敵を正確に撃ち抜くことができるので、本格的な敵は片方の目が前から見えるかどうかぐらいにしか顔を出しません。
このため、射撃機会が少なく、より高い射撃技術が必要です。
話しながら、一緒に飲んでいる中隊長にすみません、一寸いいですかと言って、人質役にして手荒く引きづり回したり、盾にしたりして見せます。
中隊長暴れてみて下さいと言い、中隊長が暴れようとすると、足をかけて倒しながら撃たれないような行動を見せてくれます。
自分が犯人だったら、人質をこのように扱います。と言いながら、中隊長がタップするまで、首を絞めていました。
本物の高い戦闘技術をも持った敵を想定した訓練が行い、敵のレベルをどんどん上げていく必要があると熱く語ります。
「どっちが強いのか、どうすれば強くなるのかです」と愛くるしい顔で言うところも面白いなと感じました。
kobayashiは常に実戦の状況の中で敵を倒す戦闘技術を磨く求道者のような男です。
「futamiryu、私は、いつ出動してもいいように、2日分の新品の下着や必要な装具を準備しています。今行けと言われればすぐ出発をします。厳しく難しい任務を達成するには、レベルの高い、本気モードの訓練と強い精神が必要です。生ぬるい訓練は時間の無駄だと感じます」、そして彼は続けて、「ちょっとやそっとではやられませんが、いつ、死んでもいいように遺書を書いて準備しています」と正座をして話します。
この連隊には核弾頭の様な男がまだ山のようにいるなと思って毎晩飲んでいましたが、kobayashiという男はリーサルウェポン級です。
更に、彼を慕う若い隊員が多く、kobayashiのような陸曹になりたいと若い陸士は胸を躍らせながら話します。
そして、彼が幹部候補生の試験に合格した時、kobayashiのように幹部になりたいとobayashiの背中を追いかけ、連隊で9名の陸曹が幹部の試験に合格しました。
通常1年に1名か2名合格するかしないかのところ、毎晩kobayashiが若い連中に勉強や心の持ち方を教えた結果でした。
「futamiryuお願いがあります」とkobayashiが言うので、聞いてみると「時刻規制を毎朝決まった時間にして皆の時計を1秒も狂わないようにすることです。
火力を使用する戦いでは必須です」とのことでした。その通りだと思い、すぐ内線電話で、「明朝0745から40連隊は全員時刻規制をするように」と当直とishidaへ連絡をしました。
kobayashiはこの時凄く嬉しそうな顔をしたのを今でも脳裏に浮かびます。
先日彼から、連絡がありました。10年振りに異動で小倉に戻ったら、40連隊は0745に時刻規制を続けているとのことでした。kobayashiの実戦的な姿勢が10年経った今でも引き継がれていたのでした。
戦場に連れて行く隊員を選ぶなら、今でもkobayashiをすぐに選びます。
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そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。
40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
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