射撃地点を秘匿できる『サプレッサー』の必要性-陸上自衛隊への早期導入-

射撃地点を秘匿できる『サプレッサー』の必要性-陸上自衛隊への早期導入-

 

 

サプレッサーの威力を知る

 

サイレンサーは、銃の発射音を小さくできるものとして広く知られていますが、通常「サプレッサー」と呼び、戦場では、発射音の抑制以上に、発射時の銃口から出る炎を消す効果がとても威力を発揮します。発射音を確認することによって、射撃されていることを知り、概ねの方向がわかります。銃口から出る炎と煙によって射撃を行っている敵の細部位置を掴むことができます。

敵の位置を特定すれば、反撃が可能ですが、位置がわからなければ、敵は味方を仕留める有効な射撃を継続することができ、自由に射撃地点を移動しながら、主導権を握った戦闘ができます。

位置の特定は非常に重要になります。
サプレッサーは、位置の特定を難しくする器材であり、生き残り敵を倒すことができる非常に重要な器材です。保有しているか、いないかで大きく戦闘結果が変わります。

陸上自衛隊の一般部隊まで、サプレッサーを装備できれば、第一線部隊の隊員の生き残る確率が格段と高くなると思います。

 

 

スティーヴンハンターの小説に出てくる手製のサプレッサー

 

スティーヴンハンター著書、「極大射程」、「狩りのとき」は、とてもに興味深く楽しめる本です。その本の主人公は、狙撃の名手のボブ・リー・スワガーです。
主人公の活躍する回想場面で、ベトナム戦争に参加し、北ベトナム軍1個大隊を狙撃によって機能不全にさせる場面があります。

スワガーが、ペアの兵士に別の場所から照明弾を打ち上げさせ、照明下で部隊の組織力を低下させるために、指揮官から狙撃を始めます。
この時、スワガーがこだわったのは、スナイパーライフルに装着するためのサプレッサーです。サプレッサーがないため、紙を使ってスワガー手製のサプレッサーを作成しました。
この本の内容は、今から30年前、本が発売された時に読んだものです。

当時、照明弾はスナイパーライフルに暗視装置がないので、その必要性を理解できましたが、音を消すことのできないサプレッサーへのこだわりについて、その意味を十分に理解できませんでした。

狙撃を繰り返していくうちに、紙製のサプレッサーに火が付いてしまい、北ベトナム軍に発見され追跡されます。夜間、紙が燃え上がれば、見つかるからしょうがないなと思う反面、燃えるのがわかっていてもサプレッサーを使用する必要性を十分理解できませんでした。

不勉強だったと思います。

発射時、銃口から発する炎を隠すために、サプレッサーを使用していたのです。
訓練を積み重ねていくと、射撃を受けた概ねの方向はわかりますが、位置を特定できません。炎を発見できれば、位置が特定でき、火力を指向できるからです。

サプレッサーが無ければ、早い段階で、敵の反撃や攻撃を受けてしまい、北ベトナム軍を削ることができません。

このために、スワガーは、途中燃え上がってしい、敵の攻撃を受ける危険を覚悟で、手製のサプレッサーを使用したわけです。

 

 

イラクでの戦闘経験

 

イラク戦争やアフガニスタンに従軍経験のある人物は、サプレッサーをつけないで射撃をすると、必ず敵から反撃を受け、危険な状況になるため、射撃後、後方へ下がるか別の射撃位置への移動が必要になった話という聞いたことがあります。

当然のことながら、急きょサプレッサーを取り寄せ装着することによって、敵からの発見率が激減したとのことです。

敵から見つからなければやられないからです。

 

 

サプレッサーによる消音効果

 

発射音が聞こえると、概ねの方向がわかると説明してきました。

防大では3学年になると、夏の1か月間、部隊で隊付訓練を行います。部隊によって、受け入れ方法は多少の違いがありますが、学生自隊の訓練もありますが、各種部隊の訓練にも参加させてもらえます。

また、営内生活を体験するため、一般隊員の部屋に学生は、一人一人分かれて生活し、毎日、一般隊員と寝起きを共にします。
青森の部隊では、丁度、師団長が普通科連隊を評価する戦闘団検閲を受閲するところでした。
配属された中隊主力の前方で警戒を行う、前衛小隊の中でも一番先頭で部隊の安全を確保する路上斥候として、常に走りながら、前方の安全を若い陸曹と行いました。

対抗部隊から、射撃を何回か受けますが、何処から撃たれたのかまったく見当がつきません。若い陸曹は、路上斥候長へ敵の位置や人数をその度に報告しています。
「右から回ってあの少し高い台へ行くぞ」と陸曹に言われ、体力にものをいわせてついていくだけです。
射撃音がします。
「そこで高い位置になったらだめだ」と言われ、伏せて周りを見ますが、どこに対抗部隊がいるのか、方向さえもわかりません。中腰になって前方を見てもよく見えないので、もう少し姿勢を高くすると、射撃音が聞こえました。

「学生! 何度も撃たれているのに、立ち上がったら、いかん」と怒られました。

訓練終了後、「射撃音で、敵の方向がわかり敵を発見できるには、どうすればいいか」聞くと、「学生は今回初めての経験だから心配ない。もっと経験を積んだら分かるようになる」、「自分達は、この程度がわからないとやられてしまうから、これが一般隊員の現場なので忘れないようにしてほしい」と言われました。

だから、新隊員の損耗が多くなることがよく理解できました。

サプレッサーを付けて射撃をすると、発射音が抑制され、距離が離れていると音が上手くとれません。
発射した弾丸が、自分の右近くを通過する時、「パシッ」と衝撃音が右から聞こえます。

すると、衝撃音が、発射音だと勘違いして、右から撃たれたと判断してしまいます。
射撃された方向から、概ねの方向を知ることができません。

敵に見つからず、生き残って任務達成することができます。

 

 

狙撃銃に必ず付属品としてサプレッサーをつける

 

狙撃銃には、サプレッサーを必ず付属品として装備の一式に組み込むことが重要です。

小銃にも、任務によって必要となることがあるため、普通科連隊クラスでは、全員分でなくとも、小隊又は、中隊に必要なセットを入れておくと、最前線で任務を遂行する隊員の安全性と任務達成の確率は高くなります。

費用対効果がとても高いので、是非とも、推進して頂きたいと思います。

 

 

極大射程 下 (扶桑社ミステリー)
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狩りのとき〈上〉 (扶桑社ミステリー)
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本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
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『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。

人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。

読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
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