防御で負けた状態-お手上げの状態-

防御で負けた状態-お手上げの状態-

 

 

幹部必修の陸上自衛隊の戦術教育

 

 陸上自衛隊では、戦い方や部隊の運用を習得するため、「戦術」を学びます。幹部のお家芸といわれるほど、戦術は、幹部候補生から教育が始まり、幹部自衛官の間、継続して学びます。
戦術は、原則的な事項、定石を学び、徐々に応用に進んでいきます。陸上自衛隊の幹部になり6年を過ぎると戦術を重視した教育を受けます。

 戦術は、地図上で行う「図上戦術」、実際の場所で行う「現地戦術」、迂回攻撃の要領、航空攻撃を阻止する要領などを白紙に描いて表現する「白紙戦術」があります。

 

 

防御でお手上げの状態を絵にせよ

 

 白紙戦術の教育を受けている時、教官から「防御でお手上げになった状態の絵を書きなさい」と言われたことがあります。

 各学生は、白紙に、等高線、道路、河川、畑・田んぼを記入し、防御を行う地形を書きます。そこに防御陣地の記号を入れます。

戦術では、戦車は◇というように地雷原などの障害、陣地、指揮所など全て記号で表示します。そして、味方は青色、敵は赤色と色分けして表示します。

30分経過すると教官の「作業やめ」の合図で課題を提出します。

 教官は、課題を見ながら、「味方の陣地に敵の戦車部隊が突入し、第一線陣地が崩壊した図か」、「これは、大きく迂回され、補給品・整備を行う段列地域に敵の進出を許してしまった図だな」、これは凄いぞ「防御陣地が全部やられてしまった図が出てきた」と同じような考えの案をグループ化しています。

 

 

予備は30%持つ

 

 学生案を否定するようなことをせず、「お手上げとは、打つ手がなくなった状態だと自分は考えている」と言い、「通常予備は何パーセントとるのかな」と学生に質問します。

 「30%です」と返ってくると、「使い果たしたらどうする」と更なる問いが出ます。

 「戦闘している部隊から、戦闘員を抽出して予備隊を新たに編成します」と学生が教範とよばれている教科書に載っている内容を答えました。

 「戦闘している部隊から、戦闘員を引き抜いて編成した急ごしらえの部隊では、予備隊として使用してもすぐに消耗してしまうだろうな。新たに編成した予備隊も使い果たしたら、どうする」とさらに厳しい状態での判断を求められます。

 

 

これがお手上げの状態だ

 

「さらに新たな予備隊を編成します」と答えが返ってくると、「人を抜いてばかりいたら、戦闘部隊自体がもたなくなり、防御が崩壊するだろうな。こうなったらどうする」と対応が求められます。

 学生が打つ手が無く困っていると、「これが防御におけるお手上げの状態だ。予備を使い果たしたら、打つ手は無くなる。

陣地を放棄して、交代するにも交代を援護する予備部隊が必要となる」と言い

「では、これで終わろう」と教育が終了しました。

予備の重要性と運用に関する教育は、今でも鮮明に私の心に残っています。

 

 

 

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