安定した力を発揮できる人間 -射撃選手の選考-

安定した力を発揮できる人間 -射撃選手の選考-

 

 

自衛隊の厳しい冬の時期を支えた競技会

 

陸上自衛隊では、銃剣道競技会、持続走競技会、格闘競技会などよく競技会を計画します。競技会の目的は、多くのメンバーに早く広く普及するために実施したり、部隊のモチベーションの向上や体力の底上げを目的として行います。

競技会には、あまり語られない異なる目的があります。

30~40年以上前、自衛隊に対する環境・世論は、今では考えられないような大変厳しい状況にありました。自衛隊員は税金泥棒と呼ばれたり、最近は毎日防衛省・自衛隊の記事がメディアに出ますが、当時は半年に1回、三面記事に載る程度でした。記事の内容は、窃盗を起こした隊員についてが多く、必ず退職させて元自衛官として記事に載るようにし、現職自衛官が行ったものではないようにする努力をしました。

自衛隊は、社会に影響を与えず、社会から影響を受けないように、部屋の片隅で小さくしながら、着々と防衛力の整備を進めていた時代です。社会から離れて小さくなって生きている自衛官のモチベーションを上げるために競技会を活用、利用して精神の健全さ、団結・士気を確保しました。

 

 

競技会はいくら負けてもいい

 

競技会自体は勝負事なので好きですが、厳しい環境の時の競技会の性格から脱皮していな

かったり、競技会にすれば皆夢中で頑張り、企画実施も比較的簡単なので、安易に何でも競技会にしてしまうことに問題認識を持っていました。

年がら年中連隊では、150名が訓練を行わないで競技会の練習を一日中していました。そして、競技会に勝った部隊が強く、精強であると認める雰囲気がありました。師団で競技会をやる場合、その前に連隊で競技会をやり、その前に中隊で競技会をやるように計画するので、訓練時間がほとんどなく、競技会の練習と大会で時間が埋まってしまい、優勝すれば大宴会をやって、ハイ終わりの繰り返しになつていました。

私は、戦闘に強い隊員と部隊を作ることを目的に訓練を積み上げていこうと考えていたので、訓練時間を捻出するため、競技会は、一つを除いて全敗しても別に構わないことにしました。

そんなことでは、部隊の伝統がなくなるという声もありましたが、自衛隊の国際貢献活動が常態となり、厳しい任務が予想される時代、生き残り任務を達成して帰ってこれる隊員の育成が急務と考えたからです。

 

 

戦闘技術直結の射撃に負けはない

 

競技会で一つだけ絶対に負けてはならないものがありました。「40連隊に戦闘技術の負けはない」に直結する射撃技術、即ち射撃競技会です。そのため、射撃競技会の負けは無しとしました。優勝以外は無しです。戦闘技術として絶対に譲れない競技会と位置付けました。射撃訓練は、実弾を撃つ訓練から、非実射といわれる実弾を使わない射撃訓練があり、非実射訓練は何処でも一人でもできるものがあります。

実弾射撃と非実射訓練をチャンピオンになるための量と質を泣きは無しの本気モードで、積み上げていきました。

 

 

レギュラー選考のポイント

 

選手を選考する時期になると、誰にすればいいかで頭を悩ますことになりますが、実戦を想定して考えれば答えはすぐに出ます。

実戦には、Goodコンディションはめったにありません。Badコンディションの中で戦い抜かなければなりません。ここがポイントとなります。

射撃訓練間、寒い日や朝、少し暗くなった時、疲れてきた時の射撃データを見て分析します。いい射手はすぐ判定できますが、拮抗している選手でどちらを選ぶか判断する時、最高点や平均点も参考にしますが、最低点が高く安定した射手を選考します。

どんな場面においても確実に仕事をしてくれる実戦で必要なタイプです。波がある射手は信頼性が低いので使いません。

 

 

陸士長の言葉に感動する

 

まだこのメンバーでは安定した勝ちは難しいなと考えていた時、重迫撃砲中隊の陸士を含めた若いメンバーが官舎に来て飲んでいると、「futmiryu、私は射撃が当たります。選手になったら必ず撃ち抜きます。あと、彼も上手いです。

新隊員教育の時から、いつも自分と彼が1番と2番でした」、「自分達を出して下さい。40連隊に戦闘技術の負けはないを必ず実現できるように努力します。やらして下さい」 と燃えるような眼で話してくれました。

今日来たのはこれを言いたかったんだなと初めてわかりました。

担当中隊長に次の日伝えると、調べてみますと言い、しばらくすると連絡がありました。「この二人はかなりの腕です。中隊は何故推薦してこなかったのかわかりませんが、たぶん若すぎるのでベテランを出したからだと思います。すぐに選手としての訓練に加えます」とのことでした。

若手二人は、一生懸命訓練を積み上げ、一人が選手、もう一人が補欠に選ばれました。師団の射撃競技会では、やらして下さいと話した、士長なりたての20歳の隊員がなんと師団で一番の成績を叩きだしました。

射撃は経験がものをいうと考えられていて、若い隊員が選手になること自体が珍しく、40連隊は大丈夫かと周りで噂されるほどでした。

 

連隊内の厳しい射撃訓練に耐え抜き、初めての競技会参加で他部隊のベテラン選手達から白い目で見られるプレッシャーの中、彼は見事に撃ち抜きました。戦闘技術と戦闘技術を支える心がなければできないことでした。

重迫撃砲中隊の若い士長を見た、この時、戦闘技術には年齢は関係ないと確信しました。

 

 

 

 

 

自衛隊最強の部隊へ-偵察・潜入・サバイバル編: 敵に察知されない、実戦に限りなく特化した見えない戦士の育成
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【kindle本が出ました】

 

二見龍レポート#2 コンバットメディックの照井資規、弾道と弾丸を語る
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二見龍レポート#1 ネイティブ・アメリカンの狩りの技術を伝える川口拓氏との対談
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40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術

 

 

本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

 

 

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準

 

 

『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

 

オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界
オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界

 

 

オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
オオクワガタを通じ、色々な経験や学びがあり、人生が豊かになった感じがします。そんなオオクワガタ採集記をお楽しみ下さい。

 

 

 

オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~
オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~

 

 

マット飼育は、菌糸ビンのように簡単に大型を作出するのは難しい飼育法ですが、綺麗な個体を得ることができ、安価で多量にオオクワガタを飼育できることが魅力です。
本書により、マット飼育のコツを積み上げ、皆さんの目指すオオクワガタを作出して頂ければ幸いです。

 

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