誰が強いのか、何をすれば強くなるのか(その5)

誰が強いのか、何をすれば強くなるのか(その5)

 

 

訓練量を一気に3倍へ

 

陸上自衛隊は、戦闘訓練や実弾射撃を演習場で行います。演習場に1週間~10日間程、野営し、演習場というフィールドで戦闘訓練をします。何もない広場に天幕を張ったり、発電機を回したり、給水トレーラーを持ってきて野営をしているので、災害派遣でも野営訓練の方法で活動拠点が作れます。

国際貢献活動に参加したり、周辺国の情勢の変化もあって、各部隊は訓練量確保のために演習場の使用を増加させているので、演習場がなかなか取れないようになります。

訓練は演習場で行うという考えがまだ根強く、駐屯地では、訓練準備や射撃予習、体力練成をすることが通常なので、訓練をしたいが演習場があまりとれないので訓練が進まない状態でした。

更に、各中隊がそれぞれ訓練計画を作って実施をしているため、連隊トータルとしては重複していたり、上手く演習場を活用できていなかったり、演習場がとれない時は、訓練準備と称して整備をのんびりやっている状態でした。

また、各中隊は、競技会で競うためか横の連携もありません。

ここに、訓練量を確保するヒントがあると考えました。

 

 

連隊内競技会は全て止める

 

中隊間は、競技会で競うのでよいライバル関係ではありますが、射撃に関するノウハウを隠して教えないようにしたり、戦闘技術で40連隊として皆が力を合わせる雰囲気を阻害するため、連隊内競技会を止めることにしました。

中止にすることによって多くの訓練時間が得られます。

持続走や銃剣道など競技会で生きてきたメンバーは「伝統が失われます」と言いましたが、これからの時代、自衛隊は、毎日のようにメディアに登場し、ステージに立ってライトを浴びながら行動するようになるから、将来のことも考えて組み立てていこうと説得しました。

競技会がなくなったので、各中隊が持っているノウハウを全中隊全て公開し、第40普通科連隊として全員が共有し、レベルの底上げを行い、その上にノウハウを積み上げていく方式に切り替えました。

同時に、「我が中隊は」や「1中隊は」という主語を禁止し、主語を「うちの連隊は」、「40連隊は」、「小倉は」というようにして、連隊全体の連携とチームワークを作り上げるように、陸曹と幹部のアイデアをもとに進めました。

 

隊員は、競技会に勝つことが強いという考えから、「40連隊に戦闘技術の負けはない」方向に賛成し、協力してくれました。

 

 

各中隊の垣根をなくす

 

各中隊のノウハウを共有するとともに、訓練の垣根をなくして誰でもどの中隊に行って訓練してもいいシステムを作りました。各中隊長が集まって考え、何人でも受け入れるようにしました。

A中隊の業務を振り分けていると、どうしても5~6名が、余ったり、足りなかったりします。余ってしまった5名は、整備と称して1日整備をし最後の2時間に体力練成をして本日の業務が終了になります。

この5名をC中隊が歩哨訓練をしているところへ連れて行きC中隊の隊員同化して訓練ができるようにするやり方です。体力検定もB中隊がやる時、他中隊が参加することにより、準備の手間と時間をなくして訓練時間を確保できます。

訓練を見に行くと、D中隊に行ったのにC中隊の人数がかなりいて、他の中隊も混じっているのでC中隊がやってると思ったら、D中隊の訓練だったりするような場面が多くなります。

この効果は、凄まじいものがありました。

いつも各中隊のメンバーを入れて訓練しているので、中隊の垣根がなくなるばかりではなく、連隊の誰でも組めるようになり、同じ連隊の隊員とはすぐにチームを作って行動できるようになりました。

戦闘技術のレベルが上がれば更に誰とでも自由に組めるようにまります。若い幹部も半年毎に中隊配置を変えて、幹部も誰でも組めるような態勢にしました。

最初は皆不安のようでしたが、他部隊が見て驚く姿に自信を得て進むという面も出てきました。

 

 

本当は多くのことができる駐屯地内での訓練

 

駐屯地内に弾薬箱で模擬市街地を作って、演習場でければ訓練ができないという意識も改革しました。自動車教習の難しい部分は、S字やクランク、坂道発進の細かいところのテクニックです。

広い道での運転は、S字やクランクよりも運転技術をそんなに必要としません。戦闘技術の細かく、難しい部分を駐屯地内で徹底的に訓練できる場所と方法を皆で考えて作り上げることにしました。

進めていくとかなりの部分を駐屯地内と近傍小演習場(20分以内でいける近くの演習場が普通科連隊のある駐屯地の近くに1~2箇所あります)で訓練できることがわかりました。

演習場では、システムの組み立てや新しく考えた戦法の検証、総合連携訓練という演習場でなければできない訓練内容をおこないます。

 

 

訓練の進化が始まる

 

駐屯地内訓練は、移動時間も無く、準備が簡単のため効果的な時間の活用と濃い訓練内容を可能にします。各中隊が工夫をした訓練に他中隊のメンバーが参加し、学んだ内容を更に自分の中隊訓練の中で発展させていくので、訓練がどんどん進化していくスパイラルができます。

整備と称して1日中ゆっくりやっていたメンバーも時間を大幅に短縮し、駐屯地内訓練へ参加するようになってきました。

整備をしっかりやらなければならない時は、各中隊が協力して他中隊を応援する動きが自然にできるようにもなりました。

 

今までの3倍の実戦的な訓練を積み上げ、弱点をなくし、最新の戦闘技術、情報と火力を連動させる戦法を作り上げ、FTC部隊の斥候狩り要員を「狩る」レベルに各隊員の能力を上げ準備が進んでいきます。

※「誰が強いのか、何をすれば強くなるのか(その1)」、「誰が強いのか、何をすれば強くなるのか(その2)」、「誰が強いのか、何をすれば強くなるのか(その3)」、「誰が強いのか、何をすれば強くなるのか(その4)」を参照してみて下さい。

 

「FTCに負けて泣くなら、今の訓練で泣け」、「40連隊に戦闘技術の負けはない」と熱いメンバー達が隊員を鼓舞しています。

強さを求めて努力しているうちに隊員は、だんだん人間も成長してきた感じがしました。

 

 

 

 

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二見龍レポート#2 コンバットメディックの照井資規、弾道と弾丸を語る
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二見龍レポート#1 ネイティブ・アメリカンの狩りの技術を伝える川口拓氏との対談
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40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
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本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

 

 

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
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『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
 人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
 読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

 

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オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
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1 Comments

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