歩哨のレベルを見れば強さがわかる

歩哨のレベルを見れば強さがわかる

 

 

警戒のために設置する歩哨

 

陸上自衛隊の訓練では、部隊の宿営地の周りに歩哨を置き敵の侵入を警戒します。戦闘間も必ず歩哨を置いて部隊の安全を確保します。掩体(穴を掘って作った簡易な陣地)に2名を配置して、警戒区域を決めて24時間警戒をします。実戦では、歩哨が寝ていたり、音も立てずにやられてしまうと、そこから敵部隊の侵入を許し、休憩中の部隊が襲撃され大きな損害が発生します。

歩哨は、最前線や部隊とやや離れた所に配置します。歩哨は、実戦において非常に重要であると同時に、最も危険な任務となります。

 

 

訓練における歩哨

 

訓練では、警戒のため歩哨を配置しますが、どうしても敵は友軍弾は空砲のためか、新隊員や若い隊員が順番に歩哨につくことが、いつのまにか通例になっています。

実戦では、かなりの腕を持つ隊員がしっかり安全を確保しなければなりませんが、危機感や実戦意識は薄れがちです。

歩哨の配置している場所、歩哨のガンハンドリングのレベル、何かを察知したときの動作を見ただけで、部隊の真剣さと訓練レベルがわかってしまいます。

 

 

歩哨の位置

 

部隊の主力と歩哨の位置が近ければ、歩哨に対する射撃と主力への射撃が同一の場所にできるので、敵の近接を察知する歩哨の役割を果たせません。夜間行動が面倒臭いので主力のすぐ近くに掩体を掘って形だけ警戒する部隊がいますが、全く意味がありません。

歩哨を離れた所に配置する場合、ポツンとここにいますよという状態では、歩哨はやられてしまい帰ってこないでしょう。離れれば離れるほど、交代時に見つからないように掩体の位置まで行き、下番した隊員も敵に見つからず主力の位置に戻れる能力が必要です。

連絡手段もきっちり準備し、直ちに応援や迎撃態勢がとれるようにする必要があります。

歩哨の位置取りと部隊の訓練レベルを見れば強いか弱いかすぐにわかってしまいます。

 

 

見えない歩哨と罠

 

40連隊では、歩哨を徹底的に自然に溶け込ませ、敵から発見されない、見えない状態で比較的遠くに出します。敵を発見したら追尾し位置を正確に把握して、射撃により倒します。

逃げる敵は、追尾した歩哨が残りを片付けます。インディアンの狩りから学んだ戦闘技術が効力を発揮します。

敵の斥候や小部隊が経路として選定したいと思うようなところ、例えば、小さな地隙沿いの接近経路や真っ暗闇の接近経路があれば、わざと離れた所に見つけやすい歩哨を置き、地隙や暗闇の接近経路を選定しやすいようにします。

そして、暗闇の接近経路内に斥候狩りの部隊を展開させて敵を狩る罠も効果的です。知らないと、まんまと敵の罠にはまってしまいます。

自分達が罠を仕掛けることができれば、罠を回避し、安全を確保する方法を知っているので対処し易くなります。

 

 

1士の言葉に喜ぶ

 

掩体構築をしながら、警戒をしている1士二人にここでの警戒はどうなっているか尋ねてみると、A1士が、「自分は12時の方向から9時の方向を主として警戒をします。敵の接近経路は先ほど確かめに行ってみると2つありました。自分の射撃の腕では、アの経路から敵が来た場合、2名までならば倒せますが、3名だと倒せるか倒せないかなのでB1士に応援してもらいます。イの接近経路は3名まで倒せます」、B1士が、「A1士方向へ射撃支援できるように掩体を修正しています」と答えてくれました。

19歳の頼もしい若者は、続けて、3時の方向の警戒についてと二人では対処できない敵の人数や応援を呼ぶ方法を私に説明します。

話を聞きながら顔がほころび、思わずニコッとしてしまいました。

 
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オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
 日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
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