『十四代』は日本酒の世界に入り込む扉

『十四代』は日本酒の世界に入り込む扉

 

 

下戸で有名な人

 

 東北の友人のところへお邪魔すると、夜は当然、仲間が集まって夕食会が始まります。東北といえば、日本酒の宝庫です。東北で好きなお酒「伯楽星」、「乾坤一」、「雅山流」、「楯野川」など端から頼んでいるうちに、いつの間にか愉快になってしまい笑いが止まらなくなってしまいます。
 
 この会にお酒が飲めないのにいつも参加している人がいました。少しいけますかと聞くと、「ビールおちょこ一杯で真っ赤になってヘロヘロになってしまいます。日本酒はなめるだけで同じ常態になってしまいますが、この会は愉快なのでいつも参加しています。心配ご無用です。気にしないで下さい」と返ってきました。

 そのうち、会が盛り上がってきて、「こんな夜は十四代行ってしまいましょう」ということになり、さらに盛り上がりが加速していきました。
 「十四代飲んだことありますか」と聞くと、「勿論、飲んだことはありません。有名なお酒なのでなめてみたいです」というので、「では、3ミリどうぞ」と注ぐと「多すぎます」という反応に、「飲めない彼が今日、大酒を飲むぞ」と茶々が入りました。
  
 

 

怪しい目の光

 

 飲めない彼は、恐る恐るお猪口に口を付けるとすぐはなしました。「まだ飲んでないよ」といわれると、「このお酒はとてもいい香りで体が抵抗しません。不思議です」といいました。「無理しないでいいよ」といわれても、「飲めそうな感じがしてきました」と言うや、一気に飲み干してしまったのです。

 「おおー」と驚きの声が上がりました。「飲めない彼、今日帰れなくなるぞ」とよく彼を知っている仲間が心配するほど、3ミリという大量の日本酒を飲んでしまったのです。

 飲めない彼は、お猪口をもって、下を向いて黙っています。目は上目使いで私の方を見ていました。なんだか怪しい目の光り方でした。一気に酔いが来てしまい、やっちゃったかなと思っていると、「十四代大丈夫です。おかわりください」と素晴らしいものに出会った表情に変わったのです。
 その夜、飲めない彼は、お猪口2杯を飲み干し周りを驚かせて終了となりました。

 

 

14代何処で売っていますか

 

 次の日、飲めない彼からメールが来ました。だいぶ乗り越してしまったのかなと思って開いてみると、「14代はどこで購入できますか。晩酌しようと思います」と予想外の内容でした。
 その後、東北の夕食会に来るたびに、飲めない彼の飲む量が増えていき、2合は難なく飲めるようになってしまったのです。そして、多くの日本酒にトライして、勉強熱心になってしまいました。最近は、飲むお酒の紹介と説明は、飲めない彼がやるようになってしまったのです。
 仲間から、「飲めない彼からメールが来て、かなりの画像とコメントが最近来るようになった」とメールを見せて貰いました。

 ある時、私にも飲めない彼からメールが来ました。「14代を飲んだその夜から私の人生が豊かになりました」とお酒の説明の後に書いてありました。

 14代で日本酒に目覚めた自分と同じ仲間が増えたなと嬉しくなったのと、「師匠!日本酒の良さを伝えることができました」と心の中で師匠へ報告しました。

 日本酒の文を書いていたせいか、少し飲みたくなってしまったので、これから、愛知県北設楽郡の蓬莱泉「空」を味わおうと思います。

 

 

 

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