今回の対談は、自衛隊・警察・海保の訓練を長年支援してきたOTS畠山氏との対談です。
OTS畠山氏の問題認識として、『ACOG(倍率付き光学照準器)の導入』を提言しています。
以下、その内容を紹介します。
現在、陸上自衛隊で使用されている小銃は89式小銃が主流ですが、その銃を見ると米軍の使用しているM4というタイプと比べると至ってシンプルです。
米軍のM4というアサルトライフルにはライトや光学照準器、夜間レーザーサイト、フォアグリップなどゴテゴテと装着されています。
その中でもほとんどのM4ライフルに装着されているのが、ACOG(Advanced Combat Optical Gun-sight)という倍率が3~4倍の低倍率光学照準器です。
日本の89式小銃には全く付けられていません。
なぜ米軍は一般兵に至るまでこのACOGを支給し、その使い方を訓練しているのでしょうか?また日本の自衛隊は使っていないのでしょうか?
アメリカの米兵に聞くとM4ライフルのポイント・シューティング(人間の体に当てられる)距離は550ヤード(約500m)、エリアポイント・シューティング(3☓3ヤードの範囲に入る)距離は700ヤード(約640m)といいます。
陸上自衛隊の隊員に聞くと良く整備された89式小銃で非常に射撃が上手な射手でも300mの距離で人的に確実に当てるのは難しいそうです。
ところが良く整備された89式小銃に倍率のある光学照準器を搭載すると、通常の射手でも300mは確実に当てることが可能となります。照星・照門の射撃ではうまい射手でもやっと300mの距離で人的に当てられるレベルが、米軍のように光学照準器を装着することによって、確実に当てることができ、有効射程距離をある程度伸ばすことも可能となります。
陸上自衛隊でもダットサイトが装備されていますが、ACOGの装備化が進んでいません。ACOGとダットサイトとの違いは倍率があるということです。
ダットサイトは無倍です。素通しの筒で、筒の中に赤い点が照準点を指し示すだけです。利点として赤い点が目標物を指し示すので非常に早く照準できます。
また、両目照準ができるため視界が広くなり、狭い場所での近距離の戦いには非常に有利です。
少し前は米軍も多くの兵士がダットサイトを使用していましたが、現在はほとんどの兵士がACOGを使用しています。
それは敵も近い距離の戦闘であれば圧倒的な火力の差のある米兵に立ち向かうことは不利だと知っており、遠距離から川や障害物を挟んでの射撃やRPG-7などの携帯型対戦車擲弾発射器、さらにIED(即席爆発装置Improvised xplosive Device)などに戦法に変えてきたからです。
遠距離の状況が把握でき、近くに寄らなくても戦うことができるために、小銃に倍率付き光学照準器は必須になっているわけです。
自衛隊でも早い時期に倍率付き光学照準器を導入して、使用方法も練成しておかないといざ必要という時期に後れを取ることになります。
また、倍率付き光学照準器を搭載すれば、射撃練習する弾数も少ない日本においては練習効率も上がります。導入するための価格も安く、非常に有意義な装備品をだと思われます。
そして、それらを使いこなせるように練成することが、今の自衛隊には必要と思われます。
以上が畠山氏の問題認識です。
このように、海外の状況を常に把握し、世界標準の装備を20年前から紹介してきた畠山氏との対談は、実戦に強い部隊・隊員を支援してきた仲間として熱く語り合う対談となりました。今回の対談は、かなり内容の濃い情報を提供できるものになったと思います。
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