自衛隊は、危険な災害現場においても、災害派遣活動を安全確保を確実して行うことができるのは、戦闘行動と違いかなり容易なオペレーションであるからです。
災害派遣では、災害現場の位置を押さえてしまえば、災害の現場はそこから動くことはなく、災害の規模と対応に必要な機能を投入してしまえば、確実に任務を達成することができるからです。
一方、戦闘行動において、敵は自由意志を持ち、行動を秘匿しながら自由自在に動き回り、機を見て攻撃をしてきます。
そのため、四六時中敵の警戒・監視が必要となり、一度捉えても取り逃がしてしまったり、思ってもみないところから現れて我々を撃破するため、各種火力を指向してきます。
高いレベルの戦闘技術を有する敵の場合、敵自体を発見することができなかったり、どのような行動を選択するか読み切ることが難しくなります。戦闘が起こったとしても、短時間に大きな損害を受けることが多くなります。
このため、災害派遣活動は、容易な活動であるといえます。
部隊の指揮・統制という面を見てみると、大部隊同士で撃滅を行う軍事行動では、ピラミッド型の指揮統制方式が有利となります。ピラミッド型の指揮統制方式は、戦闘部隊の保有する組織力を敵部隊の撃破のため、集中発揮するのに適しているからです。
しかし、災害派遣は、自衛隊が単独で行動することは少なく、多くが県知事等による災害派遣要請に基づいて活動を行います。指揮・統制の形は、自衛隊が頂点にいて指示命令をする方式ではなく、県・警察、市町村・消防、地方整備局、住民などが連携して対応する平行型指揮統制方式となります。PKOも同じ形になります。
また、中国の超限戦やロシアのハイブリッド型の戦争においても、非軍事と軍事の境目がなく、情報戦、宇宙戦、電子戦、非軍事組織の活動に対処するため、国では、各省庁、地方自治体、警察が連携して対応していかなければならない形態になります。
平行型指揮統制方式が重要になっていくものと考えられます。40連隊長時代に経験した災害派遣活動の一つ、玄界島災害派遣活動を本にしたものが、『自衛隊最強の部隊へ-災害派遣編: 地震発生! 玄界島へ出動せよ!』です。1月9日刊行されます。
福岡県西方沖地震で被害を受けた玄界島の災害派遣を行い、多くの方から沢山の励ましや感謝の言葉を頂きました。多くの方の心から発した言葉は私の心に注ぎ込まれました。
その中でも、メディアの人から言われた『40連隊は強い部隊ですね』は、常に強さを求め続けている40連隊の隊員全員が最も喜ぶ言葉となりました。
自衛隊最強の部隊へ-災害派遣編: 地震発生! 玄界島へ出動せよ!