リーダーは、その組織の行動のすべての責任を担うということがリーダーシップを発揮するために重要であるといわれています。
指揮官(社長、CEO)のもとでチームを引っ張るチームリーダー(部長・課長)が、自衛隊の作戦(営業戦略など)において上手くいかなかったり、失敗した場合、「情報収集がしっかりしていないところが失敗の原因で、自分たちに落ち度はないし責任はない」という発言をしたとします。
この発言を指揮官が、人のせいや環境のせいにして自分たちの責任を感じていない状態を「容認」してしまった場合、どのような影響が出てくるのでしょうか。
部長や課長が、環境のせいや人のせいにしても、上司から「注意されない」、「指導を受けない」という状態が何回か続くと、このような発言をしたり行動をしたとしても許される雰囲気があると感じるようになります。
指揮官その職務にいる間に続くと、徐々に「自分には責任がない」と他責にしてしまっても、怒られないし、行っても問題のない職場の雰囲気が定着していきます。
例えば、幹部が、果たすべき役割や業務が上手くできていなくても、自分には責任がなく、他責にするという行動を取れば、当然、部下も同じように行動するようになります。このような状態が、2~3代続けて着任した上司が行った場合、10年近い環境が続くことになります。
そうなると、これが企業風土として定着していく可能性が高くなります。
部下がその企業風土を作ったのではなく、その発端は、トップのリーダーシップの欠如から発生したことがわかります。指揮官の責任感、使命感が非常に重要であることがわかります。
犯罪学者のジェームズ・ウィルソンとジョージ・ケリングが発案した「割れた窓理論」というものがあります。
これは、割れたまま修理されていない窓を放置していると、割れた窓が当たり前になっていき、誰も気にしなくなってきます。
それが普通の風景として捉えられるようになると、窓ガラスを割った責任をだれも取ることなく、追求されることもない所であると思うようになります。
そうすると、まもなくほかの窓も割られるようになり、無法状態の雰囲気がそのビルから向かいの通りへと伝わり、一帯では何でも許されるという状態になり、他へもその雰囲気を広げ始めるというものです。
同じように、部下は、ここまでは許されるようだが、もうワンランクレベルを下げたらどう反応するだろうかと考え、試して確認する行動を取るかもしれません。
これに対して、上司が、「まあ、この程度ならいいだろう」と容認した場合、許される範囲が広がっていくことになります。
このような状態が続いていった組織のなれの果ては、優秀な人材や次期主力社員の離職が始まり、その環境の中に置かれた新入社員が雰囲気に染まり、『組織にぶら下がる人材(言われたことだけを最低限のレベルで行う)』だけが残る組織となります。
ここまで行くことはないかもしれませんが、組織力や生産性は大幅な低下となるのは確実です。
きっかけは、小さなことの『容認』から始まります。リーダーは、マイナスの『容認』を許していくことによって、組織が崩れていくことを強く認識することが重要となります。
自ら発想して行動していく組織を育成していくと同時に、様々なところで発生するかもしれないマイナスの『容認』が行われないようにする必要があります。
部下が、自主的に動くようになった組織は、マイナスの『容認』はほとんどなくなります。この時に気を付けることは、チャレンジを続けているので限界に近い状態での活動となるため、安全管理、コンプライアンス、結節時の報告を行うようにすることが必要になります。
イラク派遣隊長が語るロケット弾が降り注ぐ復興支援 戦闘組織に学ぶ
よく考えて、前へ! : 方面隊運用と福島原発対処 戦闘組織に学ぶ
二見龍レポート#13 自衛隊の元狙撃教官が語るスナイパーの育成方法
二見龍レポート#14 照井資規が語るコンバット・メディックの最前線