「人間の脳は、人に似たシルエットを確認して人間であると認識します」とスカウト・インストラクターは話し、「これから二人ペアになって鹿になってもらいます」と言われた隊員は、「どうするのだろう」状態です。
一人が腰をかがめた状態になり、もう一人が、頭を下に向け前の人間の腰へ手を回し身体を90度前に倒した状態になります。
これで鹿の出来上がりです。確かに四足になりましたが、前の人と息が合わないと足が合いません。
青空の広がる演習場で、鹿の形になり、歩行の練習を開始しました。隊員は、「これ本当に効くのかなあ」と思いながらやっている感じです。
昼間は、違和感たっぷりの鹿ですが、日が暮れ闇が広がると、鹿にあった違和感がまったく無くなってしまいます。インストラクターの「鹿歩いて下さい」の合図で、1頭ずつ鹿が歩いている状態を皆で確認をします。
すると、「あれ」、「なんでだろう」、という声が隊員の間から出ます。そして、「鹿だよなー」と言います。人間とは感じ取れず、四足の鹿が近くを歩いているように見えるのです。
後日、対抗方式の訓練で連隊の斥候要員が歩哨の近くを「鹿」になって通過しても、気づかれなかったと報告が入りました。「鹿」は、効きます。