戦機(チャンス)は揺れながら、最後は強い心に引かれていく

戦機(チャンス)は揺れながら、最後は強い心に引かれていく

 

 

1 女神がほほ笑む、戦機とは

 

戦いに「戦機」というものなんかがあるなんて私は、当初信じていませんでしたし、無関心でした。しかし、実戦に近い訓練を企画運営していくうちにその考えが変化していき、そして、訓練をしていけばいくほど、戦機の存在を信じるようになっていきました。

更に、敵味方に分かれて実戦的な訓練をしていると両者で錯誤が必ず発生して、思ってもみない方向へ状況が進んでいくことがわかりました。これも戦機と大いに関係があるとわかりました。

戦機は、戦っている時のターニングポイントであり、この時に如何に判断をして行動をするかによって戦線が大きく変化していき、一挙に勝敗が決まっていく分水嶺のようなチャンスでもあり、ピンチとなるものです。

 

 

2 見えない戦機の存在に気づく

 

この戦機をどう自分達に引き寄せていくかという重要性は誰もがわかっているのですが、戦っている両者には、不思議なことに戦機はまったく見えません。戦機を運ぶ女神がどこにいるかまったくと言っていいほどわかりません。

しかし、この戦機を見ることができるメンバーがいます。両方の状態を見て戦闘訓練を審判し、訓練の企画・運営をする部門です。

両方の無線や現地、作戦本部が何を考えているかが分かり、現実とその現実をどのように両者が判断しているか、全てわかる部門のため、戦機を運ぶ女神を感じることができます。

 

 

3 「攻撃対防御」の戦機の動き

 

ある一場面をこれから紹介します。

主力から離れて防御をしていて、2日頑張れば、主力が来て優位な状態になるという防御部隊を攻撃部隊が攻撃をしている状況です。

防御側のリーダーが主力の指揮官へこのような報告をしました。「敵の攻撃は止まることなく続いており、我々の損害がどんどん出ています。敵の損害は小さくこのままでは厳しい状況になります」、指揮官は防御しているリーダーへ「あと、少しなので頑張れ、火力を増加するので戦闘に使用するように」と指示しました。

防御側は一晩中相手の攻撃を受け続け、明け方前に「このままではやられてしまいます」と報告を続けています。防御をしているリーダーは、防御線を抜かれてしまうかもしれないと感じており、主力の指揮官は、なんとか首の皮一枚で持ちこたえていると考えています。

現地に企画運営部門として確認に行くと、防御側はまだ十分戦力が残っていて、どうしてこのような危機感が出ているのかなと思っていると、攻撃部隊がいくら戦っても損害がほとんど出ておらず、更に新しい部隊が出てきて攻撃をしてくるので、相当な戦力があり、このままではやられてしまうのが時間の問題ではないかと感じているのがわかりました。

攻撃側は、どういう状態かと調べると、防御側の火力により、かなりの損害が出ていて、攻撃の手を緩めると防御側が攻撃をしてくる可能性があるので、部隊が沢山いるように動き回りながら、防御側がよく確認できない夜間を上手く使って戦っていました。「もう戦力が残り少ないので、補給部隊や修理部隊も攻撃に参加させている」、これが防御側では新たな部隊に見えていたのだとというのことがわかりました。「なんとか、昼まで攻撃してから、後方へ下がり立て直そうと考えています」ということでした。

あと一押しで防御側はどう対応するかなと思いながら企画運営の部屋へ戻り、しばらくすると、防御側は、「昼までに、現在の陣地から後方の陣地へ移動し、戦力を立て直す」と判断し、攻撃側は、「昼までに監視要員を残し、後方へ下がり立て直しを図る」という判断を行い、何と両方の部隊がどちらにもチャンスがあったのに掴み切れず、お互いに危機感を持ってしまい下がってしまう結末になりました。

どちらにも勝つチャンスがあったのですが、戦機を掴めず女神はほほ笑んでくれませんでした。

状況の正しい把握と積極性が重要であることがどちらもみている者にとってはわかるのですが、自分の方ばかりがやられていて、相手はあまりやられていないと考えてしまい、なかなか積極的な動きをとるというのが難しい状態になるのが現実だというのがわかります。

攻撃側は、ボロボロになっていて後方に下がりましたが、もう一押しすれば、防御側が崩れてしまうというチャンスがあり、防御側は、攻撃側に大ダメージを引き続き与えるチャンスであったといえます。

 

 

4 「攻撃対攻撃」の戦機の動き

 

次の場面は、強い意志がピンチを救うという場面です。お互いが同じ戦力なのでお互いが攻撃をする場面で生起しました。

Aの保有する4個の部隊のうちの1個の部隊が、どういう訳かここから来る部隊はないとBが配備しなかったところを通って、上手くすり抜けトンドンBの本部の方へ進んでいて、このままでは本部が攻撃されやられる可能性が高いということをB本部は把握しました。

Bは対処しようにも、Aの部隊を攻撃するため、Bの4個の部隊も前の方に前進していて、間に合わないと判断した、

B指揮官は本部近くにいる補給部隊や車両の運転手等、ありとあらゆるメンバーを集合させて、全員で防御をして部隊が戻るまで頑張る体制をとると命じました。

上手くすり抜けた部隊は、装甲車や戦車もあり、大きな戦力なので戦えば時間の問題でAが勝ちます。

Bの指揮官はできることを全て準備して待ち受けをしています。現場を確認すると厳しい状況だなとすぐわかり、今回は早く勝負が決してしまうなと考えていると、Aのすり抜けた部隊が、道を間違え少し遠周りに接近をし始めました。

勝ちをとるため、急いでしまった結果でした。よく偵察しておけば全く問題がなかったことでした。

そうこうしている間に、何と、Bの1個部隊が、道を間違えていて、このまま進むとすり抜けた部隊の横に出てくる状態になっていて、今度は急きょA部隊がやられる側になってしまい、A指揮官はすり抜け部隊へ指示を出し、方向変換させました。

B指揮官はこの偶然に驚き安心してしまったため、すり抜けてきたA部隊を十分叩くことができませんでした。

B指揮官の残っている全員で戦うという強い意志が壊滅する流れを変えましたが、チャンスは十分いかせませんでした。

勝利の女神は、両者へ同じ分の戦機を持って行ったりきたりしていて、強い意志のところへ微笑みますが、すぐに反対のところへ行ってしまいます。

情報は女神の存在を知ることができる重要なものであることも分かります。

 

 

 

 

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