第40普通科連隊も学んだ隠れたサバイバル技術の第一人者、川口拓氏

第40普通科連隊も学んだ隠れたサバイバル技術の第一人者、川口拓氏

 

 

重さを感じない心地良い空間を持つ男

 

スカウトの戦闘技術は、自然に溶け込み気配を消す「カムフラージュ、ストーキング」、痕跡を追い相手を追い詰める「トラッキング」、あらゆる場面で自活し生き残る「サバイバル」、身を守る「マーシャルアーツ」に区分されます。自分の知っているスカウトのメンバーで森に放したらほぼ捕捉は困難であると思う「カムフラージュ、ストーキング」と「サバイバル」の名手が数名います。この一人が川口拓氏(拓さんと事後呼びます)です。

カムフラージュの第一人者と言われる人に共通するものがあります。

それは、会っていても人間の質量を感じず、その人を自分の手の平に乗せることができるように感じ、ゆったりとした一定の時間の流れと心の休まる空間の中にいる印象を受けることです。
一言で表現すると、一緒にいて居心地良く、ゆっくりとした時間が流れ、心が落ち着くように感じさせる人間です。

拓さんといるといつも感じることです。

 

 

一定のリズムで穏やかに話す

 

都市部や一般社会の中で、拓さんはとても人懐っこく、ユーモアに溢れ、家内は拓さんが家に来ると拓さんの話にいつもコロコロ笑っています。明るく楽しい人柄です。

しかし、スカウトの話や自然の中に入ると拓さんは、物静かに一定のリズムで穏やかに話します。自然の中に入ると回り全体を常に見るワイドアングルに目が切り替わります。
人間社会では、話す時は相手の目を見るようにしたり、凝視することが多いですが(スポットアングルといいます)、自然界では全ての動物がワイドアングルで生活しています。

拓さんは焦点を一つに合わせず全体を見るワイドアングルになり意識せずに自然に溶け込むことを行います。

ワイドアングルは、ベースラインの中に溶け込むための第一歩です。

ベースラインを崩さないようにするには、一定のリズムでゆったりとワイドアングルで歩く必要があり、訓練をしないと身に付きません。

 

 

40普通科連隊も学んだベースライン

 

小倉の第40普通科連隊勤務の時、スカウトの中で気配を消し敵に見つからない技術を拓さんから学びました。特にベースラインの重要性について拓さんから時間をかけて講義を受けました。

自然にはいつもの状態がベースラインとして存在し、野生動物や昆虫は、侵入者や変わったことが起こるといつものベースラインが崩れ危険が迫っている警告音を発しその場を離れていきます。
気配を消す基本は、その場所に存在しているベースラインを崩さず溶け込むことであることを学びました。

当時、拓さんの教えは強烈に隊員一人一人の心に焼き付き、連隊全隊員がベースラインを知り、溶け込む訓練を行いました。

ある時、拓さんが私はベースラインの取り方を間違っていたことがありましたと笑いながら話してくれたことがあります。

拓さんは、訓練のため、毎日同じ時間にワイドアングルの状態で近くの公園をゆっくり歩いていると、毎日見かけるおばあさんが突然近づいてきて、「毎日あなたを見ているが、あなたの目には全く力が無くどこを見ているわけでもなく、ゆるゆる力なく歩くあなたの姿には人生に対する喜びや生きがいを全く感じられず毎日心配してます。もっと人生に生きがいと喜びを見つけて下さい。いいですね」と言われました。

ワイドアングルを維持し、自然のベースラインに溶け込む訓練をしていたのに、人間が存在する公園では拓さんの行動は、普通の人間にとって、とても目立ち多くの人を心配させ、人間中心の公園のベースラインを崩す結果になっていました。

拓さんは、おばあさんから「あなたは、人生に生きがいや喜びを得るため、私の入っている宗教団体に入りなさい、そうすれば救われるでしょう。今から連れて行ってあげます」と勧誘されたそうです。

拓さんが素早い身のこなしでその場から消えたのは言うまでもありません。

「まだまだ修行が足りません」と拓さんが話す傍らで、家内が大笑いをしています。

 

 

ブッシュクラフトはサバイバルの基礎が満載

 

一般の人は、サバイバルという言葉から、ミリタリー特有の我慢する厳しいもの、災害時などの厳しい状況での生きのびる術とメージしがちです。
拓さんは、サバイバルを多くの人が自然に近づき自然を楽しむにはという柔らかい視点で、本格的なサバイバル技術をブッシュクラフトとして紹介しています。

文章と写真が一対一になっており、自然に触れる楽しさやブッシュクラフトのイメージが伝わるように作られています。

 

ブッシュクラフト-大人の野遊びマニュアル: サバイバル技術で楽しむ新しいキャンプスタイル
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戦闘の参考になる映画「ハンテッド」

敵に見えない動きを追求する

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自衛隊最強の部隊へ-偵察・潜入・サバイバル編: 敵に察知されない、実戦に限りなく特化した見えない戦士の育成
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【kindle本が出ました】

 

二見龍レポート#2 コンバットメディックの照井資規、弾道と弾丸を語る
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二見龍レポート#1 ネイティブ・アメリカンの狩りの技術を伝える川口拓氏との対談
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40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
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本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

 

 

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準

 

 

『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

 

オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界
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オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
オオクワガタを通じ、色々な経験や学びがあり、人生が豊かになった感じがします。そんなオオクワガタ採集記をお楽しみ下さい。

 

 

 

オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~
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マット飼育は、菌糸ビンのように簡単に大型を作出するのは難しい飼育法ですが、綺麗な個体を得ることができ、安価で多量にオオクワガタを飼育できることが魅力です。
本書により、マット飼育のコツを積み上げ、皆さんの目指すオオクワガタを作出して頂ければ幸いです。

 

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7 Comments

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  6. 横井 進

    非常に参考になることが多く拝見しております。
    質問なんですが、Kindleでの販売ではなく書籍として発売されることはあるのでしょうか?

    1. futamiryu

      横井様

      嬉しいコメントありがとうございます。
      モチベーションが上がります。

      二見龍レポートは、これからシリーズで出していく予定です。
      これらを書籍にするか検討中です。

      現在kindle本で出ている「40連隊の見えない戦士たち」は、来年すぐに出版社から出版される予定です。
      この中に川口氏の内容も入る予定です。

      よろしくお願い致します。  
        
                          二見 拝

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