教育・訓練の改革に活用できるマーケティング理論を知っていますか?

教育・訓練の改革に活用できるマーケティング理論を知っていますか?

 

 

イノベーターキャズム理論を知っていますか?

 

100円のコーラを1000円で売る方法という題名の本を「これ、なかなか面白い」と言われて読んでみたところ、100円のコーラを売る話ではなく如何に商品を売り込んでいくかというマーケティングに焦点を合わせた物語風のとてもわかりやすく一日で読めてしまう感じです。

その中で新製品は何故売れなくなるのかということを「イノベーターキャズム理論」で説明している場面を見て、この理論は、新たな教育訓練を普及する時、知らなければならないものだと思いました。

 

100円のコーラを1000円で売る方法 100円のコーラを1000円で売る方法2 (中経出版) 100円のコーラを1000円で売る方法3 (中経出版)

 

 

教育・訓練の改革の実例

 

この本を手にしたのは、関東甲信越地域の教育担任をする部隊に勤務している時でした。訓練に関する新たな考え方や教育内容、訓練内容を1年という短い期間内に教育を担任する部隊へ如何に普及・定着させようかと考えているところでした。次のようなパターンに陥りやすいからです。

訓練に関する新しい考え方と要領を導入しようとした場合、まず、今まできちんとやっていたことを何故変えなければならないのか、そのための訓練計画や教官やインストラクターの教育をどのようにしたらいいのか分からないと多くの組織から声が聞こえてきます。

大多数が新たな訓練要領の導入を歓迎しない状況でも、1割~2割のメンバーがやってみましょうと手を挙げる人達がいます。

そして、リーダーの指導のもと新たな訓練要領へのチャレンジが始まり、他の組織が見ると皆がやっているように見えてしまい、全員が新たな訓練要領をやっていると周りへ広まります。

2年程度経つと日本全国へその話が伝わっていき、学びに行こうと他の部隊が研修の希望を出した時は、新たな訓練要領にチャレンジしていた部隊の状況は大体次のようになっています。

旗を振って引っ張っていたリーダーや幹部も人事異動してノウハウが消えていて、元々大多数はやりたくないのにやっていたため、急激に消滅してしまい、返ってマイナスの方向まで行ってしまうほど、ほとんど何も残っていない状態になっています。

こんなパターンを繰り返しているので、部隊にいるベテランの幹部や陸曹は変化に乗ってもまた元に戻ってしまうのなら、今やっていることをしっかりやった方がいいという気持ちがどうしても強くなってしまいます。

どのようにすれば、新たな訓練要領を教官やインストラクターが必要性を理解して皆で考えながら進めていき、多くの部隊に普及と定着が進み、一時で終わることなく、継続発展させることができるかについて、部屋で青い空を眺めながら考えていました。

尊敬する師団長から教えて頂いた言葉を思い出しました。「futamiryu(著者)よ、意識と行動を変えるには、まず情勢認識を変えなければならない。

情勢認識が変わらない限り、納得しておらず、やってもいやいややるし、手を抜いてダメにしようとするもんだ。情勢認識が変われば、大きく舵を切ることが可能となる。」

まず、今までの状況や置かれている立場が変化してきたので、今までの考え方を見直す必要があることを理解してもらうアクションを開始することにしました。

次は、1割~2割のメンバーは対応するものの、残りの大多数のメンバーは上手くいくものかと様子見をしたり、皆がやり始めたらしょうがないからやろうというところを如何にするかがポイントになります。

 

戦いの中でやられないで生き残る人
この写真は、永田市郎様から頂いた画像を使用致しました

 

 

イノベーターキャズム理論の概略と運用方法

 

「イノベーターキャズム理論」では、新商品が何故売れなくなるかについて、次のように説明しています。新商品が出ると新しいものを受け入れたり、対応する人達が、14.5%いて新商品の広告により購入しますが、全く興味も示さない人達が同じように14.5%いて、残りの70%近い人達は様子をうかがっていたり、皆が買うなら買おうと動こうとしません。当初飛びつく人達をターゲットにした売り込み要領では、70%の人達は動かないので、当初は売れますが、徐々に売れなくなり、最後は消えていくと説明しています。

飛びつく14.5%の人達をイノベーターと呼んでいて、この14.5%と70%の人達のところには大きな谷間が存在していて、この谷間をキャズムと呼びます。キャズムの向こう側にいる70%の人達へのマーケティング戦略はイノベーターの人達に行ったものとは異なるやり方が必要であり、大多数の人達への浸透を図る方法へ切り替えなければなりません。この切り替えがなければ、キャズムに落ち込み消えていくという内容です。

自衛隊では、ともすれば、イノベーターの動きで喜び、同じ方法を続けていくので継続・浸透していかないのではないかと考えました。

師団長の言葉と「イノベーターキャズム理論」を参考として新たな訓練要領の普及を開始することにしました。

情勢認識を変えるための説明キャラバンを丁寧に計画的に行い徹底的に情勢認識を変える行動を行い、この動きに反応したイノベーターの人達を、周りへの火付け役として活動範囲を拡大させるとともに、同時に、70%の人達への施策を開始しました。

教官・インストラクター選抜メンバーの教育を行い、選抜メンバーが部隊に普及していく要領や検討会・技術レベルの判定を繰り返し行い、70%のメンバーに火が付いて自らが言われなくとも進めていくようになるシステムへの切り替えを行うことにより、普及・定着化を進めました。

思ったよりも早く、8か月で軌道に乗ってそれぞれのメンバーがどんどん訓練要領を発展させていくようになりました。イノベーターキャズム理論を是非とも実践してみて下さい。

 

 

 

 

 

自衛隊最強の部隊へ-偵察・潜入・サバイバル編: 敵に察知されない、実戦に限りなく特化した見えない戦士の育成
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【kindle本が出ました】

 

二見龍レポート#2 コンバットメディックの照井資規、弾道と弾丸を語る
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二見龍レポート#1 ネイティブ・アメリカンの狩りの技術を伝える川口拓氏との対談
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40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
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本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

 

 

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準

 

 

『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

 

オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界
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オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
オオクワガタを通じ、色々な経験や学びがあり、人生が豊かになった感じがします。そんなオオクワガタ採集記をお楽しみ下さい。

 

 

 

オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~
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マット飼育は、菌糸ビンのように簡単に大型を作出するのは難しい飼育法ですが、綺麗な個体を得ることができ、安価で多量にオオクワガタを飼育できることが魅力です。
本書により、マット飼育のコツを積み上げ、皆さんの目指すオオクワガタを作出して頂ければ幸いです。

 

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