20年以上前、栃木県奥日光を紹介する番組でオオクワガタが外灯へ飛んできた映像を見たのを思い出し、一昨年から川俣温泉・栗山地域の偵察を続けています。奥日光は、桧枝岐の南に位置し、一次林のブナ・ミズナラ帯が保全されている豊かな自然があります。
宇都宮インターチェンジから朝霧高原を越えトンネルを抜けると、自然が一挙に深くなります。少し、標高が高くなりますが、オオクワガタ採集ポイントとして申し分ない感じがします。
灯下採集では、マイマイガ発生以降、電球がLED化され採集ポイントが減少しているため、夜間の灯下採集と昼間の朽木割り採集を行う計画を立てました。
里山の広葉樹の朽木割は、経験がありますが、山間部のミズナラなどの朽木割りは今回初めてです。
多分一人の採集者が入って所々確認している程度で、ほとんどが手付かずの状態です。立ち枯れは、キノコが寄生し、キノコが衰退している状態のものを狙います。
里山にはない大きな白いキノコがニョキっと付いている木を、棒で叩くと「この木は堅いぞ」というカンカンという音に近い音がします。この大きなキノコでは、白枯れが進まないことがわかりました。
積雪地は、雪が積もるよりも上の方にオオクワガタは産卵すると読んだことがあります。地面に近い倒木は、雪に埋もれ、水分が多すぎる状態になるので山間部では、5m以上のポイントを狙うといいと記事にありました。
更に、低温になるため、直径60㎝以上の朽木がいいと書いてありました。
山間部で、5メートルの高さまで木登りをするのは、至難の業です。
そこで考えたのは、空気が動き、やや乾燥気味の場所の朽木と、風倒木で倒れて雪をかぶっていないキノコによって白枯れした部分を狙う作戦です。
山を歩いていると、ここは風が通るなという場所が体感でわかります。
そして、谷ではなく、やや高台になっているところの倒木は水分過多になっていないので狙い目となります。
南向きのいい感じの場所を見つけ探索を開始しました。
するとすぐに、標高が1000m近くでもミズナラなどにカワラ茸が寄生し、白枯れしている朽木があります。カワラ茸は、標高があってもそんざいするんだと感心しながら偵察を続けます。
至る所に良質の白枯れの朽木があります。
数多くの朽木を調べましたが、クワガタの食痕はなく、カミキリムシや玉虫の幼虫が時々確認できる程度であり、昆虫の姿自体が薄い状態でした。
不思議な感じでした。
そろそろ日も暮れはじめ、灯下採集へ切り換えのため下山の時間がきました。
雨と低温で甲虫の活性は、低くあまり良い条件ではありません。
狙い目のポイントでも、甲虫の姿は薄く厳しい状態です。
22時頃あまり期待の出来ないポイントを回っている時でした。
重要ポイントではないので懐中電灯もポケットに入れたまま、灯りを確認していました。
「ン!」
壁に付いている小さな灯りの近くに黒くオオクワガタのシルエットのメスを確認しました。
もう頭の中は、「奥日光ポイント開拓の読みは正しかった」、「大きさも37㎜~38㎜程度でギリギリブリーディングにも使える型だな」と採集後の行動まで考えています。
素早く接近して左手で掴み、ゲットと思いきや、ゲットではありません。
関節が堅く、厚みのあるボディは、完全にオオクワガタの感覚とは異なります。電灯で確認するまでもありません。
ミヤマクワガタのメスでした。
今回は、ミヤマクワガタのメスの発生時期のようで、灯下に来るクワガタは、全てミヤマクワガタのメスです。
素晴らしい自然がありますが、3年間の偵察の結果、甲虫の存在が薄くここでのオオクワガタ採集は難しいという結論となりました。
もしかしたら、良質なポイントがあるかもしれませんが……
まだまだ、確認したい場所が他に多くあるのと、基本に戻って数年間ポイントの定点観測を行い採集をしようと計画しているため、今年で当地域の採集は終了とすることにしました。
豊かな自然に感謝しつつ、奥日光を後にしました。
≪次のブログも参考にお楽しみ下さい≫
オオクワガタトラッキング採集編1 -山梨県甲府地域(その1)-
オオクワガタトラッキング採集編2 -山梨県甲府地域(その2)-
【kindle本が出ました】
二見龍レポート#1 ネイティブ・アメリカンの狩りの技術を伝える川口拓氏との対談
40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。
そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。
40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。
オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界
オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
オオクワガタを通じ、色々な経験や学びがあり、人生が豊かになった感じがします。そんなオオクワガタ採集記をお楽しみ下さい。
オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~
マット飼育は、菌糸ビンのように簡単に大型を作出するのは難しい飼育法ですが、綺麗な個体を得ることができ、安価で多量にオオクワガタを飼育できることが魅力です。
本書により、マット飼育のコツを積み上げ、皆さんの目指すオオクワガタを作出して頂ければ幸いです。