実戦的な訓練を進め部隊を強くするヒント満載の映画

実戦的な訓練を進め部隊を強くするヒント満載の映画

 
 

実戦的な訓練の進め方教えてくれる「ハートブレイク・リッジ」

 

ハートブレイク・リッジは、1979年のグレナダ侵攻を題材にした映画です。米軍は、第2次大戦で1勝しましたが、ベトナム戦争で1敗、朝鮮戦争で1分と、しばらく勝ちがありません。3つの戦いに参加し、歴戦を生き抜いた退役前の主人公(クリント・イーストウッド)が、周囲の反発の中、次の実戦が発生したら必ず勝利できる強い部隊を鍛え上げていきます。そして、グレナダ派遣後、彼の部隊がチームワークを発揮し困難な状況も突破して、活躍する映画です。

ベトナム戦争後、国内の環境が変わり、常に実戦で勝つことを考えて行動する主人公は、周囲から煙たがれ、受け入れられない状況でした。

主人公は、上司から評価されず邪魔者扱いされ、部下もついてこない状態の中、実戦的な訓練を行い、強い部隊に仕上げていきます。

「ハートブレイク・リッジ」には、厳しい環境の中で、実戦的な訓練を進めていくノウハウや考え方のヒントが多くあります。

 

 

ベトナム戦争後の環境

 

グレナダ侵攻の時期は、ベトナム戦争で大きな痛手を受け、米国内に厭戦気分が広がり、しばらく実戦から遠ざかっていた時期です。
その環境の中、次の戦いで必ず勝利するため、主人公(クリント・イーストウッド)は、実戦で必要とする戦闘能力を付けるため、容赦せず部下を厳しく安全管理の範囲を越える訓練を行います。

そんな主人公は、上司から目を付けられ、部下からも「こんな時期に何故ここまで本気モードにならなければならないか」猛反発をくらいます。

第2次大戦から激戦を生き抜いてきた戦士にとって、ベトナム戦争後の平和な時代の軍隊は、住みにくい環境となっていました。

 

 

平和時の軍隊

 

自分が実戦で生き残った戦闘技術と戦闘スピリッツを部下に教えようとすると「そんな訓練をする必要はない」と咎められます。

ベトナム戦争の英雄で、戦友の最先任上級曹長になった下士官は、主人公と酒を交わしながら、「今の状況では、また、ベトナムのように負けの数が増える」と嘆きますが、「今は仕方がない」と時代の流れに乗ろうとします。

3つの戦争を共に戦い抜いた戦友から、「お前のやっていることは正しい。しかし、もう少し利口になれ」、「もういいのではないか」と言われますが、主人公の実戦で戦い抜く部隊・隊員を作る意思は変わりません。

幹部は、昇任するための勉強や上官に評価されるためのレポート作成に時間を費やし、小隊長でも、現場に出ることは稀で、現場で曹長の報告を受けたら、いそいそとレポート書きに行ってしまう光景が描かれています。

そこには、小隊長に対する信頼はまったくありません。

中隊長や大隊長は、部隊を動かす時、必ず正規の手続きをした多くの書類が揃わないと、許可を出さないシステムを、かたくなにそれを守ろうとしています。

更に、映画では、実戦的な行動よりも、規則に基づく手続きをキチンと進めることを重視する腰の重い部隊になっている状況が表現されています。

 

 

実戦で生き残る強い部隊の育成

 

そのような環境をもろともせずに、主人公は、隊員を鍛えていきます。

実戦で戦えるように作り上げていく過程で、ロシア製の突撃銃AK47に実弾を込め、、部下が移動している至近距離に実弾を撃ち込みます。

部下たちは、「気が狂っているのではないか、何されるかわからない」とパニックになります。
部下が慌てふためいている中、「この発射音を覚えておけ、この音は敵の射撃だ」と教えます。

主人公の実戦に強い部隊を作っていく行動は、当初部下と衝突しますが、主人公にしごかれているうちに、次第に「本物の強さ」が身に付いていきます。

すると、部下の意識が変化し、行動が変わっていきます。

チームとしての協力と信頼も高まり、主人公の目指す実戦に強い部隊・兵士が出来上がっていきます。

周囲の妨害をもろともせずに訓練を進めている時に、グレナダ侵攻が起こります。

 

 

書類ばかりの部隊が指揮官の判断で実戦部隊へ

 

小隊長の腰には、書類を作成するフォーマット集がぶる下げられており、全てフォーマットに基づく報告、申請をしないと、部隊の運用、物資や装備の準備が進まない状況がわかります。

戦闘準備を進める大隊長は、手続きの済んでいない事項は許可を出しません。実戦を生き抜いてきた主人公の装備への進言は、手続きをしていないのでダメだと却下されてしまいます。

グレナダへの派遣準備の視察にきていた指揮官は、このやりとりを見て歴戦の戦士の申請を速やかに許可し、派遣部隊長の変更を言い渡します。

この時点で、現場の動きやすい環境が整います。

このやりとりから、指揮官の重要性、部隊の行動を正しく評価できる目が必要であることがわかります。

後に、この小隊長が束として腰に吊していたフォーマット集が、コンピューター化され、戦闘システムになったと思われます。

 

 

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ハートブレイク・リッジは、映画としても、とても楽しめる内容です。新兵と主人公との会話は、笑えます。

グレナダ侵攻後、その新兵は、伍長になり部隊をまとめるエンジンになっています。

激烈な戦闘経験、苦境に陥った時の勇気、その場を切り抜ける発想の必要性を主人公から叩き込まれ、強くたくましい兵士に成長した姿に凛としたものを感じます。

ミリタリーの人達は、是非ご覧下さい。

 

 

 

 

 

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オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
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2 Comments

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