誰が強いのか、何をすれば強くなれるのか(その3)

誰が強いのか、何をすれば強くなれるのか(その3)

 

 

価値観の高い人物探し

 

歴代無敗を誇るレベルを持つFTCよりも強くなるには、価値観の高い人物が必要であると考えました。高い価値観を持つタイプは、高い吸収力と定着度を持っており、これから全国のレベルの高い部隊から学び、普及するのに必要な人物です。かつ、訓練に一つも手を抜かず本気で臨む者を探して、インストラクターにしようと考えました。

ishidaが「インストラクターは、階級がある程度必要ですか」と聞くので、「腕が良ければ、陸士でもインストラクターとして部隊を訓練しても構わないよ」と答えると、「隊員が喜びます」と言い企画部門へ指示を出しに行きました。

 

 

40連隊に戦闘技術の負けはないが始動

 

連隊全員に、訓練をする時、そこにいるメンバーで階級関係なく戦闘技術の一番高い者が教育訓練を行うこと、戦闘技術を射撃では基本射撃、戦闘射撃、至近距離射撃、機関銃、小銃と区分してそれぞれのインストラクターを作ること、爆破技術、偵察、火力要求、ロープ技術等に区分をしてインストラクターを養成することが伝えました。

ここから、「40連隊に戦闘技術の負けはない」が始動します。

常に「誰が強いのか、どうすれば強くなれるのか」を皆で探し求めました。戦闘技術の向上とともに、実戦は、地味で、動きが小さく、反復した行動をどんな状況でも行う我慢強さを持つ戦闘員がやられないで任務を達成するタイプと考え、我慢強さと用心深さと精神的な強さを身につけることを重視しました。

 

 

虎の穴の始動

 

戦闘は、何も動きのない時間が延々に続いている状態で、突然発生し10~30秒で終わります。そしてまた静かな時間が続き戦闘が始まると一瞬で片が付いてしまうものであるため、気を抜かないで、ずーと集中が続けられる隊員を作る必要がありました。

そして、戦闘を支える体力が必要です。

重量物を背負い長距離移動できる基礎体力、戦闘に必要な体幹を作りなど、戦闘に必要なメニューへ変更してバランス良く、そして腹筋と背筋をしっかり作るようにします。

トレーニングの時間は1時間とし、終わった後四つん這いになる程全力で力を惜しまないようにするトレーニングをインストラクターが年齢と能力別に区分し科学的に行ないます。

電話番以外全員が実施する週間予定表で命ぜられる体育です。この運動を週3回行っているうちに、いつの間にか「虎の穴」と皆が言うようになりました。

新隊員との懇談で、何かきつかったり、苦しいことがあるか聞いてみると、言いたいことがあるのに、なかなか言い出せず新隊員同士が顔を見合わせているので、どうぞと言うと、「虎の穴は強くなるために必要なのは皆理解できるのですが、体力ができていない私達にとって、虎の穴のインストラクターが行う体育が厳しくて、苦しくて泣きたくなります」と話してくれました。弱音を吐かない新隊員でも泣きが入っているのが確認できました。

強くなりたい欲求があるのと本気で取り組んでくれているのに感謝をしつつ、「この体育をしている者としていない者とではどちらが強いのか」と問うと、「虎の穴です。でも身体が疲れてしまい外出もできません」と情けないことを言っていることを恥じながら話しているので本当に辛いんだなとわかります。

「若い時は杉がグングン真っ直ぐ伸びるように成長する時期なので、1か月も我慢していれば、慣れてくるから大丈夫だよ。これから身体がみるみる強くなるのが自分でわかるから、それを楽しみにやったらいいよ」と話すと、少し和らげてくれるかと思っていた答えと異なっていたようで、新隊員の目が点になっていました。

このように隊員の疑問に答えながら(?)話を聞き会話をしながら進めるように心掛けました。

3か月が過ぎると新隊員の身体が見ただけで変化しているのがわかるようになると、あの時の泣きは何処に行ってしまったのか、若く回復も早く、時間がある時は自分で身体を鍛えるようになっていました。

体力ができてくると、自らがやるという気迫のある虎の穴に進化していきました。

肥満の人間は今まで恥ずかしいので運動の時隠れていましたが、科学的なトレーニングをレベル毎やるようにしているので、皆の目に触れるように運動するようになりました。

歩くことから始めた人間が、走れるようになってくると皆が応援したり、努力を称えます。チームとしての一体感も生まれ、本人も体形が変化することを実感し始め皆で頑張る空気が広がっていきました。

半年が過ぎると、身体が強くなると我慢強くなり、精神面も強くなっていくことも実感できるようになりました。基礎体力と精神面の強さができてきました。

 

 

 

 

 

自衛隊最強の部隊へ-偵察・潜入・サバイバル編: 敵に察知されない、実戦に限りなく特化した見えない戦士の育成
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【kindle本が出ました】

 

二見龍レポート#2 コンバットメディックの照井資規、弾道と弾丸を語る
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二見龍レポート#1 ネイティブ・アメリカンの狩りの技術を伝える川口拓氏との対談
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40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術

 

 

本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

 

 

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準

 

 

『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

 

オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界
オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界

 

 

オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
オオクワガタを通じ、色々な経験や学びがあり、人生が豊かになった感じがします。そんなオオクワガタ採集記をお楽しみ下さい。

 

 

 

オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~
オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~

 

 

マット飼育は、菌糸ビンのように簡単に大型を作出するのは難しい飼育法ですが、綺麗な個体を得ることができ、安価で多量にオオクワガタを飼育できることが魅力です。
本書により、マット飼育のコツを積み上げ、皆さんの目指すオオクワガタを作出して頂ければ幸いです。

 

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2 Comments

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