40連隊は何処へ進もうとしているのか-小倉駐屯地記念行事で確認した厳しい現状-

40連隊は何処へ進もうとしているのか-小倉駐屯地記念行事で確認した厳しい現状-

 

 

強力な自衛隊協力会による支援

 

この時期には珍しい、強い陽射しの中、今年も小倉駐屯地記念行事へ参加しました。3000名を超える小倉駐屯地自衛隊協力会のパワーは衰えることなく強烈な存在感がありました。モノレールを降り、駐屯地に入ると柔らかな空気を感じましたが、強さと燃えるような炎は感じられません。とても気になりました。そして、なにか、命じられたことをなんとかやっているだけの空気が流れています。

小倉を応援している部外メンバーの二次会で、少し驚きの話が出ました。
「40連隊は強かったといわれているが、近頃の状態をみて、本当に強かったのか疑問があるという声が出ている」と言いにくそうに支援者は伝えてくれました。
そんな時代は存在しなかったと感じている人が出てきていると言うのです。

 

 

変化する陸上自衛隊

 

イラクのPKOが開始は、陸上自衛隊にとって大きな転換期となりました。

そして、今、陸上自衛隊は、陸上早退の新設、西方重視の部隊配置、新しい部隊の新編、上陸作戦用の新規装備の導入と完熟訓練など、大きな転換期を迎えています。

部隊を新編するため、隊員の異動を全国規模で行い、各部隊は充足率が低下し、非常に多忙な状態になっています。

上級部隊からの訓練指示や統制が多くなり、その対応で精いっぱいの状態となります。
この状態が続くと徐々に部隊が疲弊していきます。

練成訓練の時間が十分に取れない状態なので、任務を達成するために最低限行わなければならない訓練を重点におきます。
日本を守る方法、それは、防御、陣地防御と考え、穴掘り訓練が行われます。

穴掘りばかり訓練をしていると、隊員のモチベーションが低下していきます。
モチベーションが低下すると、次第に隊員は、ただ我慢して日々を過ごす状態になり、チャレンジ、強くなる、成長するという意志が消えていきます。

部隊が成長しようとする歯車が止まってしまいます。

部下に任せるのではなく、進むべき方向を示し、ブレずに行動することが必要となります。

このような厳しい時期こそ、部隊長のリーダーシップの発揮が極めて重要になります。

 

 

模擬戦のレベルと訓練量

 

駐屯地に入った時に感じた空気から、模擬戦の完成度はあまり期待していませんでした。12.7㎜重機関銃の空砲やドラム缶の上を走るバイクなど見せる、インスタント的な工夫は場を盛り上げていました。

模擬戦をみていて、普段実戦に通用する戦闘技術を磨く意志を持って訓練をしていないことが、すぐにわかりました。

模擬戦を行っている部隊の練習量はどうかというと、今迄の所産を繋ぎ合わせた形だけの模擬戦で、戦闘訓練自体の不足と、模擬戦の練習をほとんどしていないのがわかります。

模擬戦をなんとかやればいいという感じです。

模擬戦、考え方を変えれば非常に有効な訓練の場になります。
訓練時間に制約を受けているならば、模擬戦を高強度の戦闘訓練をするまたとない機会となり、時間を効率的に使用できます。
模擬戦の完成度を高めながら、高強度訓練の練成ができ、一石二鳥となるからです。

価値観が低くなると、言われたことをこなせばいいという空気が広がります。

その空気は、隊員全体にすぐ感染し、成長しよう、チャレンジしようとする動きを止めます。
そして、前に進む推進力を失わせてしまいます。

一度止まった車輪は、錆びやすく、次動き始めるには多くの労力が必要となります。

 

 

普通の格闘レベルと隊員

 

隊員は、頑張っているのですが、40連隊が向かおうとしている方向が見えないため、今余計なことをしたら損だという空気が流れています。

格闘を行ったメンバーも練習が不足しているのと、実戦用の格闘術とは違う、展示用の格闘へ進んでいました。

どこの部隊でも、普通科連隊でなくてもできる内容でした。

少ないメンバーで何とかつなげている状態で、連隊としてどのように進めるか、示していないことがわかります。

 

 

打ち貫き強くなる環境として捉える

 

練成時間が少ない、充足率が低下して忙しい、勤務地の異動をしなければならないなど、大きな変革期には、多くのハードルを隊員一人一人から部隊、そして、陸自全体で乗り越えていかなければなりません。

これから厳しい時期が3年~5年程度続きます。
流れに流されるだけで、やり過ごすことが本当にいいのでしょうか。

40連隊だけでなく、どの部隊もきつい状態が続きます。

普通の部隊として何とかしのいでいる40連隊は今後どのように進めばいいのでしょうか。

答えは、明確です。

どの部隊も苦しいため、現状維持が精いっぱいになると考えます。
その厳しい環境の中で、40連隊が一歩踏み出し始め、止まっていた歯車を回すことができれば、普通の状態よりも他を抜きん出て前に進むことができます。

今が、「最高のチャンス」なのです。

部隊長が強い意志を持ち、自らの口で進むべき方向を示し、部下を引っ張っていかなければならない時期です。
多忙感が充実感になるようになった瞬間、部隊がよみがえります。

この時、連隊長の明確で強い意志と、連隊長の意思を具体化する中隊長の行動力と団結が必要となります。

是非とも、この絶好の時期に、新しい時代の40連隊を育成して下さい。

応援しています。頑張って下さい!

 

 

 

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40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
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本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

 

 

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準

 

 

『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

 

オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界
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オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
オオクワガタを通じ、色々な経験や学びがあり、人生が豊かになった感じがします。そんなオオクワガタ採集記をお楽しみ下さい。

 

 

 

オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~
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マット飼育は、菌糸ビンのように簡単に大型を作出するのは難しい飼育法ですが、綺麗な個体を得ることができ、安価で多量にオオクワガタを飼育できることが魅力です。
本書により、マット飼育のコツを積み上げ、皆さんの目指すオオクワガタを作出して頂ければ幸いです。

 

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1 Comments

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