錆びついた車輪を動かすには、相当な力を加えないと動きません。しかし、一度動き出し、錆びを取り給油すると嘘のように軽い力で回転を始めます。動き始めたら、力を加えなくても進むようになります。
どのようにすれば意識が変わり始めている良い動きを、実態を動かすまで広げることができるか、その方法を探したり、考えていた時に出会ったのが、オウム真理教の洗脳を解いた苫米地英人博士が提唱する「フィードフォワード」です。
フィードフォワードに関する書籍は、久野和禎(ひさのかずよし)著「いつも結果を出す部下に育てるフィードフォワード」が書籍として2018年7月に出版されました。
フィードフォワードは、『過去や現状に囚われてしまいがちな人に対して、コミュニケーションや観察を通して相手の状況を把握し、相手に起きている出来事やそれにともって体験している感情を受け止めたうえで、その人が自分の未来に意識を向けて行動ができるように促す』技術です。
フィードバックは、「時間は過去から現在に向かって流れている(過去に目を向ける)」時間感覚を土台に作り上げているのに対して、フィードフォワードは「時間は未来から現在に向かって流れている」という時間感覚を土台にします。
フィードバックの最大の弱点は、過去からスタートすることです。そうするとエネルギーの大半が過去の分析や検証に費やされ、未来のことを考える前にエネルギー切れを起こします。脳の動きもポジティブ、クリエイティブ思考の源となる前頭前野の活動が抑制されてしまいます。
20世紀の画期的な発明で世の中の発展に大きな貢献をしてきたPDCAがあります。PDCAサイクルを回すのは割合手間がかかります。
PDCAサイクルが上手く回らないのはコンセプトの中に「未来に進みたい意図」と「過去に留まらせる要因(過去と現状を分析する現状の延長線である「プラン」と過去を振り返り反省する「チェック」の部分)」が同居しており、反省を前提に作られているので、やるべきことを抽出し義務感を持ってやろうとした段階でフィードバックと同じように疲れてしまい、過去に縛り付けてしまう傾向があると著者は指摘します。
フィードフォワードの具体的な方法は、毎月1対1の面談をして聞き続けることです。未来に目を向ける過程で自然と自分の課題を発見して改善していくことができ、部下は無理なく自然に成長していきます。
(話しかけ方の一例)
〇 今後どんな仕事をしていきたいですか
〇 どうしたらそれができると思いますか
〇 どうしたらスキルアップできると思いますか
〇 少し難しい業務の経験をしたいのですね。そういう経験をする準備はできていますか
〇 そのために必要なことで私に手伝えることはありますか
何を話しても受け入れることが大事です。毎月行っていくと、上司と部下の日常のコミュニケーションが常に未来のことを話し合うようになり、一度そうなると、どうやって乗り越えていけばいいかしか興味がなくなり、自然と解決策だけが見つかるようになります。
フィードフォワードに慣れてくると、この現象は、部下同士、同僚同士、部署全体がフィードフォワード的なコミュニケーションが基本となり、未来に目を向けたチームになっていきます。
反省材料をたくさん上げ、その時点で疲れてしまうのではなく、改善のためのアイデアが出るようになります。
認知科学者の苫米地英人博士は、脳の構造からFFAは有効と言います。
FFAは、「ゴール」を設定すると、「脳が活性化」し、ゴール実現のために必要な方法を気付かせてくれます。(ひらめき)
アクションにより「無意識の振り返り」が起こり、今までのやり方と比較して改善すべき点に気が付くようになります。
気が付いた改善点を取り込んだアクションを進めると同時に随時、「ゴールの見直し」を行いながら、活動しながら新たに気が付いた改善点をアクションに取り込み、アクションの質を高めていくが基本となります。
未来に焦点を当ててゴールについて考えていると、常にゴールを達成するために必要な情報が入ってくるようになり、脳の活動が活発化し、高いモチベーションと想像力を発揮できるようになります。
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そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。
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人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。