浅草ブラックホールは、年に3回開催され、冬と夏の祭典に参加させて頂いています。今回、「自衛隊最強の部隊へ」書籍が発刊された時期なので、長谷川トモさんとのトークショーもスカウト中心の話題で実戦に特化したスカウト技術について披露することができました。ブラックホールの楽しみは、多くの人との出会いと、毎年参加する人との再会があります。
毎回、長谷川トモさんから多くの熱い心を持った人物を紹介して頂きます。志が高くバイタリティーあふれる熱血漢と会うだけで嬉しくなり、心が弾みます。
しかし、彼らは、悩み苦しんでいるのです。
実戦的な訓練をしようとしても、上司が関心を示さなかったり、ただ聞き置くだけで何も進まないからです。
多分、日本各地の熱血漢が、同じような悩みやもどかしさを感じているのではないかと思います。
「CQBやガンハンドリングを始めとする実戦的な訓練を行おうとしても進みません。上司にも話したり、幹部の理解を求めていますが、ただ聞くだけで何も始まらないのです」と、熱血漢は語ります。言葉は少ないのですが、行間に彼らのもどかしさが山のように詰まっているのがわかります。
上司や部隊長が、最前線の隊員がどのような状態で行動することになるかのイメージが掴めていないこと、また、掴もうとしないこと、上司から言われていないことに力を注ぐよりも、示されたことをやって無難に任期を過ごそうとしていること、評価されたり、褒められるようなことに努力を指向しているため、実戦的訓練を進める動機はなかなか起こりません。
また、部隊の改編と新規装備品の導入が連続しているため、部隊の充足が低下し、今まで以上に改編対応のための業務量が増加していて苦しい隊務運営になっています。限られた時間を有効に活用して、最低限保有すべき練度を維持している状態だと思います。
この状態で、実戦的な訓練に切り換えましょうといわれても、「そうだね(訓練を見直したり、新たなものにチャレンジするような余裕が実際のところないんだよ)」となります。
「このような現実的ではない訓練ではなく、実戦に近い訓練をやるべきです」と熱血漢であればあるほど語気も荒く訴えてしまうのではないでしょうか。私は、このような隊員が大好きです。部隊の宝だと思います。
一方で、階級の低い隊員から上司が考えながら進めている訓練は必要性に乏しく、方向性が間違っているのでこの方向に修正すべきだ的なことを言われたら、どう思うでしょう。
カチンときます。言っていることが正しいことでも、意地でもやらせないと考えるかもしれません。プライドが悪い方向に働き、全ての行動をやらせないように潰しにかかるかもしれません。
では、こんなアプローチは、どうでしょうか。
実戦的な訓練を行うことによって、上司が目指そうとしている目標や進めたいこと、上級部隊へプラスの報告ができるようになると、説明したらどうでしょうか。
必ず関心を示すはずです。
また、上司が歩み寄ってくれたら、こちらも歩み寄り、完全な形を追求するのではなく、まずはできる環境を作り上げます。
実態が動き始めれば、逐次色々進めることができるでしょう。
そして、上司に感謝を示しながら、可能な限り報告を行います。このようにすると、少しずつ上司へインプットができ、訓練への理解が進んでいきます。イメージもできてくるでしょう。(人間いっぺんにイメージや理解のできないことを沢山言われても、受け入れないものです)
この間に、仲間を増やしていきます。歩みが遅いようでも、一つ一つ丁寧に続けていけば、いつかオセロがバサッとひっくり返るように変わります。そして、上司も隊員も喜んでもらう形になるでしょう。
やる気のある幹部や強さを追求する幹部、より階級の高い幹部が味方に付くと、やりやすい環境になります。
これが、新たなことをやろうとする時や改革・改善を行う時の方法とポイントです。最初は上手くいかないかもしれませんが、何回もチャレンジをしながら、やり方やコツを掴んでいって下さい。
乗り越えると、人間的にも大きく成長します。
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本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。
そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。
40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。
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