社員の人で「私は毎日遅くまで残業し、自分がやるべきことはしっかりやっています。でも、そのように努力をしても、評価はされないし、上が求める成果を出さない限りなにも認めてくれないのに、会社のために頑張ろうとしても意味を感じることができない」
「このまま頑張っても報われないし、何か下手に挑戦して失敗したり、周りから批判されたりして、得することよりも損することの方が多いから今以上のことをやろうとする気持ちになれない」と考える人がいます。
自分の生活や家族を支えることは途中でやめるわけにはいかないので、会社のことよりも自分の生活を大切にすることが適切であると判断します。貰っている給料分の働きはしているので問題はないと考えています。
仕事は生活のための手段だけでなく、やりがい、働きがいと結びつけるべきだというのは、理想論であり、現実は仕事が自分のやりたいことに結びつくことはないと説明します。
そして、「会社よりも自分のことを大事にして何か問題でもあるのか、言われたことはちゃんとやっているし、自分がやるべきことをしっかりやっていれば、それでいいじゃないか」と言います。
では、会社側の視点で現在の状況を捉えてみるとどうでしょうか。
会社は経営環境が激しく変わる中、競争力の強化や労働力の不足、業務の効率化などたくさんの問題点と課題を抱えています。
会社としては山積みの問題や課題を早く解決したいのですが、なかなか進まないのが現実です。
会社が抱えている事業構造を大幅に変更したり、情報システムの導入と業務の見直し・標準化、成長のために戦略を転換したり、人材不足を乗り切るために抜本的な業務改革など、担当者だけでは解決できない、社員全員が関わりながら取り組まなくてはいけない問題や課題が進まないということになります。
一社員として得になことはやるが、損することはやらないという働き方をする場合、会社が抱える大きな問題の解決は進まず、さらに問題が積み上がり会社はますます厳しい状況へ追い込まれてしまいます。
問題が積み重なっていくと、業務は一段と非効率な状態に陥り、会社全体の体力を奪っていくと同時に、社員の肉体的、精神的な負担の増加につながります。
職場内の人間関係、上司との関係、他部門との関係でひずみを生じ始めます。
その結果、仕事を押し付けあったり、責任をなすりつけ合ったり、情報を共有しなかったり、コミュニケーションが減少します。
このような状況に危機感を感じた経営陣は、現場への信頼も低下し、経営計画の進捗状況について逐一報告を求めたり、資料を作らせたりすることで現場の管理を厳しくしていきます。
しかし、個人の働き方や権利を主張する人たちにとっては、管理強化は害にしかなりません。
自分にとって何も得にならないし、評価も変わりかねないので、言われたことにはいやいや従うものの主体的積極的には行動しようとしないため、抵抗勢力的な状態にもなり、全く改善できない状態になってしまいます。
このような状況が継続することによって、会社は疲弊していき、業績も悪化していきます。
では、自分を守るということは本当に自分の生活の自由を守っているのでしょうか。もしかしたら、自分の弱さを守っているのかもしれないのです。
このような話があります。会社の役員が会社を辞めていく社員のことを次のように言っていたのです。
「会社を辞めるのは自由だが、やめる理由を探っていくと会社や経営に問題があったり、将来が見えないということなんです。結局、不満や課題を自分で解決しようという行動や度量がなく、何も行動を起こせないひ弱な社員ではないでしょうか。それで逃げるように会社を辞めていくではないか」ということです。
結局、現場で働く人が自らの壁を壊して行動を起こそうとしない限り、いくら上の人が努力をしても社員のやる気は出てこないということです。
さらに、現場では、ただ単に不平不満を言うだけの社員が増えていて、ほとんどの管理職が思い通りに動いてくれない部下に対して手を焼いているのが現実です。
強い自分を追求することによって、仕事にやりがいや働きがいを持つことができます。そして、活躍して認められるチャンスを得ることができます。
将来をあきらめて挑戦もせず自分の利益ばかりを考えるような社員がいても、このような人材に会社はチャンスは与えません。その反対の行動をする人にチャンスを与えるでしょう。
チャンスを得る社員になるには、全体を見ることができる力が必要となります。
「自分はやるべきことをやっているが上司や周りが認めてくれない」、「会社の方針に従って頑張っているが会社はよくなっているとは思えない」ということが、本当に正しいのかどうかが見えてくるからです。
つまり、本当に自分がやるべきことをやっていたのか、本当に会社の方針通りに頑張っていたのか、ということです。
自分が正しいと思って判断していたことが、会社や上司、周りの人から見ればその判断は違うということが発生している可能性があるのです。どちらが正しいか判断するには、全体を見て判断するしかありません。
異なる視点や意見を持つ人の話を聞くことによって、全体を掴むことができます。様々な視点からの情報を集め、見えてきた全体像から、自分が判断していたものを振り返ってみてどうなのかを判断することができます。
自分は正しいことをやっていると思っている一方で、実はそのことが会社にとっては期待通りの働きになっていない、貢献すらしておらずかえってマイナスになっていて、会社としてよい評価を与えることができない状況になります。
働き方が会社全体にとって非最適な状態、「自分最適」、「部分最適」に陥ってしまっているということです。
社員が今の働き方を全体最適にするには、自分とは違う立場、違う視点を持った人と話す機会をたくさん持ち、会社全体がいったい今どのような状況か見ることです。
見えてきた全体像から自分の働き方を見直し、会社全体の最適化に合わせることが必要となります。
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