情報の公開は、情報が公開され、多くの人が必要な情報を得るメリットがあります。経営上、個人、組織など、どこまで情報を公開するか悩ましいところです。
改革を行っている時、部、課、室の組織の状態は、人が入れ替わり、慣れない業務を覚えなければならない状態や環境の変化へ対応しなければなりません。
最初は、組織全体で頑張っていたのですが、徐々に上手くいっている部署と、問題が発生しその対応が上手くいかない部署に分かれていきます。
ルーチンワークを行っているような財務・経理業務(システムが大幅入れ換えをしない場合)系は、社員が業務に馴染むのが比較的早く、しばらくすると巡航速度で業務を行うことができるようになります。
しかし、新たな組織や新たな業務を行う部署や大きな問題点を抱えている部署は、そう簡単に巡航速度で業務が行う状態にはなりません。
「あの部は何をやっているんだ」、「改革を行っているのに重要な部署が問題だらけで何も進んでいないではないか」、「部長は何を考えているんだ」などです。
その部署は、上司や同僚、社員から上手くいっていないと思われたり、そのように言われたくない、という意識が芽生えてきます。
「頑張るぞ」とプラスに捉えればいいのですが、保身の誘惑が始まります。
この誘惑に負けてしまうと、明日が見えない重い雰囲気とともに、疑心暗鬼の世界が広がっていきます。
上手くいっていない状態を周りに隠し始めると、その部と課は、上手くいっている状態を演じて外部からわからない効果がありますが、隠すことに力を注ぐ分、余計に問題解決の方向へは進まず、事態は悪化していきます。
部下は、周りにわからないようにすることによって、当座はしのげますが、ただ悪化していく状態に心は重く、明日の見えない日々が続きます。
そこに登場するのが、改革改善に否定的なメンバーや前の業務の方が慣れていて今より良かったなと感じている人達です。
そして、登場するメンバーは、故意に、又は故意ではないのですが、改革に対するマイナスの動きを始めまるのです。
「あの部は、本当はみんな仲が悪く、業務も進まない状態になっている」、「ブレーキをかけているのは誰と誰」と周りに話し始めるからです。
さらに、「Bさんはある人から上手くいかない原因を作っていると言われていますよ」と同じような話をBをC・D・E……置き換えて噂を広めていきます。誰が言っているのかは明らかにせず、みんなが言っているのを聞きましたというように話をしながら、改革や改善に必ずしも賛成ではない人たちをも取り込もうともし始めます。
噂話が広まっていくと、今まで前向きにやっていた人も、「誰がそんなことを言っているのか」、「今まで信頼してきたのに」、「どうしてそんなことを言うのだろう」とお互い同士が疑い始めます。
そして、他の組織や人間の動きを用心深く見るようになります。組織のいたるところで監視し合う状況は、まさに疑心暗鬼の状態といえます。
一方で、『噂を広める人』は、情報提供者として「いつも情報ありがとう」、「助かるよ」というように、監視し合う状況での心強い味方としての扱いを受けます。
この噂を広めている人こそが、環境を壊す張本人なのですが、大事に扱われると、立ち位置がさらに変化していきます。
前の業務のやり方のほうが今より良かったと思っている人達は、『噂を広める人』が大事に扱われる姿を見て、自分たちの気持ちの代弁者として噂を広める人を応援し始めます。
業務が上手くいっているときは、このような噂話をしても全く気にすることはありません。
しかし、業務が上手くいっていない状態では、上手くいっていない状況があれば、各部署は変な噂が出て広まらないように、表に出ない隠ぺいに力を注ぎ始めます。
隠す動きが強くなると、他の部署との情報交換を行う機会が減少します。さらに、情報が部署部署でクローズしていき、他と連携する行動がなくなっていきます。
これでは、改革・改善を進めようとしても、うまくいくはずはありません。
疑心暗鬼の状況の中、改革の先行きが不透明で出口が見えない状況が続いた場合、改革はどうなってしまうのでしょうか。改革は元に状態へ戻す引力につかまってしまい後退してしまいます。
このような状態になった時、情報の共有と公開が重要となります。
部長同士が、上手くいっていない状況を知られないように、組織の状況を隠しているので実際の状況がお互いわからず、疑心暗鬼になったり、化かし合いをしているのが現状です。
できていないのにできているように見せることによって、逆に『噂を広める人』に弱みを握られ、さらに守ること・上手く見せることに注力しなくてはならなくなります。
防御を行いながら磨り潰されていくのを待つ状態に陥っているのです。
では、どうすればいいかというと、各部の台所事情を公開することです。
お互いの状況を公開してしまえば、守る必要はなくなり、状況がわかっているので疑心暗鬼の状態にないからです。
情報の共有ができれば、今まで靄の中で見えていなかったものが、正しく見えるようになり信頼醸成が進みます。
次は、連携・協力する方向へ一歩進むことができるのです。
まず、始めに立ち位置の安全性を確保しなければならない人物は、組織の長となる部長の安全性です。
部長の立ち位置の安全性が進めば、部単位の化かし合いもなくなり、重要な立ち位置にいて影響力の強いメンバーの団結ができ上がります。
部長同士の認識が一致し、一枚岩になれば、組織としての機能が回復します。部長の立ち位置の安全性が確保できるのと連動して直近の部下である課長の立ち位置の安全性が確保できます。
ここまでくると部下の立ち位置の安全性の確保ができる状態が広がっていきます。
部長同士、課長同士、担当同士の信頼性が向上することによって、組織全体で業務のしやすい環境が出来上がります。
この業務のしやすい環境を広げていくことによって、猜疑心の原因を作っていた『噂を広める人』が浮かび上がるとともに、暗躍する隙間がなくなります。
多数の方や優勢な方向へついていく傾向の強い『噂を広める人』に賛同していたメンバーも改革・改善を進める方向へ移っていきます。
業務のしやすい環境作りを進めていくことによって、改革・改善を後戻りさせようとする動きは消えていきます。
【次のブログも参考にお楽しみ下さい】
二見龍レポート#6 実戦と戦場-元米陸軍大尉飯柴智亮との対談- Part.2
二見龍レポート#6 実戦と戦場-元米陸軍大尉飯柴智亮との対談- Part.1