ゼロ戦と米軍(グラマン)&そこから得た教訓事項

ゼロ戦と米軍(グラマン)&そこから得た教訓事項

 

 

ゼロ戦と米軍と教訓事項

 

 第二次大戦の初期、ゼロ戦とグラマン(F4F:ワイルドキャット)との個人の腕で戦う『空中戦』では、当初、空戦能力の高いゼロ戦と高い操縦技術により、ゼロ戦は圧倒的な強さを示しました。
 しかし、ここから、米軍は、改良・改善を行いました。機体性能の向上です。新型グラマン(F6F:ヘルキャット)の開発です。
 ゼロ戦とは違う分野の性能向上を行ったのです。
〇 ゼロ戦が追い付けない速度の出る機体
〇 推進力を増加し、ゼロ戦が追随できない高度へ急上昇可能な機体
〇 機関銃の破壊力の向上(装甲が薄いゼロ戦の機体を破壊する)
〇 操縦手を防護する防護版の強化(ゼロ戦の7ミリ機関銃からの防護ができ、操縦手の命を守る) など

 ゼロ戦の弱い部分を研究し、強みを強化したのです。

 

 

ゼロ戦と戦う戦法の開発

 

 これと同時に、ゼロ戦と四つ相撲をする戦い方を止めました。戦法を変えたのです。そして、人材育成にも連動させました。
 戦法は、ゼロ戦との空中戦は行わず、ゼロ戦が飛行している高度よりもはるかに高いところに位置し、急降下を行いゼロ戦を重装備の機関銃で攻撃をして、そのまま急上昇して離脱する「ヒット&ウェイ」戦法に切り替えました。

 そして、この戦法をマニュアル化することによって、部隊全体で「ヒット&アウェー」を可能にし、実戦で繰り返したのです。

 ゼロ戦は、ヘルキャットよりも、推力が不足しているため、米軍機に常に高い位置取りをされ、得意の空中戦を封じられました。

 

 

戦法開発と連動した人材育成

 

 「ヒット&アウェー」を行う米軍機を速度で劣るため追うことができません。追おうとしても高度を上げる米軍機に追いつくことはできませんでした。

 この「ヒット&アウェー」戦法は、空中戦を行うほどの操縦技術を必要としないため、マニュアル化によって大量の操縦手を育成することが可能になりました。
 操縦手を防護するための防弾板が操縦席の周りに設置され、機関銃弾が命中しても発火しない対策が機体に施されなかなか発火しないので、操縦手の損耗を防ぎました。

 戦闘を経験した操縦手は、米国へ呼び戻され、操縦手の養成のための教官となって大量の操縦手を育成して前線へ投入するシステムを作り上げました。

 ゼロ戦は、旋回性能を高めるため、操縦手を防護する防弾版もなく、すぐに発火する機体のまま、「ヒット&アウェー」戦法を破ることもできず、ベテランパイロットを消耗していきました。操縦手の効果的な育成システムもなく、技能の低いパイロットしか育成できない状態に陥りました。

《教訓事項》
★ 空中戦の得意な戦い方のままではないでしょうか
★ 企業では、商品力の高い新商材を見つけずに、同じ商材で戦い続けていないでしょうか
★ マニュアルがあるのでしょうか(暗黙知に頼っていないか)
★ ライバルの研究と自分たちの強みを真に見出しているのでしょうか
★ 人材育成を継続して行っているのでしょうか
★ 組織全体で連携し、人材育成を絡めた態勢になっているでしょうか

 

 

米軍の兵器改良

 

 ベトナム戦争、中東戦争で活躍したM60戦車(パットン)もM60A3タイプがあり、A1~A3型へ進化させています。更にM60B型もありました。米軍は、装備を戦闘の度に改良しているのです。

 この傾向は、湾岸戦争・イラク戦争でも行われました。例えば、対戦車ヘリコプター(AH-1:コブラ)は、戦いを経験して本国へ帰ってきた操縦手とガナー(武器操作手)が、メーカーと戦法と装備の研究開発機関のヒアリングのため、すぐには帰れません。1か月は缶詰でヒアリングを受けます。

 そして、飛行前、飛行間、戦闘間のデータリンクをどことどこにつなげておく必要があるのか、射撃統制装置の改良・改善、火器の性能向上、防弾版の位置、ヘルメットの性能向上、案資器材の性能向上など、ヒアリングによって収集され、改良・改善が行われます。

 改良がおこなわれたAH-1は、形状は同じAH-1であっても、中身は全く異なる性能を有する機体へ生まれ変わり、戦場へ投入され、これが繰り返されます。

 歩兵の戦闘要領の改善も、敵の戦法を研究する部署があり、その研究に基づき何百種類のパターンの状況を作り出すことのできるシミュレーターや訓練施設があり、そこで兵士は徹底して訓練を受け前線へ投入されます。

《教訓事項2》
★ マニュアルは、人材の初歩レベルの能力向上、均一なレベルの確保と大量生産が可能です。そのマニュアルを継続し 
  て改良し続けることによって、中・上級レベルの人材を量・質とも育成できるのではないでしょうか
★ 俗人的な強さでは戦えない世界にすでになってしまった認識があるのでしょうか
★ トライ&エラーの繰り返しで進化させているのでしょうか
★ ライバルの分析と抑え込む策を継続的に研究し、自己の組織に反映しているでしょうか
★ 企業では技術と営業の密接な連携ができているでしょうか
 

 

 

 

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