社会集団(組織)の構成員が、ほぼ同等の責任や権限を有している社会集団を、『ピラミッド型社会』に対比して、『並列型社会』といいます。
『並列型社会』においても、組織の目的を達成するためにはリーダーが必要となります。
しかし、この社会では、通常、リーダーの権限は制限され、リーダーが負う責任もバランスをとって小さなものに設定されます。
このような『並列型社会』におけるリーダーシップを『並列型リーダーシップ』といいます。
陸上自衛隊の国際平和協力活動の中の『イラク人道復興支援活動』は、これまで国連の指揮下で行ってきた『国際平和協力業務』とは全く異なるものでした。
当時、イラクの復興支援には、多くの国の軍隊が参加していましたが、それらの国々を一元的に指揮・統制する国連のような組織は存在していなかったのです。
陸上自衛隊のイラク復興支援活動に関係していた組織を挙げると、自発的にイラクの復興支援に参加している各国の軍隊の代表、イラク暫定政府の代表、地方自治体の代表、関係する部族長、そして宗教指導者でした。
これらの復興支援にかかわる人々の会計は、並列であり、それぞれが発言権を持ち強烈な自己主張をするという集団でした。こうした中で、陸上自衛隊の指揮官は、日本国内からも、活動地域であるムサンナ―県やサマーワ地区からも強くアウトプットが求められました。
そこでは、まさしく、現場を持つ各級指揮官の『並列型リーダーシップ』の能力の良否が問われたわけです。
3.11東日本大震災における災害派遣では、師団長(6000名)~分隊長(7名)に至るまでの現場をもつ各旧指揮官は、効果的な救援活動実施に際して、国の行政機関、地方自治体の組織、町内会、警察、消防、防災関係の民間組織や地域で活動する民間業者との調整を行う場面に直面しました。
これらの調整相手との権限関係は不明確であるのが災害現場の状態であり、強権を発動して何事かを決定してしまうことは、問題を一層複雑にするだけだったという教訓があります。
現場指揮官が痛感したことは、自分の部下を統率するリーダーシップ『ピラミッド型リーダーシップ』は、当然のこととして、異なる組織から参集してくる人々との各種会合において、如何にリーダーシップを発揮することが重要となってきたのです。『並列型リーダーシップ』にも精通する必要性が出てきといえます。
こうしたことは、陸上自衛隊のみが経験していることではなく、日本全国の様々な組織においても、同様のことが生起していることがわかります。
その原因は、社会構造が大きく変化しており、いずれの組織においても、従来の枠を超えた活動が求められること、従来はあまりなかった異業種間の交流が常態化していることなどが考えられます。
ピラミッド型社会のリーダーにも、並列型社会のリーダーにも、『ピラミッド型リーダーシップ』と『並列型リーダーシップ』の双方が求められるようになってきたのが、今日のリーダーシップの難しさであると考えます。
『並列型リーダーシップ』に必要な事項を列挙すると、次のようになります。
〇 共通の目的、目標の確立
〇 関係者の役割(責任・権限)の明確化
〇 組織運営のルールの確立
〇 情報の提供、共有
〇 組織構成員の親組織をクリアする知恵
〇 公平・公正
組織としての力を十分に発揮できないレベルでは、まず、『ピラミッド型リーダーシップ』を行うことのできる人間を育成する必要があります。
次に、『ピラミッド型リーダーシップ』に加えて、さらに、「連携」を行うため、『並列型リーダーシップ』を確立していく段階へ進んでいきます。
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