熊野飛鳥むすびの里の初代特殊作戦群長 荒谷卓氏を訪ねて

熊野飛鳥むすびの里の初代特殊作戦群長 荒谷卓氏を訪ねて

 

 

熊野市駅からむすびの里へ向かう車中

 

 名古屋駅から特急ワイドビュー南紀号に乗車し、3時間の列車の旅は新しい発見の連続でした。まず、列車は当初ディーゼルで動き、途中から電気になり、またディーゼル、電気と切り替えながら運行されます。

 名古屋駅を出発する時は、屋根のエンジンから黒い煙を吐きながらの出発です。ディーゼルの乗り心地は、高速道路をバスに乗って走っている感じです。車の加速と同じ乗り心地を味わえます。

 平地部の多い愛知県を過ぎ三重県に入ると地形の特徴が大きく変わります。平地部から山地部の地形になります。美しい渓谷の景色へ一変します。列車は、広葉樹林主体の豊かな自然の中を通過していきます。

 山間部を縫いながら走っていると川幅が広くても水が透き通っていて、さらに自然が深く豊かになっていくのがわかります。
 「津」駅に到着すると、「つ」と一文字書いてあるだけの駅名を示す看板が目に飛び込んできます。一文字「つ」だけある看板はかなりのインパクトがあります。さっぱりし過ぎというよりも、いらないものを全て削った本質部分だけが残った迫力があります。初めての土地を経験する旅は、情報の質と量が多く、見るもの全てが新鮮なので毎回ウキウキしてしまいます。

 山間部を抜けると海沿いの経路を列車は走ります。海岸沿いを走り始めると、明るく太陽の光が強くなります。ミカン畑を見ていると、11月9日だというのにトンボが元気に飛んでいて温暖な地域であることが実感できます。
 温暖な土地の景色を楽しんでいると、家を出て7時間近くなったでしょうか。ふと思ったことは、むすびの里は、思った以上に深い自然の中にあるのではないかということです。

 

 

荒谷卓氏との出会い

 

 遂に目的地の「熊野市」駅に到着です。初代特殊作戦群長の荒谷卓氏が熊野の土地に開設した「むすびの里」へは、ここから車で30分だなと思いながら、改札口に向かうと、逆光で黒く輪郭しか見えないのですが、陽炎のようなオーラを発する身体を絞り込んだ男が此方を向いて立っていました。
 
 列車を降りてから、微弱なレーザーを受けているような感じがしていたので、荒谷氏は、私たちをかなり早い段階から探知していたことがわかりました。

 荒谷氏がわざわざ迎えに来てくれていたのです。何年ぶりの再会でしょうか。「来てしまいました」と言うと「お待ちしておりました」という言葉が返ってきました。この会話で15年近いブランクはなくなっていました。現役バリバリの荒谷氏の身体、さすがです。

 早速、車に乗りむすびの里へ出発しました。「自然が素晴らしく、ここは温暖ですね」と話すと「海辺は温かいのですが、むすびの里は標高300メートルほどあるのでかなり寒いですよ」と返ってきました。秋田出身なので寒さには強いのではと思っていると、「雪は降りませんが、ここの寒さは思ったよりも効きます」と話してくれました。
 
 車は、登りの山道をバンバン走っていきます。かなりのドライビングテクニックです。

 

 

戦群長としての横顔

 

 「自衛官を対象にした訓練をしていますか」と質問をすると、初代特殊作戦群長荒谷氏としての答えが返ってきました。「自衛官のメンバーを2つのグループに区分し、ミッションを与え戦闘が生起する状況を作ります。

 対抗戦でやります。戦いは素手でギブアップか気を失ったら負けのルールで、自由に戦う場を設定します」と凄いことを静かに淡々と話し始めました。
「10年間この訓練を続けているのですが、8年間は戦闘が起きないのです。重要なところで動きに時間をかけてぶつからないのです。状況設定は必ず戦闘がおこるようにできているのに、なんだかんだ言って戦闘がおこりませんでした」さすがに何でもありだとお互い緊張したり、気遣ってしまうのだろうと感じました。

 「自衛官訓練、9回目で数人の戦闘がおこりました。そして、10回目の訓練では、集団の戦闘がやっと生起し、多くの人間が取っ組み合いながら急斜面を転げ落ちていきました」と嬉しそうに語ってくれました。この時、また特戦群長としての横顔を感じました。

 

 

むすびの里へ到着

 

 「この橋を渡ると私たちの住む集落に入ります。右手にある飛鳥神社は後ほどお参りしてみて下さい。奥に4本杉のご神木があります。

 ご神木に触れるとパワーを感じとれるかもしれません」と説明しながら、車幅ギリギリの道をスピードを落とさず進んでいきます。「この一帯は作物の被害を防止するための柵がないですね」と話すと、「田畑に鹿やイノシシなどから作物を守るための柵はむすびの里一帯にはありません。

 住民は猟をするメンバーが多いので被害が出たらその辺で鉄砲ぶっ放し退治してしまいます」と、冗談なのか本当なのかわからない話を荒谷氏は淡々といつもの口ぶりで話してくれます。

 続く。

 

 

 

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