「コロナ渦の中で自分とどう向かい合いどうコントロールしていくか」について、書籍を作成できないかというお話を頂いたのが、去年の桜が終わり、若葉の季節になる時でした。
この時期は、1年の中で過ごしやすい季節のはずが、新型コロナウィルスにより緊急事態宣言が発令されている状態で日本中見えない敵と対面し、制限をしなければならない日常を過ごしていました。そのため、内容の中心は、新型コロナウィルスに対する心構えや感染防止の話が主体で構成したいということでスタートしました。
企画会議では、対特殊部隊衛生隊は生物兵器対処専門部隊であり、豪華客船の衛生支援にも出ている話をしたり、自衛隊の安全確保の考え方と要領などをメンバーの皆さんに話をしました。
自衛隊と一緒に行動することはめったにありませんし、メディアで活動を見ているせいか、「自衛隊員は頑強で厳しい訓練をしているから危険な場所でも、安全を確保して活動ができるのですね」という質問に「ランボーや屈強の人間ばかりではなく、自衛官は普通の人である」と答えると、皆さん不思議そうな顔を皆さんするのです。
当初の本の作りは、自衛隊が行っている戦闘服と竹で担架を作成する短い文章とイラストをペアにするような、いわゆる自衛隊防災ブックの新型コロナ版をアウトプットにしようという企画でした。しかし、企画に参加されている人たちと話しているうちに、皆さんの興味のあるところが違うところにあるように感じてきました。書籍の方向性はどのようになるのかなと、思いながら新隊員教育や防大入校時に何をするのかという話を続けていました。
この時、本企画のリーダーの方の頭がピカッと光ったのを感じました。
「私が話してしまうと決まりになってしまいますが、自衛隊防災ブックのような内容の黄色い本は結構出ているので、災害が起こった時、身近なことの対処をどのようにしているかというアイデア物とは違うものを作りましょう」と話し始めました。
すると、他の人も、「ビジネスにも応用できるものを結構入れたら内容が広がります」、「普通の人や学生が危険なところでも行動できるようになる自衛隊のノウハウを、伝えるのはどうでしょうか」という話が次々に飛び出したのです。
「では、短い文章とペアになったイラストで構成するのではなく、どのように精神を強くしたり、危険を回避できるようになったのか、難しい作戦をやり抜くための基礎となることなどを中心とした内容へ、方向を大きく変えましょう」とリーダーが本企画の方向性を示しました。
新隊員教育や防大の生活で教えることは、「躾」がほとんどです。「仲間と信頼関係を作る、チームで行動する、限られた時間の中でやるべきことを確実に行う、できない仲間がいればみんなで助ける」という自衛隊用の新たなOS(考え方・意識)に切り換える内容です。
その後部隊の勤務を経験したり、訓練を行うことによって、新しいアプリがインストールされ、更に自衛隊用のOSがバージョンアップされていきます。
日常生活や災害、ビジネスでのピンチを切り抜くために重要となる内容をまとめたものが、『自衛隊式セルフコントロール』です。
本書が皆様の生活、安全確保、ビジネスのお役に立つことができれば、幸いです。