スナイパーは高い射撃能力とともに、保有する能力として必要な能力は、『戦場を把握する能力』です。
スナイパーのほとんどの任務は情報収集になります。情報収集を行うためには、戦場全体を把握して行動しなければなりません。
そして、戦場全般を把握しながら活動できるスナイパーは、敵にとって恐ろしい存在になります。
そのためには、2科系統(情報を担当する部署)の情報の流れや収集した情報処理がどのように行われるかについて理解していることが必要です。
情報処理とは、収集した情報資料(処理をしていない情報をいう)の『正確性の評価』、『信頼性の評価』、『戦術的な判定』を行い「情報」にすることです。(詳細は Kindle版『現代戦におけるスナイパーの運用と展望』 を参照して下さい)
スナイパーは、敵が将来的にどのような行動をするのか予想しながら、監視任務を行うためには、情報資料の処理を行う能力が重要になります。
そのため、攻撃、防御、後退行動、遅滞行動などの戦術行動を理解していることによつて、収集した情報資料が敵のどの行動のパーツを意味しているか判定することが可能となります。
敵に関する情報資料を収集し、さらに情報処理ができることによって、敵の次の行動を予測したり、収集すべき情報収集のポイントが掴むことができます。
情報資料は、2科(情報を担当する部署)で情報を担当する幹部が処理を行いますが、センサーとしての役割を果たすスナイパーや斥候も基本的な戦術行動について理解することによって、上級部隊が解明しようとしている内容を理解し、収集できる行動を確実に行うことができ、現場から背景や助言が可能となり、部隊の情報収集能力を大きく向上することができます。
一方、スナイパーは、下士官、いわゆる陸曹が担当します。幹部は戦術行動を学びますが、現場で活動する陸曹という役割から戦術行動を学ぶ機会は限定されています。
しかし、斥候やスナイパーは、斥候技術やスナイパーの技術を学ぶ学校や各種教育課程の中で戦術行動の教育を受けることができます。そして、これからより充実していくことが必要であるといえます。
現代の戦争の傾向は、情報の共有が進み、より権限が分権化され迅速に行動することが求められます。数名のチームが戦場全体の状況を把握し、その中で自分たちの置かれた環境の中、知恵を絞りながら行動することが求められていきます。
特に、スナイパー、斥候は少人数で敵の支配する地域へ入り行動するため、現地における判断が非常に重要となります。
そのためには、小部隊の戦術行動や防御陣地の編成、障害の構成要領、攻撃における部隊の運用に関する基礎的な戦術について理解しておく必要が高くなります。
「情報収集部隊の隊員は、指揮官の耳となり目となって行動せよ」とも言われており、スナイパーも情報収集が主要な活動内容であることから、戦術行動の基礎については必修であると考えられます。
Kindle版『現代戦におけるスナイパーの運用と展望』では、スナイパーとなる下士官(陸曹)の戦術の理解とその能力向上の必要性について提言をしています。
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