畑を縫う狭い道を走っていくと、集落の一番奥にむすびの里が見えてきました。集落の一番奥まで進んだところに建物の近くで車は停止しました。「到着です」と荒谷氏の言葉を聞き、周辺を見渡すと、思った以上に広い敷地です。
川のほとりにあるむすびの里は、伐採、開墾を行い今現在も土地を切り開き、建物を改築しながら進化していることがわかりました。
そして、川の水は澄んでいて素晴らしい景色が広がっています。敷地の中には、イノシシを捕獲するわな(鉄の柵)が無造作に置かれています。
荒谷氏は、これから稽古が始まるので武道場へ向かうとのことでした。宿泊場所へ荷物を置くと、荒谷氏の奥様がむすびの里を案内してくれました。
図書室(士卒復覚塾:しそつふっかく)は、荒谷氏が武道場とともに最も気に入っている場所ではないかと感じました。町や村の図書室と同じ量の蔵書が体系だって整理されて置かれています。神話、武士道、歴史書、思想・哲学書、特殊部隊関係などが並び、学びの部屋であるとともに、荒谷氏の飽くなき修学への姿勢がわかる部屋です。
奥様も「主人のお気に入りの場所で、ここに入るとなかなか出てきません」と話してくれます。とてつもない量の本を読んでいることがわかります。
宿泊施設を案内して頂いている時、目の前を少年のような短髪の若い女性が道着を着て「韴霊道場(ふつのみたま)」へ向かっていました。
「あの女性は外人ですね」と聞くと、「モスクワ大学を出て数学の博士号をとった女の子です。毎年2回ここに1カ月ほど滞在して武道を学びながら、むすびの里の活動に参加しています。
肉体労働をしたいという要望を受けています」と奥様から説明を受け、ここは凄い地域になると感じました。むすびの里の素晴らしさを外人が見つけ出し、ここに集まってきているからです。首都圏から7時間の道のりの山奥に所在するむすびの里の吸引力は並大抵のものではありません。
ここ熊野は、自然を崇める土地であり、地域全体がパワースポットといえるような場所です。そして、山の神が要所要所にあります。
むすびの里にも、御神木が山の神として祀られていました。むすびの里の山の神は、大きな岩を割ってそびえ立つ、エネルギーを感じる大木が御神木でした。
集落の入り口の飛鳥神社も、杉の木が御神木となっていました。一つの幹から分かれた4本の杉の枝がまっすぐ空に伸びる姿に圧倒されます。荒谷氏が「手を触れるとパワーをもらえます」というのも、御神木の前に立つと納得できました。
奥様から、「川を見てください」と案内して頂いた場所は、淵になっていて透明なエメラルドグリーンの色をしているところでした。「深そうですね」と聞くと、「4メートルほどあります。水が透き通っているのでそんなに深いとは感じませんが、潜ると魚がいっぱいいますよ」、「夏は作業や稽古で汗をかいた時、ここで体を冷やすと最高です。川から出るとさらさらしていて気持ちがいいんですよ。ロシアの人は10月下旬でも気に入ってしまって皆さん川で泳いでいました。あの人たちは寒さに強いですね」と説明して頂きました。
続く。
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