40連隊長の着任する前の第8師団司令部第3部長(作戦・訓練担当)の時から、富士トレーニングセンター(FTC)での訓練に注目していました。
2020年現在は、新型の戦闘交戦装置(バトラー)が師団にも1セット配られ、同じ環境に近い状態で訓練を行うことができるようになりましたが、2000年当時、FTCにしかその訓練環境はなく、最も実戦に近い状態で自由対抗戦を実施できる場所がFTCだっからです。
師団内の普通科連隊がFTC訓練のため、北富士演習場へ行く機会があれば可能な限り、訓練の現地確認に行きました。師団内で鍛え上げた増強普通科連隊が壊滅しているので、FTC対抗部隊の強さは本物なのか、どのレベルにならないと対等に戦えないか確認するためでした。
FTC訓練は、2~3年に1回の周期で普通科連隊に回ってきます。師団としては、毎年師団内の普通科連隊が参加している状態でした。ほぼ全滅の状態で帰ってくる連隊を見ていて、自ら確認したいと思っていたところ、師団長から「FTCの強さを確認するように」という指示を頂きました。
FTCについて、壊滅された部隊が「熟知している地形で、FTCに有利なルールでは勝てるものでも勝てない」と語ることが多い状態でした。確かに、北富士の地形は、等高線が特殊で地図の見方が難しいところがあります。また、知らない演習場で庭のようによく知っている部隊と戦うということを考えれば、ハンデはあるかもしれません。
各部隊の使用している演習場でFTCの対抗部隊と自由対抗戦を行ったら、勝てるのかとという視点でとらえてみると、答えはNOでした。
FTCは、部隊・隊員同士がよく話し合い、連携していて細かいところの詰めが実働で出来上がっていることがわかったからです。師団の増強普通科中隊が、FTCと戦闘を行っている場面を何度も見て感じたことは、真剣のFTCに竹刀で戦いに臨む状態だったからです。
これがわかってから、連隊長になった時、必ずFTCと真剣で切り合う勝負をしたいと思うようになりました。この思いを実現できると思った40連隊とFTCの戦いを本書は描いたものです。
『40連隊』シリーズは、実戦に威力を発揮するために40連隊が追求してきたことについて記述してきました。私は、各部隊が自衛隊最強の部隊になる可能性があると考えています。部隊・隊員の意識が変わり、行動が変われば、どの部隊も実戦に強い部隊が育成できると思うからです。
『40連隊』シリーズのもう1つの側面は、現在の自衛隊に対する応援の気持ちを込めて書いたものです。本書が、最強の部隊追求に役立てて頂ければ幸甚です。
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