忙しい時になぜ現場を混乱させるようなことを確認するのだろうか、現場に任せてくれれば、自分たちがキッチリやるのに、なぜ信じてもらえないのだろうということを感じたことがあるのではないでしょうか。
上司や指揮官は、現場の私たちの動きを邪魔するようなことを言ってきたり、本部のスタッフは現場の状況を確認したがるので、現場は困惑し、なぜ今という疑問が生じます。
しかし、この捉え方は現場サイドという一方向の話で、双方向で捉えたものではありません。
では、指揮官や上級部隊のスタッフ(幕僚)は、どのように考えているのかについては、困惑や怒りで思いをはせる人は少なし、その必要も感じたことがないのが通常でしょう。
一騎当千の優れた兵士により構成された特殊部隊であっても、現場への確認があり、部下の士気が低下することがあります。
しかし、指揮官サイドでこのような行動を考えてみると、別の景色が見えてきます。
それは、現場へ確認をするなどしている指揮官は、部下の仕事の邪魔をして失敗させようとしているかということです。
当然、現場が上手くいくように考えているはずだという結論になります。
では、なぜ、このようなことが発生してしまうかを紐解けば、解決の糸口がつかめます。
指揮官は現場に関して、現場の動きをどこまで把握できているのか、必要なインプットはしているのか、彼、彼女に任せれば予想以上の成果を上げてくれるというような業務の要領、信頼関係ができているかがポイントになります。
両者の掛け違いを改善するための方策が浮かび上がります。
上司からの信頼を獲得することから始めなければなりません。
たとえ理不尽に感じたとしても、指揮官からの確認行為には、全て全力で対応します。
この行動によって、指揮官が確認しようとしたことは、この部隊は確実に行っているので任せることができるという認識に変わるからです。
部隊のリーダーは、指揮官への事前の説明をそれぞれの事象の特性に合わせて行います。
重要事項であるが時間がある場合、重要事項で時間がない場合、重要ではないが時間がある場合とない場合、初めてのこと、ルーチン的な行動などで報告の仕方は変えなければなりません。
如何に指揮官へインプットするかで、指揮官から発せられる確認内容とその時期が変わってくるからです。
指揮官は、部下や隷下部隊の行動について、頭の中でシナリオを何回も流して、チェックをしています。
上手く流れないところは、確認ができておらず成功するイメージができていないところになります。
シナリオを回して確認することを時間の許す限り頭の中で行います。
この時に、引っかかったことが、現場が上手くいかない可能性があるのではないかという確認事項や指示になるわけです。
何回か指揮官から部隊への確認のパターンを見ることによって、傾向が掴めるはずです。
ある程度の傾向が掴めたならば、完全性の追求より、必要なインプット、指揮官の確認事項に対応する行動へ移行します。
指揮官からの信頼を得ることを焦点として、効果がない場合は修正してすぐに実行する。
そうすれば、確認しなければならない部隊から信頼でき任せられる部隊へ上司の評価は変わっていきます。
新しい試みや古い戦い方を改善していくに、指揮官の信頼を得ることが重要となるため詳細に記述しました。
では、部隊で今まで実施してきたことを変更するには、どのようなことが重要になるのでしょうか。
たとえば、従来の戦闘要領を新たな戦闘要領に変更するために待ち受けていることは、「実際に行い展示・説明できること」「従来の戦闘要領を打ち破ることのできる強さを持っていること」「指揮官、幹部の理解を得ること」「新たな戦闘要領を普及拡大ができること」が挙げられます。
実際に行い展示・説明できることは、幕僚、指揮官への説明をおこない、ここでの目標は実演する機会をもらうというところです。
このためにも、日頃から指揮官の信頼を得ておくことが重要になります。
そして、図で示したり、口で説明したりするだけではなく、本物を目の前で見せるということです。
劇や格好ではなく、本物の強さは、見る者の心を動かすからです。
従来の戦闘要領を打ち破ることのできる強さを持っていることは、受け入れられるかどうか重要なところになります。
本物に触れた瞬間にネガティブな心が一瞬に受け入れる心へ変化するからです。
本物は、説明と今までの経験した中で生きてきた壁を取り払う力があります。
そのためには、圧倒的な強さが必要となります。
なぜならば、試練が待ち構えているからです。今迄の戦い方を行う最も強い部隊を対戦相手にぶつけてくるからです。
負ければ、やはり今までやってきたことは間違っていないという認識となり、新たなものを一切受け入れなくなります。
圧倒的な強さで勝利すれば、ほぼ無条件に受け入れるようになります。
ここは、勝負どころとなります。
指揮官、幹部の理解を得ることは、非常に重要となります。
さらに良くするにはというように肯定的に話をすることが重要になります。
部下が進めたいと考えていても、上司がノーと言った場合、まったく進まなくなるからです。
幹部、上司へ説明し理解を得るのは、最先任上級曹長、上級陸曹は、重要な役割を担います。
日頃から指揮官との信頼関係を作り上げていることが、ここで利きます。
ここまで進めたら休むことなく、新たな戦闘要領の普及拡大を一挙に進める態勢を作り上げなければなりません。
部隊全体へ普及・拡大するため、連隊インストラクターと中隊インストラクターを育成し、中隊インストラクターに各中隊へ普及教育を実施させます。
連隊インストラクターは、中隊インストラクターの育成、他部隊と交流による普及、新たな戦闘技術の開発、レベル判定を行い格付けをおこないます。
このように組織全体が行う体制を作り上げることが重要となります。