2023年の産卵セットは、いつもの通りゴールデンウィーク開始からペアリングを始めました。今迄とは違うのは、2022年に産卵させた54ミリ(2021年羽化)のメスをもう一度使用したことです。オスは、2022年に羽化したもので、他のメス(2022年羽化)とも今回交尾をさせました。これで、両方のメスが産卵して幼虫がとれれば、もう一回産卵が可能であることがわかります。両方のメスから幼虫がとれなければ、オスに問題があることがわかります。
なぜ、今回もう一度同じメスを使用することにしたのは、昨年30頭以上の幼虫を得れたこと、その幼虫は、オスメスともに大型で体重があり、今年の羽化成虫はかなり期待できる状態だったからです。15年前に一度メスを2回使用することをしたことがありましたが、10頭程度は幼虫がとれたものの、今一つ元気がなくよい成果は得られませんでした。今回はメスも巨大で体力もあるのでもう一度チャレンジをしてみようと考えました。
オスを2年連続して種親として使用することは、何度か行いましたが、問題はありませんでした。今年は、越冬中に死亡したり、里子に出していたらオスが少なくなってしまい、2021年産のオスを使用しています。オスは、顎の形と開き方に遺伝することがわかっているので、たとえ大型が出たとしても、顎の状態が良くなければ、同じような子供が大量にできてしまうため、気をつけなければなりません。左右の顎の長さが微妙に違っていたり、顎の開き方が片方悪かったり、普通の状態の時に片方のアゴが少し内側に入るなど、その傾向は間違いなく遺伝するため、オスの選定で注意が必要です。
54ミリ(2021年羽化)のメスの産卵木は、芯のない固くも柔らか過ぎもしない比較的状態の良い産卵木を使用しました。ペアリングして2週間が過ぎたらオスを取り出します。そして、産卵ケース内は、メスだけにして落ち着いて産卵できる環境を作ります。ゼリーは、10個近く入れてゼリーを補給するためにケースを開けたりして刺激を与えない状態にします。
1カ月をめどにメスを取り出し、産卵ケースは、産卵木から幼虫が出す木屑が出てくるのを待って、幼虫の割り出しをおこないます。54ミリのメスとペアを組んだオスは、他のメスともペアリングをして、産卵木から木屑がモクモク出てきているので、孵化して幼虫になっていることがわかりました。オスには問題がないことがわかりました。
54ミリのメスを産卵ケースから取り出す時、2本の産卵木は木の皮をはぎ取られた状態になっており、削られている箇所が至る所にあったので、大丈夫だろうと考えました。メスを2回使用するのは、15年振りであること、通常、最初の産卵が終了したら、少しメスを休ませてから、もう一度産卵させる方法はとっていません。初卵が性能の高い成虫が得られるポイントであると考えているので、1カ月産卵させたら、もう産卵させないようにします。飼育を始めた頃、ペアも少なく、多くの幼虫を得るために何回も産卵木を入れて産卵させていたことがありますが、もう20年以上何回も産卵させることはしていません。
2023年7月16日かなり気温が高い状態の日に、今年3回目の産卵木から幼虫の割り出しを行いました。昼を過ぎるとベランダに日が当たり始め、その中で日陰を見つけて小瓶へのマット詰めと産卵木からの幼虫割り出しを行っていると、久し振りに顎から汗がしたたり落ち、小ビンの中に落ちないように気をつけました。産卵木の割り出しで喜びを感じるのは、産卵木全体から木屑が出ていて、産卵木が手で壊せるほど柔らかくなっており、ドライバーを使用しなくても、素手ですべての作業ができる時です。質の良い産卵木であったこと、メスが沢山産卵して元気に幼虫が育っているとつい嬉しくなります。
54ミリのメスは、産卵痕のような跡は、産卵木にあるのですが、産卵木から木屑は全く出ておらず、あまり期待のできない状態でした。産卵木は見ただけでも、硬そうなので、ドライバーで崩すことにしました。幼虫のいそうなメスが削ったところを避けてドライバーを入れるとパリッと産卵木が剥がれました。幼虫がいると、産卵木は柔らかくなりホクホクの状態ですが、シイタケの榾木を削っている状態でした。2本の産卵木とも、幼虫はいません。孵化した後もなく、産卵していないことがわかりました。産卵木を埋め込んでいるマットの中にいるのか探しましたが、これもゼロでした。
もしかしたらたまたまこのような結果になったのかもしれませんが、メスの2年連続して産卵に使用することは、飼育にはあまり適していないことが今回の実験でわかりました。累代飼育は、確実に親と子をつないでいかなければならないので、面白さと難しさと、やり直しがきかないというところがあります。2023年羽化のメスは、56ミリ、55ミリ3頭と揃っているので来年のペアリングと産卵が楽しみです。