新隊員の教育の時、必ず伝えることがあります。伝える内容は、10代後半から20代の皆さんは全
員が宝物を持っているということです。
人間は、10代後半から20代の時期に心身、頭脳が急激に成長するからです。
この時期に自衛隊へ入隊して人生の大事な成長時期を過ごすのですから、是非とも有意義に過ごしてもらいたいからです。
大学生、大学院前期2年、後期3年に設定されていることも納得ができます。
そのため、1週間ごと過ぎがまっすぐに伸びるような成長をしていく時期の隊員を受け入れる自衛隊
側も、この時期の重要性を認識して教育訓練を行っていかなければなりません。
もう一つ、新隊員に限らず新入社員は、早く力を発揮する人材になりたいという高いモチベーションを持っています。
ベテラン社員や同じことを続けていてマンネリ感を感じていた社員の心に、あの時自分もそうだったという新鮮な風を送り込み、組織に活力を与えます。
モチベーションは高いが、業務の知識と経験のない新隊員(新入社員)への対応では何が必要であるかは明確です。
知識を得て定着する能力と意識が高い時に、必要な知識と経験をする環境を作ることによって、前に進もうとする新隊員は短期間に見違えるほどに成長していきます。
知識と経験を詰め込んでいく状況から、徐々に自発的に成長していこうという意識を作っていきます。
「水を飲みたくない馬を水場に連れていっても水は飲みません。水を飲みたい馬は自ら水場に行き水を飲む」といわれているように、自らが求める意識ができてくると、受け身の状態から自発的な行動に変化していきます。
自発的な行動に切り替わっていくと、吸収度と定着度が格段に向上するからです。
この状態に持っていくことができると、彼らは少しずつ手応えを感じ始めていきます。
知識と経験がなく、できないことだらけの状態から、自分一人でできることが徐々に増えていくことです。
活動範囲が広がると同時に影響を与えることができる範囲が広がっていくことによって、その範囲をいかに広げていくかを考えるようになります。
その時に必要なものが、チャレンジです。
せっかく活動範囲が広がり始めているのに、チャレンジをして失敗したら恥ずかしい、評価(評判)が下がるのではないか、成果の積み上げが切れてしまう。
まだ実力がついていないことを認識していて、自信がないため、チャレンジをおこなった時の失敗したイメージがどうしても頭がよぎります。
しかし、自分の立ち位置を知ることができれば、その心配の必要がないことがわかります。
「できること」と「できないこと」を考えれば、できないことだらけであり、チャレンジをして切り開いていくことをしなければ、前に進むことができないことがわかるからです。
行動範囲が広がっていくと、チャレンジをいる範囲や内容の量と質が増加していきます。
直径10センチの円が行動半径であるとすれば、15センチ、20センチというように拡大していくので当然のことです。
この時、自覚している状態と外から見た状態が一致しないところから、精神的に乗り越えなくてはならない壁が発生します。
本人が自分は成長していると感じている時は、外から見た時は成長が止まっている状態に見え、本人が何もかもチャレンジしてみても上手くいかずにやり直しや先輩からバックアップしてもらわないと上手くいかないというように感じていて、自分はたいして施設力もなく、成長することができないかもしれないと落ち込んでいる状態です。
しかし、外から見ると、その姿は、多くのことにチャレンジして力を付けていっている状況であり、成長を続けていると映るのです。
このギャップで悩んでいる隊員、チャレンジを止めてしまった隊員へ適切にアドバイスをすることがとても大切です。
新隊員の育成をしっかりした人間が適切に行うことによって、新隊員や若い隊員は、著しい成長をしていきます。
1週間ごとにまっすぐに伸びる杉のように、新たな人材を育成していくことは、確実に組織の強化につながります。