敬礼は引き金と同じ

敬礼は引き金と同じ

 

 

敬礼を先にするかしないか

 

自衛隊では、階級が自分より上の人に敬礼をします。「こんにちは」というような知り合い同士の挨拶ではなく、階級の上位者にキチンと敬礼をしなければなりません。敬礼は、挨拶と同じようにしなさい、という部隊もあるようですが、この理解の仕方は間違いです。

また、敬礼をキチンとできるかどうかで、この部隊は規律が高い、低いと評価ができるほど、部隊を見る基本でもあります。

戦闘服の階級章が黒になってから、近くに寄らないと階級を確認しにくいので、もしかしたら、自分より上ではないかなと思っているうちに、敬礼をするタイミングを逸してしまったりします。

上の階級の者が下の階級の者に先に敬礼はしないので、若い幹部は陸曹になかなか気がつかれず敬礼をされなかったりします。

上位者が階級の下の者に敬礼を先にしたりすると、恥ずかしかったり、損をしてしまった感じがするので、これも敬礼のタイミングを外してしまう場合があります。

 

 

敬礼への迷いを消す識別射撃

 

敬礼をするタイミングを外してしまったり、敬礼をするため気を張って歩くのが面倒くさくなっているうちに、赤信号皆で渡れば怖くない空気が出てきて、見てない振りをしたり、話をしたりして、敬礼をしないようになってくると規律がだんだん乱れていきます。

そして、敬礼をほとんどしない部隊になってしまうこともあります。そうなるとナァナァの緩いだらしのない部隊になって服務事故が発生するようにもなります。

更に、幹部も見て見ぬ振りをするため、リーダーシップのない弱い部隊になっていきます。

駐屯地を歩いていると、自転車に乗った隊員が、迷っているのがわかります。自転車に乗ったまま敬礼をするのか、降りてからするのかグダグダしている状態になっています。

ギリギリで降りて敬礼をしたりする光景によく遭遇しました。

敬礼を通じて何かを鍛えることができないかと考えていると、識別射撃の難しさが訓練においてクローズアップしていたのでピンと来るものがあれました。

 

 

敬礼は引き金と同じ

 

素早く識別射撃ができるように、見にくい階級章を確認できる距離で迅速に識別して、躊躇なく敬礼ができるように警戒しながら歩くこと、そして、自転車から降りるか降りないか迷っていることは、敵と遭遇してから、撃つか撃たないか迷っている状態なので、敵に先に撃たれてしまう。

敵よりも早く撃つことができるように敬礼を訓練として捉え、注意力、判断力、実行力を鍛えて強い部隊を作ろうと朝礼で話しました。

その時から、自分が誰よりも早く敬礼をするようにして歩くと、皆敬礼をガンガンするようになりました。

半面、毎日思ったよりも精神が疲労するのを感じ、北九州はすぐ燃え上がる特性があるが、継続というところに弱点があり、皆このまま続くかなとふっと不安がよぎりました。

 

 

人間の慣れと成長

 

ある時、中隊長と杯を酌み交わしながら、次の訓練は何をやろうかと話していると、多くの中隊長から、敬礼をするのに気を張っていて皆疲れると言ってるという話になり、あれだけ気合を入れていたら疲れるよな~と皆感じていましたが、強くなるための訓練であると捉えてもう少しやろうという結論になりました。

1か月続けているうちに、集中していても上手く力を抜くことができるようになり、長く集中してもあまり疲れないようになったり、慣れてきたと中隊長が杯を交わしながら語ります。

人間の慣れと成長は侮れないものがあるなと、皆でやり続けてよかったと乾杯をしました。

少し経つと、小倉の隊員の敬礼は、早くてキチンとして気合が入っていると評判が広まり、これがまたやる気の引き金になって、しっかりとした識別射撃のような敬礼が定着していくことになりました。

隊員が、「futamiryu、他部隊に行くと、小倉の隊員はしっかり隊列を作って敬礼をすると、驚かれます。他部隊の隊員を見ていると、撃たれる前に何発も撃てますし、部隊行動をしているのでチーム戦も負ける感じがしません。小倉の連隊を誇らしく感じます。」と話してくれました。

「次は強い中に、動きは柔らかくムダがないようにしよう」と言うと「ハイ、敬礼を通じて強さを感じれるようになるとは思いませんでした。皆に伝えます。」と柔らかく、無駄のない敬礼をして、部屋へ帰って行きました。

 

 

 

 

 

自衛隊最強の部隊へ-偵察・潜入・サバイバル編: 敵に察知されない、実戦に限りなく特化した見えない戦士の育成
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本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

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オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
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