自衛隊勤務から民間企業で仕事をしている現在まで、各地域の部隊を訪問したり、多くの隊員の人たちと出会い話をする機会がありました。
幹部の人たちと話しをすることの大切さは勿論のことですが、部隊の伝統を継承し、部隊の強さの原動力となっている陸上自衛隊の下士官である陸曹の人達と話すことが重要であり、喜びを感じています。
普通科・特科・機甲科の戦闘職種、施設科・通信科・航空科などの戦闘支援職種、そして、武器・需品・衛生科などの支援職種で共通することがあります。
それは、部隊の強さは陸曹の強さで決まるということです。
彼らは、2年ごとに交代する幹部がどのような指揮官であっても、上手く対応して部隊勤務を行います。部隊を強くするタイプ、自己保全の強いタイプ、サラリーマン的なタイプ、自己が無いように過ごせばいいタイプなど、色々な幹部の下で働きます。
陸曹は、上司を選ぶことはできません。よく、良い上司の後は癖の強い上司が来るというパターンが繰り返すといわれます。
Aという上司に気にいられて重宝され充実した勤務を送っていても、2年後に着任したBという上司にも気に入られるとは限られません。
同じように接してみたら、上司に嫌われてしまったり、目をつけられることになることもあります。
ベテランの陸曹になると、色々なタイプの上司に対して、常に一定の評価を得られるような心得と立ち回りができるようになります。安定した自衛隊生活を行うために重要な技術です。
そのため、本当に部隊を強くしようと考え部隊勤務をしようとする上司が着任したとしても、この環境がその上司だけの時であり、次に着任した上司が全く違うことを目指すのならば、燃え上がってもすぐに変わってしまうので、深入りをしないようにすることに気をつけるということは容易に理解できます。
しかし、彼らは、本来、本気で業務へ打ち込み純粋に強さを追求するものを持った人達だと思います。40年以上前の小隊長時代(3尉まで:防大の幹部としてはまだ一人前ではなく、陸曹は教育者として、仲間として付き合って頂いた)の陸曹は、部隊の伝統と強さは自分達が作り上げていくものだと話してもらった記憶があるからです。
そして、連隊長時代、陸曹の踏ん張りで40連隊全体が「40連隊に戦闘技術の負けはない」を追求することができました。私の見えないところで、彼らは40連隊の看板を磨いて頑張ってもらいました。
私は、「陸曹はもっとやってもらわなければならない存在であり、もっと活躍してもらいたいメンバーだある」と信じています。
現在、西へのシフトが続き西重視のため、西部方面隊以外の他の方面隊の充足は低い状態が継続し、新規装備の導入が行われ、人員が少ない状態での勤務が続いています。
更に、災害派遣は長期化する傾向が変化せず、本来行うべき地道な訓練ができない状態になっています。
なんとか、年間の隊務運営計画通りに行おうとすると、時間と人が不足しているため、やることが目的になるような状態になってしまいます。
このような場合、幹部、上級部隊が、業務を削らなければ、改善することはできません。
このような現在の情勢の中で、部隊の伝統と強さを維持することは、かなりの困難があるのは間違いありません。
部隊で話をする時、隊員と懇親をする時、会話をする時、応援のメッセージを伝えるとともに、二見龍YouTubeチャンネル(月・金曜日16時更新)でアドバイスなど、微力ではありますがお伝えできればと考えています。
宜しくお願い致します。