災害派遣現場から学んだもの(現地編)

災害派遣現場から学んだもの(現地編)

 

 

災害派遣に行った新隊員

 

災害派遣の第2陣に、入隊してまだ自衛隊生活が1年未満の新隊員を含めて、現場に行く時が来ました。経験と知識と訓練がまだ不十分な彼らを2次災害の恐れのある災害現場へ連れて行くことは、自分としてもやや心配であり、何とか無事に返さないといけないと考えていました。

自衛隊に入る理由は、少子化が進むにつれて変化します。

兄弟が多かった時代は、資格を取ったり、早目に家から出て仕事をする価値を自衛隊入隊に求めていた人(両親)が多かったのですが、一人っ子の時代になると、大事な一人息子を自衛隊に入れる理由が変化します。

国際貢献活動に参加をしたい、災害派遣に行き地域の人の役に立ちたいと考える人が多くなりました。

このような背景から、新隊員は初めての災害派遣への参加希望を中隊長に伝えたのでした。「自分を連れていって下さい。」、「どういうレベルなら連れて行ってもらえるんですか」と訴えました。

部隊では、新隊員教育を重視し改善を進めていた時であり、新隊員の教育訓練を部隊でもそれぞれの戦闘技術のトップクラスの者が教官となり、できるまで補備教育をしながら実施し、成果が出てきたところでした。

自分としては、日々の訓練への姿勢とレベルから気を抜かなければ、問題ないなとも考えていました。

これが、連れて行こうと決心した理由です。

災害現場に来てから、4日目に7名の新隊員がヘリコプターから降りてきました。

ヘリコプターは、急激に景色を変化させます。新隊員が搭乗した場所は、安全で普通の生活をすることができる部隊の中のグランドですが、30分ヘリに乗って下りると、そこは厳しい災害現場のど真ん中に着陸しています。

たった30分で突然全く状況が変わってしまいます。

遂に来たな。と思いどんな行動を取るかみていると、テキパキと装具を持って降りてきました。彼らは各人、災害現場を確認しており、近くに寄ってみると凄いものを見て知ることになりました。

災害現場を見ている新隊員達の黒目は、目から入ってくる情報を何一つ見落とさないように、黒眼で景色、状況をブラックホールのように吸い込んでいます。

全能力を使って状況を把握しようとしている時は、「黒目がブラックホールのようになり、ドンドン吸い込んでいるように見える」ということです。

Ishida(仮称、以後I)が、「どうですかね」と聞くので、「半日は普通の隊員と一緒に現場に出してもいいよ」と答えました。Iも同じ意見のようで、「そうですね。ではその通りに指示します」と返ってきました。

日々逞しく成長している彼らを見ているうちに、交代の時期になりました。

次の交代部隊が来て、新隊員が帰る時、ぬるま湯の中で生活している若年陸曹では相手にならないなと思うほど彼らは強い男になって、船に乗り込んでいきました。

たとえ短い期間の経験でも、厳しい中で自分をコントロールして任務を達成すると成長するなということがわかりました。

だらだらした生活をいくらしても月日だけ過ぎてしまうものなのだとも理解しました。

Iが「若いメンバーは成長が早いですね」と嬉しそうに言います。船から、新たな新隊員が下船してきました。

しばらくすると彼らの目を見るとまた、黒目がブラックホールのようになっていました。

「成長するなー彼らも」と思わずIに言うと、Iが嬉しそうに微笑んでいました。

短時間に情報を把握し、自分の能力ではどこまで安全を確保できるかを判断する能力はとても重要です。

 

前回:【災害派遣】すぐに集まってチームを組める組織の強さ(地震発生直後偏)

 

 

 

 

 

自衛隊最強の部隊へ-偵察・潜入・サバイバル編: 敵に察知されない、実戦に限りなく特化した見えない戦士の育成
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二見龍レポート#2 コンバットメディックの照井資規、弾道と弾丸を語る
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二見龍レポート#1 ネイティブ・アメリカンの狩りの技術を伝える川口拓氏との対談
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40連隊の見えない戦士達: 自然をまとう「スカウト」戦闘技術
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本書は、実戦で強烈な威力を発揮する「スカウト」の戦闘技術に触れた瞬間、根底から意識が変わってしまった隊員たちが、戦場から生き残って帰還するために、寸暇を惜しんで戦闘技術の向上へのめりこんでいく姿を記録したものです。

そして願わくば、ミリタリー関係者だけでなく、日々、現実社会という厳しい戦いの場に生きるビジネスパーソンやこれから社会へ出て行く若い人たちに、読んでいただきたいと思っています。スカウトという生き残り術を身につけることは、必ず日々の生活に役立つと私は信じています。

 

 

 

40連隊に戦闘技術の負けはない: どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準
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『40連隊に戦闘技術の負けはない―どうすれば強くなれるのか!永田市郎と求めた世界標準―』
に登場する隊員たちが訓練を通じ成長していく姿は、若い人達に限らず、人材育成全般にも多くのヒントがあると思います。
人生・仕事への姿勢について、ミリタリーの人に限らず、多くの人達に読んで頂ければと思います。
読み方は自由に、肩肘張らず、気楽に読んでいただき、志を持ったインストラクターと若い隊員たちの記録を堪能して頂ければ幸いです。

 

 

 

オオクワガタ採集記: 朽木割り採集・灯下採集・樹液採集の世界
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オオクワガタに出会い、採集やブリーディングを始めて、いつの間にか20数年が経ってしまいました。
日本各地のオオクワガタの有名ポイントで多くの仲間と出会い、採集をした楽しい思い出やズッコケ採集記は私の宝物です。
オオクワガタを通じ、色々な経験や学びがあり、人生が豊かになった感じがします。そんなオオクワガタ採集記をお楽しみ下さい。

 

 

 

オオクワガタ飼育記 ~マット飼育による美形・大型作出テクニック~
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マット飼育は、菌糸ビンのように簡単に大型を作出するのは難しい飼育法ですが、綺麗な個体を得ることができ、安価で多量にオオクワガタを飼育できることが魅力です。
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