オオクワガタトラッキング採集編2 -山梨県甲府地域(その2)-

オオクワガタトラッキング採集編2 -山梨県甲府地域(その2)-

 

 

オオクワガタの特性を知る

 

先に入った採集者の足跡を追いながら、ポイントを探していくうちに、小さな沢を登ったり下りたりが続き、朽木が急傾斜の高い所にあったりして徐々に体力を消耗していきます。また、いい朽木も無く精神的な疲れも少しずつ積み上がります。

体力回復のために休んでいる時も、頭の中では、この沢を超えると南の緩斜面が出てくるのでオオクワガタがいるかを確認して、次の比較的浅い沢を登った日当たりのいいところは確率が高そうだなと、気持ちだけがドンドン先行して進んでいって探索をしています。

山梨県では、オオクワガタが里山近くに生息しているには訳があります。

炭を焼くために成長の早い「台場クヌギ」を人間が植えて、手頃な太さに成長すると太い幹を残して台場クヌギの枝を切ります。

すると太い幹から枝が出てきて、また成長したら炭を作るために切るという、伐採を繰り返します。
長い年月が経つと太い幹が二抱え程になり高さも3メートルになる独特の形になります。
この状態の台場クヌギは樹液が多く出て、洞が発達しているため、オオクワガタの格好の住処になります。

山梨県では、炭焼きと台場クヌギという関係があり、人とうまく距離をとりながら里山にオオクワガタが生息しています。

 

 

オオクワガタのメスになり考える

 

オオクワガタをはじめとするクワガタやカブトムシは、羽が生えていて飛びますが、あまり上手に飛ぶことができません。

堅い羽根を覆う部分を横に広げて重そうに羽音を立てて飛び狭いところを器用に飛ぶのは無理です。

木がうっそうと茂った中にある大きなクヌギの木であれば、他の木の枝や草が届かない上の方は飛んで接近できますが、うっそうと茂った中を飛ぶことはできないので、まずいません。

特に、オオクワガタは木にできた洞(ウロともいう)の中に潜って生活するのが主体の平べったい形をしていて、飛ぶのが得意ではありません。

メスが産卵のために木を選ぶ時、藪の中ではなく、開けたところの大木や道沿いの林縁、崖の近くに目立って立っているクヌギの木を狙うのは明らかです。

 

 

暖かい日だまりにたたずむ木

 

先に入った採集者は、今までの経路にいい朽木がなく、斜面の上り下りの連続で苛立ち、疲れてきて行動が雑になっていることが、足跡と確認しなければならない朽木の見落としからわかります。

急斜面を沢からなんとか登りきったところに、開けた草地の広場と沢の境界で暖かい太陽の光を十分に受けてたたずむ、カワラ茸(他に関東では3種類程度オオクワガタが好むキノコがあります)ではない種類のキノコにより白枯れした朽木がポツンと立っていました。

採集者は点検をした足跡がありますが、オオクワガタの幼虫がいる徴候である重要な産卵痕を見落としていました。確認する視点が悪かったようです。

朽木は、白枯れが進んでいて発泡スチロールのように軽く、スカッスカッと削れます。これはいるなと思っていると3回目の斧を入れた時、太い食痕が縦横無尽に現れました。コクワガタや他のクワガタの食痕とは比べ物にならない大きく太い食痕で、朽木の絶妙な朽ち具合からこれはもうオオクワガタに間違いありません。

少し古い食痕だなと思いながら、下の方へ続いている食痕を目指して削っていくとボコッと木が削れました。

 

 

蛹室現る

 

朽木を注意して取り除くと、1センチの円の奥に卵大の丸い空間があるのが見えました。

もしかしたら、蛹室(ようしつ)が出てきたのではと見てみると中にオオクワガタのメスの成虫がいました。蛹室は、幼虫から蛹になり、羽化をする時羽を出してたためるような広さで、表面をツルツルに仕上げたものです。

違う食痕があと数本下に伸びていて、削ると全て蛹室が出てきて成虫を採ることができました。

初めて成虫を朽木割採集でゲットした瞬間でした。残りは、次の週に家族で観光を兼ねてまだ小学校低学年の子供達に見せるために取っておくことにしました。

勿論、足跡や痕跡は全て消してわからないようにしたのはいうまでもありません。

翌週、野生のオオクワガタを捕まえることができ子供達は大はしゃぎでした。

 

 
 

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